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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
\(^o^)/
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「それは何よりだ」
父サイモンが、満足そうにカーフィをちらりと見下ろした。
「さて、カーフィ。お前を信頼して、早速やって貰いたい事があるのだが」
「な、何で御座いましょう……」
ややビクつきながらも訊き返すカーフィ。父は「何、そう難しい事ではない」とうっすら笑みを浮かべる。
「恐らく、今日明日中にも王子殿下二人がナヴィガポールより王都に帰還されるだろう。
それに加え、聖女帰還の祝宴が今日を含めて6日後に決まった。そこで、だ。
質は問わん。王都の劇団を急ぎ出来るだけ数多く買収し、ある恋愛劇を王都で一斉に民衆に見せるよう今日中に取り掛かれ。上演は今日より五日後までで構わん。
出来るだけ物語を多くの衆目に晒す事が目的であり、台本はこれだ。簡単な筋書きなので、そう時間はかからんだろう」
台本を受け取ったカーフィは、パラパラとそれを捲って目を通した。ややあって、顔を上げる。
「……初代聖女様の物語ですな。神に祝福され夫婦となった小国の王と愛を貫こうとするも、他国の王の横槍が入る筋書きですか、これは……」
「最後は思い上がった王達に神罰が下され、めでたしめでたし、幸福な結末となっている。
お前もかつてメイソンの事で使った手だ。噂を流している馬鹿共に対する意趣返しよ」
ああ、いっそ直接兵でも送って来るなら遠慮なく戦で叩きのめしてやるものを、虻の如くブンブンチクチクと忌々しいと吐き捨てる父。
カーフィから台本を受け取って見ていたグレイが恐る恐る切り出した。
「しかし、サイモン様……これでは徒に敵を増やす事になるのでは……」
「さっ、左様でございますとも!」
カーフィもこくこくと怯えたように頷いている。
「……私も見ても良いかしら?」
やや不安を覚えた私は、グレイから台本を受け取って読んでみた。話としては絵本程の長さだったので難なく概要を掴む。
うーん、これは。
物語はありきたりだけれど、登場人物の髪や瞳の色が……。
聖女は私、小国の王がグレイ、ちょっかいを掛けて来る王二人が王子達……実在の人物に似せてある辺りかなり露骨である。
「何、最初にこちらを敵に回してきたのは向こうだ。それに、馬鹿共は気付いていないだろうが、このサイモン一人を敵に回す訳では無いぞ。
マリーが聖女となっても所詮は伯爵令嬢に過ぎぬと侮り、政争の具にせんと権力をかさに圧力を掛けて来ている――カーフィよ、これがどういう事か分かるか? 聖女とは教会の事実上の頂点にある者。奴らは教会勢力全てを敵に回そうとしているのだ」
「あ……」
カーフィは呆然として口を開き、こちらを恐る恐る見上げて来る。私はにっこりと微笑み返した。
いや、教会では一番偉いのかも知れないけど、どっちかというとイメージキャラクター的な感じだと思う。
それにしても。売られた喧嘩を高く買うつもりだな、これは……父、噂流した奴らに対してかなりキレてるわ。
「数日間の勝負、一番稼ぎの良かった劇団には聖女帰還の祝宴に招いて演じて貰う事になる。何、トラス王陛下の許可は頂いているので安心するが良い」
ふむ、面白そうだ。
「そう言う事なら、私は聖女として劇を歓迎致しますわ。教皇猊下にご連絡する際、このような劇をして頂くのだともお話しておきましょう」
「ああ、楽しみにしているが良い。という訳だ、頼んだぞ」
「は、ははっ……!」
無茶なクライアントに急ぎの案件を押し付けられたサラリーマンの如く、憐れカーフィは台本を握りしめてよろよろと執務室を出て行く。
何かあってもうちや教会が後ろ盾になるから存分にやって大丈夫だから、と労わっておいた。大変だろうが頑張って欲しい。
しかし、そんな矢先に事件は起こる。
***
次の日、私はいつものように朝早くグレードアップした愛馬に跨った。
寒さがかなり厳しい時期、朝はとりわけ寒さが身に染みる。特注で作らせたダウンジャケットは欠かせない。
しかし反面冬の乗馬は特に身が引き締まる思いだ。馬の脚共も体を温める為に頑張って走るのである。
「今日は椿園を回って行く――寒い中だが花が満開であろう! ハイヨー!」
「「ぶひひひーん!」」
先日、相変わらずその棒読みは何とかならんのか、と言ったつもりが、何時の間にかユニゾンになっていた。聖女の馬仕様らしい。
諦めににた気持ちで愛馬を走らせつつ、眩しい朝日の光を浴びる。僅かながら温もりを感じる。派手な馬体も照り返しで眩く輝いていた。
椿の赤い花々が凛として咲く中を走り、いつもの池までやって来る、と……。
「……マリー?」
いつも待っているサリーナの横には――あろうことか、グレイがポカンと口を丸く開け、こちらを見詰めて立っていたのだった。
父サイモンが、満足そうにカーフィをちらりと見下ろした。
「さて、カーフィ。お前を信頼して、早速やって貰いたい事があるのだが」
「な、何で御座いましょう……」
ややビクつきながらも訊き返すカーフィ。父は「何、そう難しい事ではない」とうっすら笑みを浮かべる。
「恐らく、今日明日中にも王子殿下二人がナヴィガポールより王都に帰還されるだろう。
それに加え、聖女帰還の祝宴が今日を含めて6日後に決まった。そこで、だ。
質は問わん。王都の劇団を急ぎ出来るだけ数多く買収し、ある恋愛劇を王都で一斉に民衆に見せるよう今日中に取り掛かれ。上演は今日より五日後までで構わん。
出来るだけ物語を多くの衆目に晒す事が目的であり、台本はこれだ。簡単な筋書きなので、そう時間はかからんだろう」
台本を受け取ったカーフィは、パラパラとそれを捲って目を通した。ややあって、顔を上げる。
「……初代聖女様の物語ですな。神に祝福され夫婦となった小国の王と愛を貫こうとするも、他国の王の横槍が入る筋書きですか、これは……」
「最後は思い上がった王達に神罰が下され、めでたしめでたし、幸福な結末となっている。
お前もかつてメイソンの事で使った手だ。噂を流している馬鹿共に対する意趣返しよ」
ああ、いっそ直接兵でも送って来るなら遠慮なく戦で叩きのめしてやるものを、虻の如くブンブンチクチクと忌々しいと吐き捨てる父。
カーフィから台本を受け取って見ていたグレイが恐る恐る切り出した。
「しかし、サイモン様……これでは徒に敵を増やす事になるのでは……」
「さっ、左様でございますとも!」
カーフィもこくこくと怯えたように頷いている。
「……私も見ても良いかしら?」
やや不安を覚えた私は、グレイから台本を受け取って読んでみた。話としては絵本程の長さだったので難なく概要を掴む。
うーん、これは。
物語はありきたりだけれど、登場人物の髪や瞳の色が……。
聖女は私、小国の王がグレイ、ちょっかいを掛けて来る王二人が王子達……実在の人物に似せてある辺りかなり露骨である。
「何、最初にこちらを敵に回してきたのは向こうだ。それに、馬鹿共は気付いていないだろうが、このサイモン一人を敵に回す訳では無いぞ。
マリーが聖女となっても所詮は伯爵令嬢に過ぎぬと侮り、政争の具にせんと権力をかさに圧力を掛けて来ている――カーフィよ、これがどういう事か分かるか? 聖女とは教会の事実上の頂点にある者。奴らは教会勢力全てを敵に回そうとしているのだ」
「あ……」
カーフィは呆然として口を開き、こちらを恐る恐る見上げて来る。私はにっこりと微笑み返した。
いや、教会では一番偉いのかも知れないけど、どっちかというとイメージキャラクター的な感じだと思う。
それにしても。売られた喧嘩を高く買うつもりだな、これは……父、噂流した奴らに対してかなりキレてるわ。
「数日間の勝負、一番稼ぎの良かった劇団には聖女帰還の祝宴に招いて演じて貰う事になる。何、トラス王陛下の許可は頂いているので安心するが良い」
ふむ、面白そうだ。
「そう言う事なら、私は聖女として劇を歓迎致しますわ。教皇猊下にご連絡する際、このような劇をして頂くのだともお話しておきましょう」
「ああ、楽しみにしているが良い。という訳だ、頼んだぞ」
「は、ははっ……!」
無茶なクライアントに急ぎの案件を押し付けられたサラリーマンの如く、憐れカーフィは台本を握りしめてよろよろと執務室を出て行く。
何かあってもうちや教会が後ろ盾になるから存分にやって大丈夫だから、と労わっておいた。大変だろうが頑張って欲しい。
しかし、そんな矢先に事件は起こる。
***
次の日、私はいつものように朝早くグレードアップした愛馬に跨った。
寒さがかなり厳しい時期、朝はとりわけ寒さが身に染みる。特注で作らせたダウンジャケットは欠かせない。
しかし反面冬の乗馬は特に身が引き締まる思いだ。馬の脚共も体を温める為に頑張って走るのである。
「今日は椿園を回って行く――寒い中だが花が満開であろう! ハイヨー!」
「「ぶひひひーん!」」
先日、相変わらずその棒読みは何とかならんのか、と言ったつもりが、何時の間にかユニゾンになっていた。聖女の馬仕様らしい。
諦めににた気持ちで愛馬を走らせつつ、眩しい朝日の光を浴びる。僅かながら温もりを感じる。派手な馬体も照り返しで眩く輝いていた。
椿の赤い花々が凛として咲く中を走り、いつもの池までやって来る、と……。
「……マリー?」
いつも待っているサリーナの横には――あろうことか、グレイがポカンと口を丸く開け、こちらを見詰めて立っていたのだった。
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