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フラグ
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昼食をとり終え、食後のお茶をいただくためにサロンへと移動した。
ついでにここで宴の打ち合わせもしようと思い、大公殿下に来訪する皇太子の資料を見せてもらった。
「あら……? 新しい皇太子のバーソロミュー殿下は婚約者がいないのですか?」
資料には帝国の新たな皇太子の詳細が細かく載っている。そこに婚約者についての記載がなかった。
「ああ、実はそうなんだ。皇太子に婚約者がいないなんて通常有り得ないのだが……。帝国には年の釣り合う高位貴族の令嬢がいないんだよ。ジュリアス殿下の婚約者の公爵令嬢が存命ならばそのままスライドで婚約者になったのだが、生憎亡くなってしまわれた。バーソロミュー殿下には元々婚約者もいないしね」
下手に権力を持たせ、内乱をおこすことのないように敢えて婚約者を持たなかったのだろう。そういう点はルノール大公もそうだ。国王に世継ぎの王子が生まれ、立太子してからようやく妻を娶ったと聞く。
「まあ……それではどうなさるおつもりでしょうか? 伴侶がいないと皇帝に即位もできませんわよね?」
「そこは近隣諸国から年の近い王女もしくは高位貴族の令嬢から探すんじゃないかな? 今回の来訪は嫁探しの意図も含まれるのだろう」
「そうですね、我が国にも妙齢の高位貴族の令嬢はおりますもの。皇太子殿下によいご縁があるとよろしいですね」
そこまで話してふと嫌な予感に襲われた。
もし皇太子殿下が物語通りにヘレンを見初めたらどうなるだろうか、と。
「エルリアン嬢? どうかしたか?」
いきなりフリーズした私を心配し、大公殿下が声をかけてくる。
「あ、いえ……。あの、大公殿下……ヘレンはどうしておりますの?」
万が一にも皇太子殿下がヘレンを見初めたらどうなるか。
それを考えただけでも最悪の展開にしかならない。
平民女性に傾倒し第一皇子が婚約者に刺殺される事態にまで陥ったのだ。これで第二皇子まで平民(ヘレン)に魅了されたら皇帝陛下のお怒りはどれほどになるか。
「ヘレン……? ああ、アレクセイを誑かした女か。あの女なら離宮で療養中の王妃様の世話をしている。本宮には来られないようにしてあるから、君の前に顔を出すこともないから安心してくれ」
「まあ……そうですの。ご配慮くださりありがとうございます」
それならヘレンが皇太子殿下と会うこともないかな。
万が一会ってしまい、ヘレンを見初めたら国際問題にまで発展してしまうかもしれない。
「大公殿下、万が一にも帝国の皇太子殿下がヘレンに会うことのないように気を付けて頂けますか?」
「ん? それはもちろんだ。皇太子殿下の世話係には身元がしっかりしている者を配置する。君とアレクセイの婚約を駄目にした罪人を近づけるつもりはないから安心してくれ」
「そうですか……。それならようございました」
「……もしかして、皇太子殿下があの女を見初めてしまう心配でもしているのかな?」
「ええ、まあ……。馬鹿げた考えではありますが、前例もありますし……」
王太子もカール・イアンもヘレンに一目で落ちた。
だからだろうか、この世界の男はあの儚げな美貌と清らかな性根を愛さずにはいられないのだろうと思ってしまう。
「……アレクセイがあの娘に傾倒したせいで君がそう考えてしまうのも無理はないな。だが、全ての男があの女を好きになるとは思えないよ。現に私も陛下もあの女を見ても興味すらわかなかった。確かに顔は綺麗だが、あの程度なら別に珍しくもないだろう? 何がそんなによかったのか理解できない」
「え……、そうなのですか? あの儚げな美貌に惹かれませんか?」
「いや、美貌でいえば君や私の妻の方がずっと上だと思う。それに好みの問題だろうが、私は儚げな女は好きではない」
「えっ? あっ……そうなのですか……」
男性は皆儚げな女が好きなのかと思っていた。だがそれは単なる決めつけで、好みのタイプなど皆異なって当たり前か。
「あの女には監視もつけているし、安心してくれて構わないよ」
大公殿下、それはフラグです。
嫌な予感しかしません!
私のこの予感は当たっていて、ヘレンが後にとんでもない行動に出るなんてことをこの時は想像もしていなかった。
ついでにここで宴の打ち合わせもしようと思い、大公殿下に来訪する皇太子の資料を見せてもらった。
「あら……? 新しい皇太子のバーソロミュー殿下は婚約者がいないのですか?」
資料には帝国の新たな皇太子の詳細が細かく載っている。そこに婚約者についての記載がなかった。
「ああ、実はそうなんだ。皇太子に婚約者がいないなんて通常有り得ないのだが……。帝国には年の釣り合う高位貴族の令嬢がいないんだよ。ジュリアス殿下の婚約者の公爵令嬢が存命ならばそのままスライドで婚約者になったのだが、生憎亡くなってしまわれた。バーソロミュー殿下には元々婚約者もいないしね」
下手に権力を持たせ、内乱をおこすことのないように敢えて婚約者を持たなかったのだろう。そういう点はルノール大公もそうだ。国王に世継ぎの王子が生まれ、立太子してからようやく妻を娶ったと聞く。
「まあ……それではどうなさるおつもりでしょうか? 伴侶がいないと皇帝に即位もできませんわよね?」
「そこは近隣諸国から年の近い王女もしくは高位貴族の令嬢から探すんじゃないかな? 今回の来訪は嫁探しの意図も含まれるのだろう」
「そうですね、我が国にも妙齢の高位貴族の令嬢はおりますもの。皇太子殿下によいご縁があるとよろしいですね」
そこまで話してふと嫌な予感に襲われた。
もし皇太子殿下が物語通りにヘレンを見初めたらどうなるだろうか、と。
「エルリアン嬢? どうかしたか?」
いきなりフリーズした私を心配し、大公殿下が声をかけてくる。
「あ、いえ……。あの、大公殿下……ヘレンはどうしておりますの?」
万が一にも皇太子殿下がヘレンを見初めたらどうなるか。
それを考えただけでも最悪の展開にしかならない。
平民女性に傾倒し第一皇子が婚約者に刺殺される事態にまで陥ったのだ。これで第二皇子まで平民(ヘレン)に魅了されたら皇帝陛下のお怒りはどれほどになるか。
「ヘレン……? ああ、アレクセイを誑かした女か。あの女なら離宮で療養中の王妃様の世話をしている。本宮には来られないようにしてあるから、君の前に顔を出すこともないから安心してくれ」
「まあ……そうですの。ご配慮くださりありがとうございます」
それならヘレンが皇太子殿下と会うこともないかな。
万が一会ってしまい、ヘレンを見初めたら国際問題にまで発展してしまうかもしれない。
「大公殿下、万が一にも帝国の皇太子殿下がヘレンに会うことのないように気を付けて頂けますか?」
「ん? それはもちろんだ。皇太子殿下の世話係には身元がしっかりしている者を配置する。君とアレクセイの婚約を駄目にした罪人を近づけるつもりはないから安心してくれ」
「そうですか……。それならようございました」
「……もしかして、皇太子殿下があの女を見初めてしまう心配でもしているのかな?」
「ええ、まあ……。馬鹿げた考えではありますが、前例もありますし……」
王太子もカール・イアンもヘレンに一目で落ちた。
だからだろうか、この世界の男はあの儚げな美貌と清らかな性根を愛さずにはいられないのだろうと思ってしまう。
「……アレクセイがあの娘に傾倒したせいで君がそう考えてしまうのも無理はないな。だが、全ての男があの女を好きになるとは思えないよ。現に私も陛下もあの女を見ても興味すらわかなかった。確かに顔は綺麗だが、あの程度なら別に珍しくもないだろう? 何がそんなによかったのか理解できない」
「え……、そうなのですか? あの儚げな美貌に惹かれませんか?」
「いや、美貌でいえば君や私の妻の方がずっと上だと思う。それに好みの問題だろうが、私は儚げな女は好きではない」
「えっ? あっ……そうなのですか……」
男性は皆儚げな女が好きなのかと思っていた。だがそれは単なる決めつけで、好みのタイプなど皆異なって当たり前か。
「あの女には監視もつけているし、安心してくれて構わないよ」
大公殿下、それはフラグです。
嫌な予感しかしません!
私のこの予感は当たっていて、ヘレンが後にとんでもない行動に出るなんてことをこの時は想像もしていなかった。
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