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王子と面会④
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「王妃様が……? ああ、あの方はわたくしのことを嫌っていましたものね。成程……つまり、貴方はママの言いなりになって婚約者に嫌がらせをしていたというわけですか……」
「なんだその馬鹿にしたような物言いは!! 私は言いたくないことを言ってやったというのに失礼だぞ!」
「いや、だって馬鹿みたいじゃないですか? 幼い頃ならまだしも成人してまでママの言いなりだなんて。そんなことをすれば婚約は破棄されると分かっていたでしょう?」
「母上が……お前は私に惚れているから大丈夫だと……」
「惚れてもいないし、大丈夫でもないからこうなっているわけですね」
そのショックを受けましたと言わんばかりの顔が腹立つわぁ……。
確かにミシェルはほんの少しだけそういう気持ちがあったけれど、だからといってそれに胡坐をかいていては駄目でしょう。
「ママの命令は間違っていたどころか貴方の将来を潰すものでしたね。まあ、でも貴方も嫌いな婚約者とお茶を飲むよりも大好きなヘレンと一緒にいた方が心地よく過ごせたでしょう? よかったですね、将来と引き換えに嫌な時間を過ごさずにすんで」
「……違うっ……! 私はお前を嫌ってなんかいない……!」
「……は? 何をふざけたことをおっしゃっていますの?」
自分でも驚くくらい低い声が出てしまった。
今まで散々ミシェルを蔑ろにして罵倒し続けてきたくせに、どの口がそう言うのだ。
「毎回会うたび罵倒の嵐でしたよね? 会うたび目を吊り上げて睨んできましたよね? 挨拶すらまともにされたこともなければ、こうしてきちんと会話を交わすのも今が初めて。これでどうしてその言葉を信じられます? 嫌っていると言われた方が納得できますわ」
流石に自分がしたことの自覚はあるのかバツが悪そうに俯いている。
この男はミシェルに会う度どこかの活動家かというくらい口撃してきたもの。
あんたは何の活動してんのよ? 反婚約活動?
「それは……お前が生意気だから……」
「はい? 生意気? 具体的にどの辺りが?」
ミシェルは常に従順だったと記憶している。生意気な態度などとったときは無かったはずだ。この馬鹿はミシェルのどの部分を見てそう言っているのだろう?
「女のくせに優秀さをひけらかすところがだ! 女はヘレンのように何も知らない純粋無垢であるべきなのに……お前は何も分かっていない! だから罰として辛くあたっていたというのにお前はちっとも反省しなかった! 全てお前のせいだ!」
うわ……紛うことなきモラルハラスメント!
僕ちんより優秀なの許せないー! だから冷たくしてやるー……って、馬鹿じゃないの!?
「え? そんな極めてくだらない理由で猿みたいに顔を赤くしてキイキイ怒鳴り散らしていたのですか? 頭は大丈夫ですか? 恥という概念をご存じで?」
「───っ! ほら! 生意気で可愛さの欠片も無い! お前が態度を改めないから私は仕方なくああしたというのに……何も分かっていない!」
「いやー、そうは言いましても……純粋無垢とはつまり何も知らない存在であれという意味でしょう? それでは王族の妃は務まりませんよ。そもそも王太子の婚約者なんて優秀さを求められて当然ですし、馬鹿が国母になるなんて多方面に迷惑がかかりますけど?」
「王族でもない貴様に何が分かる!? それに妃とは王を癒すことこそが役割だ! お前よりヘレンの方がよほどその役割を理解しているぞ!」
「へー……なら、王妃様は陛下を癒して差し上げているのですか?」
あらあら、黙っちゃったわ。癒してはいないでしょうね、あの二人が仲睦まじく話す姿を見たことがないもの。
「話は戻りますけど、貴方はどうしてわたくしと婚約を解消することを嫌がるのですか? わたくしという障害が無くなれば晴れてヘレンと結ばれますのよ?」
「……最初は私もそう思った、ヘレンと結ばれる為にはお前が邪魔だと。だが、いつしかお前が傷つく顔を見て……」
急に言い淀む王子に嫌な予感がした。その顔に愉悦の表情が浮かび始めるのを見て鳥肌が立つ。
「可愛いと思った。賢しらで生意気なお前が傷つき悲しむ顔は実に愛らしい。そんなお前を手放すことが惜しくなった……」
気持ち悪さが天元突破なんですけど!?
はあ? 悲しむ顔や傷つく顔が可愛いって……あんたメインヒーローのくせしてそんな歪んだ性癖持っていたわけ? 信じられない……。
「だから……わざとわたくしが傷つくような言葉や態度を選んでいたと? わたくしの悲痛な表情を見たいがために?」
「ああ……そうだ。目の前で私がヘレンを寵愛する様を見せつければお前は実に良い表情を見せてくれた。決して涙を見せぬよう耐える顔は愛らしく、そして美しかった……」
うっとりとした表情を浮かべる王子に背筋がぞわっとした。
長年にわたりミシェルを傷つけてきた理由が自分の性癖を満たす為だったなんて……最低だ。
「なんだその馬鹿にしたような物言いは!! 私は言いたくないことを言ってやったというのに失礼だぞ!」
「いや、だって馬鹿みたいじゃないですか? 幼い頃ならまだしも成人してまでママの言いなりだなんて。そんなことをすれば婚約は破棄されると分かっていたでしょう?」
「母上が……お前は私に惚れているから大丈夫だと……」
「惚れてもいないし、大丈夫でもないからこうなっているわけですね」
そのショックを受けましたと言わんばかりの顔が腹立つわぁ……。
確かにミシェルはほんの少しだけそういう気持ちがあったけれど、だからといってそれに胡坐をかいていては駄目でしょう。
「ママの命令は間違っていたどころか貴方の将来を潰すものでしたね。まあ、でも貴方も嫌いな婚約者とお茶を飲むよりも大好きなヘレンと一緒にいた方が心地よく過ごせたでしょう? よかったですね、将来と引き換えに嫌な時間を過ごさずにすんで」
「……違うっ……! 私はお前を嫌ってなんかいない……!」
「……は? 何をふざけたことをおっしゃっていますの?」
自分でも驚くくらい低い声が出てしまった。
今まで散々ミシェルを蔑ろにして罵倒し続けてきたくせに、どの口がそう言うのだ。
「毎回会うたび罵倒の嵐でしたよね? 会うたび目を吊り上げて睨んできましたよね? 挨拶すらまともにされたこともなければ、こうしてきちんと会話を交わすのも今が初めて。これでどうしてその言葉を信じられます? 嫌っていると言われた方が納得できますわ」
流石に自分がしたことの自覚はあるのかバツが悪そうに俯いている。
この男はミシェルに会う度どこかの活動家かというくらい口撃してきたもの。
あんたは何の活動してんのよ? 反婚約活動?
「それは……お前が生意気だから……」
「はい? 生意気? 具体的にどの辺りが?」
ミシェルは常に従順だったと記憶している。生意気な態度などとったときは無かったはずだ。この馬鹿はミシェルのどの部分を見てそう言っているのだろう?
「女のくせに優秀さをひけらかすところがだ! 女はヘレンのように何も知らない純粋無垢であるべきなのに……お前は何も分かっていない! だから罰として辛くあたっていたというのにお前はちっとも反省しなかった! 全てお前のせいだ!」
うわ……紛うことなきモラルハラスメント!
僕ちんより優秀なの許せないー! だから冷たくしてやるー……って、馬鹿じゃないの!?
「え? そんな極めてくだらない理由で猿みたいに顔を赤くしてキイキイ怒鳴り散らしていたのですか? 頭は大丈夫ですか? 恥という概念をご存じで?」
「───っ! ほら! 生意気で可愛さの欠片も無い! お前が態度を改めないから私は仕方なくああしたというのに……何も分かっていない!」
「いやー、そうは言いましても……純粋無垢とはつまり何も知らない存在であれという意味でしょう? それでは王族の妃は務まりませんよ。そもそも王太子の婚約者なんて優秀さを求められて当然ですし、馬鹿が国母になるなんて多方面に迷惑がかかりますけど?」
「王族でもない貴様に何が分かる!? それに妃とは王を癒すことこそが役割だ! お前よりヘレンの方がよほどその役割を理解しているぞ!」
「へー……なら、王妃様は陛下を癒して差し上げているのですか?」
あらあら、黙っちゃったわ。癒してはいないでしょうね、あの二人が仲睦まじく話す姿を見たことがないもの。
「話は戻りますけど、貴方はどうしてわたくしと婚約を解消することを嫌がるのですか? わたくしという障害が無くなれば晴れてヘレンと結ばれますのよ?」
「……最初は私もそう思った、ヘレンと結ばれる為にはお前が邪魔だと。だが、いつしかお前が傷つく顔を見て……」
急に言い淀む王子に嫌な予感がした。その顔に愉悦の表情が浮かび始めるのを見て鳥肌が立つ。
「可愛いと思った。賢しらで生意気なお前が傷つき悲しむ顔は実に愛らしい。そんなお前を手放すことが惜しくなった……」
気持ち悪さが天元突破なんですけど!?
はあ? 悲しむ顔や傷つく顔が可愛いって……あんたメインヒーローのくせしてそんな歪んだ性癖持っていたわけ? 信じられない……。
「だから……わざとわたくしが傷つくような言葉や態度を選んでいたと? わたくしの悲痛な表情を見たいがために?」
「ああ……そうだ。目の前で私がヘレンを寵愛する様を見せつければお前は実に良い表情を見せてくれた。決して涙を見せぬよう耐える顔は愛らしく、そして美しかった……」
うっとりとした表情を浮かべる王子に背筋がぞわっとした。
長年にわたりミシェルを傷つけてきた理由が自分の性癖を満たす為だったなんて……最低だ。
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