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第1弾 黄色いリボン

Gallop(ギャロップ)

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 数日後。

 乗馬クラブの馬場。

 メラリーと太田が馬場に立っている。


 隣のモニュメント・バレー。

 パッカ、
 パッカ、

 パッカ、
 パッカ、

 馬に乗ってやってくるジョー、ロバート、ゴードン。

「――あら?メラリーちゃん。乗馬、わたしに習うって決めたんじゃなかったの?」

 ゴードンが不満そうに訊ねた。

「だって、よぉく考えたら、まだマーティと結婚してる訳じゃないし。エマさん、フリーっすよね?」

 メラリーはシレッとして答える。

「――え?そ、そうか――っ」

 ジョーは『シマッタ』という顔をした。

「メラリーの奴、ポジティブだな」

 ロバートは感心した顔だ。


 パカ、
 パカ、

 馬場に馬を引いてダンがやってきた。

「あれ?」
「ダンさん??」
   
 メラリーと太田はハテナの浮かんだ顔でダンを見た。

「え~、この度、前任者が休職することになりまして、初心者クラスを受け持つことになりました、壇です。よろしくっ」

 ダンが快活な声で挨拶をする。

「――え、え?エマさん、休職って?」

 メラリーは怪訝そうに目をパチクリした。

「いや、順序が逆でお恥ずかしいことですが、わたしも、ついに、お祖父ちゃんに――」

 ダンが照れ臭そうに鼻の頭を掻く。

「――(ガーン)」

 メラリーは当てが外れ、思いっ切り顔を歪めた。

「あっ、エマさんはオメデタで産休ですかっ?おめでとうございます~」

 太田が能天気に祝福をする。

「それに、ダンさんに習えるなんて心強いなぁ。――ねえ?メラリーちゃん?――あ、れ?」
   
 そう言いながら太田が横を見るが、メラリーの姿がない。

 スタ。
 スタ。

 メラリーは横木の柵のほうへ歩いて、

「やっぱり、ゴードンさんに習う」

 柵を乗り越えてモニュメント・バレーに入った。

「ええ、そんな」

 ダンが気落ちした声を出した。

「メラリーちゃ~ん」

 太田も引き止めるように声を掛ける。


「ジョーさん、前、乗っけて」

 メラリーがジョーの馬のサドルのホーンを掴んで飛び付いた。

「ゲンキンな奴」
   
 ジョーは鞍座から腰をアンケラに移動して、メラリーの身体を引っ張り上げる。

「んしょっ」
   
 メラリーはチョコンと鞍座に座るなり、

「――えいっ」
   
 八つ当たり気味に馬の脇腹をspur(拍車)で蹴った。

 怖い物知らずのメラリーは加減というものを知らないのだ。

「あっ、馬鹿。勝手に――っ」
   
 ジョーが怒る間もなく馬は勢いよく駆け出す。

 パッカ!
 パッカ!

 パッカ!
 パッカ!

 ジョーとメラリーを乗せた馬はどんどんと加速していく。

「お~い。待てよ~」
   
 後を追って駆け出すロバート。

「あ~、待って~」
   
 続いて駆け出すゴードン。

 
 パッカ!
 パッカ!

 パッカ!
 パッカ!

 勢いよく駆けるうちに爽快感でニコニコ顔になるメラリー。

「……」

 レーン(手綱)を取るジョーもなんだかニコニコ顔になる。

 パッカ!
 パッカ!

 パッカ!
 パッカ!

 モニュメント・バレーを3頭と4人が颯爽と駆け抜けていった。


 第2弾に続く
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