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第1弾 黄色いリボン

Fight(ファイト)

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 その頃。

 スイーツ・ワゴンでは、

 ゲストはみなパレードを見ているので暇なクララとアニタはおしゃべりに興じていた。

「クララ、知らなかったのぉ?このタウンの男って肉食系しかいないって評判なのよぉ。特にジョーさんってスケコマシだもん。ダメじゃない。のこのこと部屋まで行ったら『身持ちの悪い姉ちゃん』と思われるわよぉ」

『身持ちの悪い姉ちゃん』とは西部開拓時代の売女の意味である。

「な、なによ。アニタなんて初デートで彼の部屋に行ってエッチしたんでしょ?」

 クララはムッとして言い返す。

「ええ?わたしとケントがぁ?やっだ。まだ手を繋ぐくらいしかしてないわよぉ」

 アニタはとんでもないという顔で首を振った。

 楽団のトランペット吹きはケント(吹田堅人)という名前らしい。

「だって、お泊まりしたんでしょ?アニタ、『帰りたくない』って言ったんでしょ?」

 クララは甘味処でアニタの話を勘違いして聞いていたので、てっきり2人は肉体関係になったと思い込んでいた。

「ああ、けど、彼、夜9時からタウンのサルーンでトランペット吹きのバイトがあるってぇ。仕方ないからわたしもタウンに戻ってマダムのダンスレッスンを受けてたのよぉ。そのままダンサーの友達のキャスト宿舎に泊まってぇ。ケントの部屋には次の日の午後にまた行ったのよぉ」

 アニタはドレスの裾を左右に振ってカンカンダンスをしてみせる。

「――え?そうだったの?」

 クララは拍子抜けした。

 元々、アニタはフレンチカンカンの踊り子が志望で今年のオーディションは落ちたが、スイーツ・ワゴンの売り子をしながら来年のオーディションを目指している。

 ウェスタン・タウンにはタウンのキャストをしながらショウのキャストを目指してオーディションを受け続けているヒトが大勢いるのだ。

「やだ、ごめん。あたしったら」

 クララはアニタを誤解していた自分が恥ずかしくなった。

 みな夢に向かって努力している。

(――わたしだって)

 クララはおしゃべりをやめて、せっせと丸太のテーブルを拭き始めた。

 この3月に女子大を卒業したクララは4月から社会人になる。

 就職先はこのウェスタン・タウンなのだ。
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