49 / 297
第2弾 いつか王子様が
18Memory⑦(エイティーン・メモリー)
しおりを挟むガコッ!
ジョーは苛立たしげに廊下のバケツを蹴った。
よくジョーは八つ当たりにバケツを蹴るのでブリキのバケツは凹んでデコボコだ。
「あらら、メラリーちゃんに拒絶されたみたいね~?」
ゴードンが廊下を歩いてきた。
「的に立つのヤダってんすよ。アイツ、結構、度胸あるかと思ったのによ」
ジョーは蹴ったバケツを拾って几帳面に元の位置に戻す。
「気弱なコではないと思うわよ。友達3人相手に自分だけステーキ食べるって言い張って譲らないコなんだから」
「それ、たんに我が儘じゃねっすか?」
「ま、そうかしらね。でも、ヒトの言いなりになるようなコじゃないのは確かね」
「む~ん」
ジョーは顎に手を当て何か考える顔付きになった。
その夜。
キャスト宿舎。
コンコン、
ジョーが向かい側のメラリーの部屋の扉をノックをして開ける。
だだっ広いフローリングの部屋の真ん中に敷いてある布団の上に体育座りでメラリーはテレビを観ていた。
テーブル代わりに布団を買った通販のダンボール箱が置いてある。
親元を離れたメラリーはホントに貧乏なのだ。
「メラリ~、さっきはゴメンな~。悪かったよ~」
部屋に上がり込みながらジョーは低姿勢に謝る。
「……」
メラリーは知らん顔してテレビを観ている。
「あ、宿舎、慣れた?ド田舎だからよ。夜、静か過ぎてサミシーだろ?ホームシックとかなってねえ?」
キャラクターの馬のバッキーの全長60cmほどのぬいぐるみをメラリーに差し出す。
ジョーは人情に訴える作戦らしい。
「ぜんぜんっ」
メラリーはぶっきらぼうに答えて、ぬいぐるみを受け取って布団の上に置いた。
「あ、そ。――あ、肉まん、食う?」
マーケットの買い物袋から肉まんを出すジョー。
「いただきます♪」
嬉しそうにパクッと肉まんに噛り付くメラリー。
「お茶もあるぜ~」
ジョーはほうじ茶のペットボトルをダンボール箱の上に置く。
「――(グビグビ)」
メラリーはほうじ茶を飲み、肉まんも2個目を頬張る。
「――なあ?メラリー、ショウのキャストってのはよ、一蓮托生なんだよな。雨の日も日照りの日も苦楽を共にする、一喜一憂を分かち合う、――家族も同然なんだよ。お前も――俺のことを兄貴っと思って頼りにしてくれていいからよ――」
わざわざ窓辺に立ち、夜空を見上げながら、しんみりと語るジョー。
セリフ回しが臭過ぎて芝居がバレバレである。
「兄弟ってのは助け合わなきゃいけねえ訳でよ」
ジョーは振り返ってメラリーを見やる。
「なんか良いこと言おうとしても、やなものは、やですから」
メラリーは素っ気なく言ってモグモグと3個目の肉まんを頬張る。
「……」
ジョーは思いっ切り顔をしかめた。
ガチョリ。
ジョーはメラリーの部屋を出て、廊下を徒歩3歩の自分の部屋へ戻った。
「――ちっ、肉まんで手懐けるのは無理か」
プルルン♪
着メロが鳴ってケータイに出る。
「お~。あ、これから?オッケー、オッケー♪」
たちまち顔がニヤけるジョーだった。
プツ。
メラリーはバラエティー番組が終わるとテレビの電源をオフにして、布団に寝転がった。
「……」
ジョーがくれたバッキーのぬいぐるみと目が合う。
「ちょっと、態度、悪かったかな?練習場でホントは、俺、泣き真似だったのに謝ってくれちゃったし、ぬいぐるみと肉まん5個もくれたし」
ムクッと布団から起き上がる。
コンコン。
メラリーはノックしてジョーの部屋の扉を開け、
「ジョーさ~ん?さっきはどうも――うわっ?」
思いがけない光景にビックリ仰天した。
バスタオルを巻いただけのグラマー美女がベッドにいる。
「――きゃっ?」
グラマー美女は驚いてベッドのカーテンの中に身を隠した。
この時はメラリーと初対面だったがフレンチカンカンの踊り子のアン(安藤由香)だ。
「――わっ?メラリー?」
ジョーがびしょ濡れの全裸のままバスルームから出てくる。
「おっ、お邪魔しましたっ」
ガチャン。
メラリーは慌てて玄関扉を閉めた。
「な、なんだ。女のヒトとエッチとかケロッとしてんじゃんっ」
メラリーは初めて生で見た妙齢のグラマー美女のバスタオル巻き姿にドキドキである。
「メ、メラリ~ッ」
ジョーがバスローブ姿で廊下に飛び出てきた。
「メラリー、お前、もしかして、気が変わって、射撃の的、立ってくれる気になったんじゃ、今、それ、言いに来たんだろ?そーなんだろっ?」
ガシッとメラリーの両肩を掴むジョー。
「ちっ、違いますよっ」
ブンブンと首を振るメラリー。
「ジョーちゃんっ?なによっ。ヒトほったらかして、わたし帰るわよっ」
アンが早々と服を着て部屋から出てきた。
「違くねえだろ?メラリー、やる気になったんだよなっ?」
アンを無視してメラリーに詰め寄るジョー。
「もうっ、ホンットに帰るからっ」
アンは階段のほうへスタスタと歩いていく。
「彼女、怒って帰っちゃいますよ?」
メラリーはアンを指差してジョーの顔を見上げた。
「彼女ぉ?じゃねーよ。べつに、女、アイツだけじゃねーもん」
パコッ!
「――てっ」
飛んできたDVDケースがジョーの後ろ頭に当たる。
「借りてた西部劇のDVDっ。ちゃんと返したわよっ」
ダダダーーッ。
アンは腹立たしげに階段を駆け下りていった。
「――おやすみなさい」
軽蔑の眼差しでジョーを一瞥してメラリーは素早く自分の部屋へ入った。
ガチャン。
すぐさま玄関扉を閉め、カチッと施錠。
「――メ~ラ~リ~~ィ――」
ジョーは玄関扉の覗き穴に張り付いて憐れっぽく呼び掛けたが、返事の代わりに部屋の電気がパチッと消された。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる