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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
ブローチの行方。
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途中でレアンドロ王子達やアルバート王子と別れ、庭園へと辿り着く。
皇女エリーザベトはレアンドロ王子にやや強引に連れて行かれているように見えたが大丈夫だろうか。
東屋に設えられた席に、お茶とお菓子が用意されていく。
メティがにこりと微笑んだ。
「今の季節、花はこの庭園が一番だって聞いたの」
「ありがとう、メティ。綺麗ね」
友達の気遣いが嬉しい。
庭園の方を見渡すと、成程ダリアや薔薇が咲き誇っているのが目についた。
他にも秋桜などが見頃である。
木々の緑や彫刻などのオブジェの中に見事に調和して花々が咲いている様は、流石は宮廷の庭園といったところか。
と、ふと開花期を過ぎて終わりかけのタチアオイの花が目に入ってしまい。
――ミシリ。
アーダム皇子からの手紙とあのブローチを思い出して扇を思わず強く握りしめてしまった。
奴のことを捕虜にしたとはいえ、蘇ってくるあの時の怒り。
そう言えばあのブローチは突っ返した後どうなったのだろう。
「うふふふふふ……」
「ど、どうしたのマリー?」
いきなり不気味に笑い出した私に、メティがドン引きした様子で様子を窺ってくる。
「いえ、ちょっと不快なことを思い出してしまって」
おほほほ、と扇を口元に当てて取り繕うと、女王リュサイが思い当たったようだった。
「ああ、もしかしてあの事でしょうか。手紙とブローチ……」
「連絡をくれた時にちらりと話してくれた奴?」
メティも思い出したらしい。私は「そうよ」と頷く。
メティは私が先程まで見ていた方向に視線を向けた。
「ああ……タチアオイね。マリーの返事と共に戻って来たあのブローチ、最終的にはエリーザベト殿下のものになっていたわ」
「え」
「着けているところを見たの。特徴が同じだったから気になって訊いてみたら、『少女のように純粋で高貴なそなたに似合うと思ったのだ、と兄上様が下さったのですわ』と純粋に喜んでいらしたから、居た堪れなくて……」
そう言って、メティは気まずそうに目を逸らす。
マジか。
プレゼントの使い回しをするなんざ、酷いな糞ゴリラ。妹を何だと思っているんだ。
私は皇女エリーザベトには極力優しくしようと決意した。
と言っても、皇帝選挙……アーダム皇子は論外、グレイと私も嫌である。
すると彼女ぐらいしかまともな候補がいないのだが……皇女エリーザベトは誰かに嫁ぐのではなく、女帝として立候補してくれる気はあるのだろうか。
カレル兄に唆して貰う? 確かに皇女が好意を持った男からの方が効果的ではあるだろうが……。
そうするにしても、かのレアンドロ王子がべったりだったら難しい。エスパーニャ王国は、エリーザベト皇女を王妃にして国との繋がりを強化を狙っている。皇女が独立して女皇帝になるのは望んでいないだろう。
「ところで、先程お会いしたレアンドロ殿下とエリーザベト殿下、随分親密そうだったわね。いつもあんな感じなのかしら? 今朝、カレル兄様がレアンドロ殿下に敵視されている、と言っていて。精神的に参っている様子だったのだけれど……」
「そうね、カレル様を牽制しているのでしょうけれど、いつもべったりくっついているわ」
「私も、カレル様は皇女殿下のおもてなし役を仰せつかっていらっしゃるのですと口添えしたのですが……ならばカレル様ではなく然るべき貴族の女性にするべきであろうと仰られ、アルバート殿下にも直談判されておりました。しかし当のエリーザベト――リシィ様が、『カレル卿に落ち度もないのにもてなし役を挿げ替えるのは礼儀に反しております』と反論されて……」
「それでレアンドロ殿下はエリーザベト殿下がカレル様に懸想をしていると確信したみたいで、『リシィ、貴女は将来エスパーニャ王妃となる自覚はお有りなのか?』と強い語気で言ったの。
そうしたら皇女殿下は『勿論ですわ、レアンドロ様、私は何のやましいこともしておりません。聖女様の兄君であられるカレル卿も高潔な方で、私がトゥラントゥール宮殿で心地よく過ごせるよう気を配って下さっているだけですわ』って。見ていてハラハラしたわ」
「その時はレアンドロ殿下も一旦引き下がられましたが、その後は常にリシィ様と共にいらっしゃるようになって」
「まあ、そんなことがあったの」と私は紅茶を一口啜った。
成程な……把握した。
皇女エリーザベトの言い分は、『カレル卿は聖女の兄。皇女として聖女とコネクション作らなくてはいけないの。やましいこともしてないし、理解して欲しい』。
レアンドロ王子は『聖女との繋がり関係もある事情は察したが、それでもカレル卿に好意を寄せているように見えるので安心できないから常に行動を共にするからな』とストーカー化。
それでカレル兄がいびられていた、と。
――レアンドロ王子、ちょっと邪魔だな。
カレル兄が皇女エリーザベトに女皇帝になるよう囁く隙がないじゃないか。
何とかして引き離さねば。それも、穏便に。
皇女エリーザベトはレアンドロ王子にやや強引に連れて行かれているように見えたが大丈夫だろうか。
東屋に設えられた席に、お茶とお菓子が用意されていく。
メティがにこりと微笑んだ。
「今の季節、花はこの庭園が一番だって聞いたの」
「ありがとう、メティ。綺麗ね」
友達の気遣いが嬉しい。
庭園の方を見渡すと、成程ダリアや薔薇が咲き誇っているのが目についた。
他にも秋桜などが見頃である。
木々の緑や彫刻などのオブジェの中に見事に調和して花々が咲いている様は、流石は宮廷の庭園といったところか。
と、ふと開花期を過ぎて終わりかけのタチアオイの花が目に入ってしまい。
――ミシリ。
アーダム皇子からの手紙とあのブローチを思い出して扇を思わず強く握りしめてしまった。
奴のことを捕虜にしたとはいえ、蘇ってくるあの時の怒り。
そう言えばあのブローチは突っ返した後どうなったのだろう。
「うふふふふふ……」
「ど、どうしたのマリー?」
いきなり不気味に笑い出した私に、メティがドン引きした様子で様子を窺ってくる。
「いえ、ちょっと不快なことを思い出してしまって」
おほほほ、と扇を口元に当てて取り繕うと、女王リュサイが思い当たったようだった。
「ああ、もしかしてあの事でしょうか。手紙とブローチ……」
「連絡をくれた時にちらりと話してくれた奴?」
メティも思い出したらしい。私は「そうよ」と頷く。
メティは私が先程まで見ていた方向に視線を向けた。
「ああ……タチアオイね。マリーの返事と共に戻って来たあのブローチ、最終的にはエリーザベト殿下のものになっていたわ」
「え」
「着けているところを見たの。特徴が同じだったから気になって訊いてみたら、『少女のように純粋で高貴なそなたに似合うと思ったのだ、と兄上様が下さったのですわ』と純粋に喜んでいらしたから、居た堪れなくて……」
そう言って、メティは気まずそうに目を逸らす。
マジか。
プレゼントの使い回しをするなんざ、酷いな糞ゴリラ。妹を何だと思っているんだ。
私は皇女エリーザベトには極力優しくしようと決意した。
と言っても、皇帝選挙……アーダム皇子は論外、グレイと私も嫌である。
すると彼女ぐらいしかまともな候補がいないのだが……皇女エリーザベトは誰かに嫁ぐのではなく、女帝として立候補してくれる気はあるのだろうか。
カレル兄に唆して貰う? 確かに皇女が好意を持った男からの方が効果的ではあるだろうが……。
そうするにしても、かのレアンドロ王子がべったりだったら難しい。エスパーニャ王国は、エリーザベト皇女を王妃にして国との繋がりを強化を狙っている。皇女が独立して女皇帝になるのは望んでいないだろう。
「ところで、先程お会いしたレアンドロ殿下とエリーザベト殿下、随分親密そうだったわね。いつもあんな感じなのかしら? 今朝、カレル兄様がレアンドロ殿下に敵視されている、と言っていて。精神的に参っている様子だったのだけれど……」
「そうね、カレル様を牽制しているのでしょうけれど、いつもべったりくっついているわ」
「私も、カレル様は皇女殿下のおもてなし役を仰せつかっていらっしゃるのですと口添えしたのですが……ならばカレル様ではなく然るべき貴族の女性にするべきであろうと仰られ、アルバート殿下にも直談判されておりました。しかし当のエリーザベト――リシィ様が、『カレル卿に落ち度もないのにもてなし役を挿げ替えるのは礼儀に反しております』と反論されて……」
「それでレアンドロ殿下はエリーザベト殿下がカレル様に懸想をしていると確信したみたいで、『リシィ、貴女は将来エスパーニャ王妃となる自覚はお有りなのか?』と強い語気で言ったの。
そうしたら皇女殿下は『勿論ですわ、レアンドロ様、私は何のやましいこともしておりません。聖女様の兄君であられるカレル卿も高潔な方で、私がトゥラントゥール宮殿で心地よく過ごせるよう気を配って下さっているだけですわ』って。見ていてハラハラしたわ」
「その時はレアンドロ殿下も一旦引き下がられましたが、その後は常にリシィ様と共にいらっしゃるようになって」
「まあ、そんなことがあったの」と私は紅茶を一口啜った。
成程な……把握した。
皇女エリーザベトの言い分は、『カレル卿は聖女の兄。皇女として聖女とコネクション作らなくてはいけないの。やましいこともしてないし、理解して欲しい』。
レアンドロ王子は『聖女との繋がり関係もある事情は察したが、それでもカレル卿に好意を寄せているように見えるので安心できないから常に行動を共にするからな』とストーカー化。
それでカレル兄がいびられていた、と。
――レアンドロ王子、ちょっと邪魔だな。
カレル兄が皇女エリーザベトに女皇帝になるよう囁く隙がないじゃないか。
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