茶番には付き合っていられません

わらびもち

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投げられた扇子

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 大公殿下と宴の打ち合わせも兼ね、昼食をご一緒することになった。
 
 食堂へと向かう回廊で、聞きなれた不機嫌な声が私の名前を呼ぶ。

「ミシェル!!」

 振り向くと、案の定接近禁止を言い渡されていたはずの王太子がそこにいた。
 いつもと同じようにこちらを睨んで。

「アレクセイ! エルリアン嬢に会うなと言われていたはずだろう!? どうしてここにいるんだ!!」

「叔父上! 私はミシェルに……」

 大公殿下に怒られて反論しかける王太子の顔めがけて鉄扇を投げつけた。
 スコン、といい音を立ててクリーンヒット。いいね、我ながら中々の投球だわ。球じゃないけど。

 阿呆は「ウグッ!?」とかきったない声出してその場に倒れた。
 私はその姿を唖然と見ていた大公に向き直り、呆れた声で告げる。

「大公殿下、王太子殿下は言われたことすら理解できていないようですわ」

 コイツが人の話を聞かないのは今に始まったことじゃない。
 もう、言いつけを破ったら体にこうやって教え込ませるしかないんじゃないかな?

「ハアー……、ほんっとうにすまない、エルリアン嬢……。こんなに馬鹿だとは……」

 まあ普通はそういう反応するよね。私はコイツが馬鹿だって知っているから、こういう突撃もあるだろうと思っていた。だけど常識人の大公にはいいつけ破って突撃してくる馬鹿がいるとすら想像してなかったみたい。

「大公殿下、エルレアン公爵令嬢、大変申し訳ございません!」

 顔面蒼白の侍従と兵士たちが慌てた様子でこちらに向かってくる。

「何故アレクセイが外に出ているのだ!? 部屋から出すなと陛下より命じられていたはずだろう!」

「そ、それが……窓から脱出されたようでして……」

 王太子、窓から逃げ出したの? 無駄にすごいね。

「ハアー……なら、窓のない部屋へと移動させろ。それから部屋の扉にも外から鍵がかけておけ。これ以上騒ぎをおこされるわけにはいかないからな」
 
 ああいう馬鹿って自分が何で軟禁されているか分かってないからすぐこうやって逃げ出すんだろうね。

 ああ、侍従も兵士も可哀想に、あんな憔悴した顔で……。王太子が逃げ出せば下の者にも迷惑がかかるってことを、きっとあの馬鹿は一生分からないんだろうな。

「エルリアン嬢……すまなかった、本当に……」

「いいえ、気にしておりませんわ大公殿下。先を急ぎましょうか」

 馬鹿のせいで余計な時間を割いてしまった。
 早く宴の準備にとりかかりたいのに、本当にあの馬鹿はろくなことをしない。

 王太子の仕事だってほぼミシェルに丸投げ、その間アイツはヘレンとイチャついていた。
 仕事をしてもらっておきながら冷遇するとか根性ひん曲がっている。
 
 あー……思い返してムカムカしてきた。もう何発か鉄扇打ち込んでやりたい。

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