どうして許されると思ったの?

わらびもち

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結婚式と初夜

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 結婚式で初めて顔を合わせたフレン伯爵レイモンドは釣書よりもずっといい男だった。
 陽の光を浴びて煌めく金の髪に夏の空のように青い瞳、整った容貌、スラリとした体躯に思わず目を奪われる。

 物腰も柔らかくエスコートも申し分ない。
 初対面で好感度が爆上がりだ。もう、ただ『好き……!』という感情が湧き上がる。

(いやいや……落ち着くのよ。何も問題が無いのなら2度も嫁に逃げられたりしないわ。浮かれては駄目、必ず何かあるはずよ……)

 もしかするとこの後……おそらくは初夜に二人きりになった際に「君を愛することはない。私からの愛は今後一切期待しないでもらおう」なんていう台詞をやけに芝居がかった態度で宣うかもしれない。しかも傍らに見知らぬ女を侍らせるというオマケ付きで。

 来るべき初夜に備えて身構えていたシスティーナだが、寝室に入って来た夫は予想外の反応を見せた。

「……綺麗だ。花嫁衣裳を着た貴女も美しかったが、その姿も実に美しい……」

 ファッ!!?

 いけない、思わず令嬢らしからぬ声が出るところだった。

 信じられないという顔でシスティーナは夫の方を向く。
 すると、頬をかすかに赤く染めて照れる美男子という眼福ものが視界に入る。

 思わぬ猛攻撃に胸がキュンとかいう意味不明の音をたてる。
 なんだか動機がするし、顔も熱い。

「私のもとに嫁いでくれてありがとう。少しずつでも構わないから私のことを愛してくれると嬉しい」

 優しく蕩けるような眼差しと声に心臓が煩いくらい激しく鼓動を刻む。
 驚きと、ときめきで固まるシスティーナにレイモンドは優しく口づけを落とす。
 そのまま自然と初夜が始まり、甘く優しい時を二人で過ごした。
 

 あれ? おかしい……。初夜がつつがなく済んでしまった。

 釈然としないシスティーナは隣で眠る夫に目を遣る。

(……綺麗な寝顔ね)

 つくづく自分好みの容姿だとシスティーナは夫の寝顔をうっとりと見つめた。
 優しいうえに紳士的でこのうえなく理想の夫と言っていい。

 鉱山目当ての結婚だったが、思いがけず理想の相手と夫婦になれたのは僥倖だ。
 縁あって一緒になったのだから出来ればずっと仲睦まじく結婚生活を続けたいと思う。

(だけど……何もないなら二度も嫁に逃げられるわけがないのよね。しかも結婚後一年足らずで……)

 レイモンドの前妻について調べたところ、二人共結婚して一年も経たないうちに離婚していることが分かった。原因はどちらも“伯爵夫人としての重圧に耐えきれなかった”というもの。

 王族や公爵に嫁いだならまだしも、伯爵夫人程度でそこまで負担がかかるものだろうか?

 これが平民育ちで途中から貴族として迎えられた庶子ならばまだ分かる。
 だが、前妻二人共生まれながらの貴族令嬢だったそう。しかも斜陽だとかそういうわけでもない。いたって普通の貴族家出身で、特に礼儀作法に問題があるというわけでもなかったそうだ。

 なら、一体何が原因で二人共逃げるように離婚してしまったのだろう。
 システィーナは夫の寝顔を眺めながら思案に暮れた。
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