貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】

棄民絶許。

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 「軍艦を、監獄に……?」

 「はい。交易船や客船の中にいる外国人は、上陸して初めて入国したという扱いになりますよね。それも、港町から出さえしなければ届け出すら不要です。
 王太子派がシルヴィオ殿下を警戒しているならば、殿下の支配領域である軍艦の中を視察することはまずないかと思うのですが」

 「確かにそれだと露見する可能性はぐっと減る……」

 「それに、万が一見つかったとしても。上陸させずにいることで、怪しい人物だったので入国させなかったと言い訳も立ちますし」

 念の為、こちらがトラス王国貴族夫人誘拐事件に関するの捜索の協力をお願いした、という依頼書でもお渡ししておけば完璧だと思います。
 グレイがそう言うと、シルは考え込んだ。
 後一押しで承諾してくれそうかな?
 そう思って私もその流れに乗ってみる。

 「あら、それはいい考えね。監視もしやすそうだし、いざとなったら軍艦を沖へ逃がせばいいし」

 「そうだn……」「お待ちください!」

 シルが同意しかけた時、側近の軍人アッキーノが挙手をして叫ぶ。

 「それでも我が君に危険を冒せということには間違いないですよね。それなりの見返りがないと割に合いません!」

 「『アッキーノ! 無礼だぞ』」

 シルが彼の名を呼び窘めている。
 しかしアッキーノは眉を吊り上げてシルに顔を向けた。

 「『殿下は人が良すぎます。危険を冒す以上はこちらの利も考えるべきです。困っていたところなので丁度良いではありませんか!』」

 ふむ、何か困っているようだな。
 精神感応で探ってみると……成程、そういうことか。

 「見返り……商品券の返済について相談に乗る、で良いかしら?」

 私から見返りを提案すると、シルは驚いた表情になった。

 「どうしてそれを……。実はその通りで、実は金策でまた悩んでいるんだ。
 マリーが教えてくれた、商品券。あれが出回ることで売り買いが行われ、復興も人々の生活も上手く回っているけれど……教会の協力を得ての商人達からの寄付があっても、商品券分の金額には達成出来ずに困っているんだ」

 「……コスタポリにガリア王都からの復興支援金が十分に届かない、という報告は受け取っていました」

 グレイが気の毒そうに言う。
 そう、シルの目下の悩みとは金策であった。それも、かなりの金額。
 しかも、商品券の引き換え期限が迫っていた。シルはガリア王都からの支援金を当てにしていたが、それが期限までに届かなければ債務不履行に陥ってしまうことになる。このままだとシルは大借金を背負うことになり、商人達からシルへ対する信頼は地に落ちるだろう。コスタポリの復興も失敗してしまう。
 グレイは首を傾げた。

 「ガリア王国は裕福なのに、何が問題なのでしょう? 商品券の現金化を王都でやってもらうように打診しては如何ですか」

 「それはしたのだが、訳の分からない紙切れと金を引き換えることはできぬと……それに、そもそも王家にその余裕はないと言われてしまってね」

 何でも、復興支援金を出したいのは山々だが、ガリア王家はトラス王国への食糧増産に予算を割いていて財政難であり、それだけの費用を捻出するのが難しい、と。

 「ならばと王国内の貴族達に負担するようにと呼び掛けてはいるが、それも出したという対面を保つ程度のもの。余裕がある貴族でも、自分に利益のない領地のことで大金を出そうという者はいない。私の母の実家や近隣の貴族達には既に大きな負担を掛けているのでもう頼めなくて、八方塞がりだよ」

 肩を落とすシル。
 更に調べでは、財政難は王太子派が喧伝しているらしい。
 コスタポリに復興支援金を送るとなれば王都の民にその分の課税をせねばならなくなる、と。
 それでシルへ対する風当たりが強いようだ。

 「ちょっとだけ、待ってもらえるかしら?」

 断って、精神統一。遠隔透視と精神感応でガリア王宮での適当な貴族の幾人かの心を読んで探ってみた。
 すると復興初期段階でシルを陥れるのが失敗に終わったので、今度はトラス王国との取引での食糧増産にかこつけて予算をわざと大きく取った模様。
 王太子はシルが失敗した後で、「聖女様の期待に応えられなかった第一王子は不甲斐ない」としたり顔でコスタポリにやってくる算段だ。
 勿論コスタポリの状況、商品券の引き換え時期も調べられており、復興予算を出すのを遅らせているのは事実。

 結論を言えば、『自己責任・自助努力でやれ。金はあるけどビタ一文出さん』――そういうことである。

 前世散々耳にした言葉。その癖取るもの税金だけはしっかり取っていくのだろう。
 そこはかとない不快感と怒りがこみ上げてくる。

 「……どうしてもシルに失敗して欲しいのね。民衆の苦境なんて二の次なんだわ」

 思わず低い声が出た。コスタポリの民はシルを苦しめる為だけに棄民されたのだ。

 「ねえ、シル。相談に乗るにしても、先ずは地図を見せて欲しいのだけれど」

 場所を変えましょう、と私は顔を上げてにっこりとほほ笑んだ。
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