21 / 297
第1弾 黄色いリボン
Easy Come, Easy Go.①(簡単に来て、簡単に去る)
しおりを挟む同じ頃。
タウンのキャストの女子更衣室では、
クララ(鞍元日登美)がドレスを脱いで私服に着替えていた。
クララが売り子をしている『バミーのキャロットケーキの店』は白兎のバミーの店という設定だけに野外のスイーツ・ワゴンなのでクララも雨キャンなのだ。
「――ねっ?どうお?」
同じく野外のスイーツ・ワゴンの『バーバラのアイスクリームの店』の売り子をしているアニタ(大仁田茜)がパチパチと瞬きしてみせる。
パサ。
パサ。
いつもより睫がボリュームアップしている。
「あ?マスカラ変えた?」
クララはアニタに顔を近づけて訊ねた。
「ふふふん、さっきぃ、楽団の男のコに映画に誘われちゃったぁ♪今、タウンのシアターで『白昼の決闘』やってるんだってぇ」
アニタはそれが言いたかったらしい。
マスカラの質問は無視である。
ショウとパレードが中止なら楽団キャストも雨キャンだ。
美人ではないがフレンドリーな性格でムチッと肉感的なアニタはモテるのだ。
「~~♪」
アニタはさらにリップカラーを念入りに塗っている。
「いいな~~。『白昼の決闘』~~。グレゴリー・ペックが最強に格好良い頃よね~~」
クララは自分も一緒に映画を観に行きたそうに鏡の前をブラブラと歩きながらアニタの顔を窺った。
「駄目よっっ。デートなんだからっっ」
アニタは邪険に撥ね付け、
「ヒトの恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ~ってね」
そんな古いことを言って手鏡の角度を変えて周到にメイクをチェックする。
「ふぅんだ」
クララは鏡越しにアニタに下唇を突き出した。
バックステージのロビー。
「――つまんない――」
クララは窓際の椅子に座って、不興気に吐息した。
こうも連日だと雨キャンの時間潰しにも飽き飽きしている。
おまけに雨キャン続きで今月はギャラも半分くらいになりそうだ。
「――あっ」
窓の外にアニタが楽団の若者と仲良く相合傘で歩いていくのが見えた。
早くもアニタは若者の腕に自分の腕を回し、身体を密着させている。
「あ~~」
あの楽団の若者は前々からアニタが「ね?ちょっと格好良くない?」と目を付けていたトランペット吹きだ。
(昨日まで話したこともなかったのに、こんな急展開?)
アニタの早業に舌を巻く。
クララのほうはお目当てのジョーとまだ何の接触もない。
同時期からバイトを始めていたのにずいぶんとアニタに差を付けられてしまった。
「ちぇ~だ」
クララは面白くない。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる