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◆番外編◆ 消えないもの~side要~
#8
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あっさり肯定してしまった俺に気を良くしたのか、夏目の話は先へ先へとドンドン進んでいく。
夏目のことだからきっと、さっきも言ってた通り、契約を交わしてでも傍に居て欲しいと思うほど好きな美菜に、やっと好きだと言ってもらえたにも関わらず。
今さら処女の美菜を穢けがすのが怖いとかって躊躇する意味が分かんねぇ、さっさと自分のモノにしてしまえって言いたいんだろうと思う。
「だったらさぁ、そんなウジウジしてねーで、美菜ちゃんのこと早く女にしてやれよ、EDの薬だって貰ってるんだしさぁ……。美菜ちゃんの初めてもらうんだから、記念になるような、特別な日にしてやれよ。
もうすぐ美優の命日だし。俺、明日の金曜の夜から日曜の夜まで、実家に帰ろうと思ってるからさぁ……。要はもう来なくていいからな。美優だって、要には幸せになってもらいたくて、別れるって決めたんだろうし。いつまでも要に墓参り来られたら、未練残って成仏できないだろうしさぁ。いい機会だと思うんだ」
「……」
そうやって、美菜とのことで心配してくれているのは分かるし、美優とのことで区切りをつけようとしてくれているのもありがたいと思う。
けど、美菜に触れるのを躊躇している原因がまさか夏目とのことだなんて、まさか本人を前にそんなことを面と向かって言える訳もなく……。
だからって、他に適当な理由なんて思い浮かぶ訳もないから、俺はまた黙り込むしかなくて。
そしたら夏目は、それをどうやら美優の所為だと勘違いしたようで……。
「そんな暗くなるなってぇ? もう六年も経ったんだし。もう充分だって、な?」
未だ窓の外に視線を向けたままの俺の顔を覗き込んできて、案ずるなと念を押すように言ってくる。
「……いや」『そうじゃない』って続けようとした俺の声は、何かを思い出した風な夏目の声に虚しく遮られることになったのだが……。
「あっ、そーだ。それからもうひとつ、要には言っとかなきゃいけないことがあったんだった。
要、お前、美菜ちゃんに出逢う前、酒呑むとだいたいいつも酔っ払って記憶なかくしてたし、あの日もきっとそーだったろうなーと思って。まぁ、一応言っとくけど。俺と深ーいBL的なやらしい関係になったと思ってるんだったら、それ、勘違いだからさぁ。
俺らそーいうことは“まだ”やってねーから」
「……へ!?」
『まだ』ってとこが若干引っ掛かるし。
『そういうことはもっと早く言えよ』とか。
色々と突っ込みどころ満載なのだけれど、とにかく夏目の放ったこの言葉に驚きすぎた俺は、危うく椅子から落っこちそうになった。
まぁ、そこは、ハイスペックな俺、難なく免れたのだけれど、その代わり、部屋には俺の出した素っ頓狂な声が響き渡ることとなったのだった。
夏目のことだからきっと、さっきも言ってた通り、契約を交わしてでも傍に居て欲しいと思うほど好きな美菜に、やっと好きだと言ってもらえたにも関わらず。
今さら処女の美菜を穢けがすのが怖いとかって躊躇する意味が分かんねぇ、さっさと自分のモノにしてしまえって言いたいんだろうと思う。
「だったらさぁ、そんなウジウジしてねーで、美菜ちゃんのこと早く女にしてやれよ、EDの薬だって貰ってるんだしさぁ……。美菜ちゃんの初めてもらうんだから、記念になるような、特別な日にしてやれよ。
もうすぐ美優の命日だし。俺、明日の金曜の夜から日曜の夜まで、実家に帰ろうと思ってるからさぁ……。要はもう来なくていいからな。美優だって、要には幸せになってもらいたくて、別れるって決めたんだろうし。いつまでも要に墓参り来られたら、未練残って成仏できないだろうしさぁ。いい機会だと思うんだ」
「……」
そうやって、美菜とのことで心配してくれているのは分かるし、美優とのことで区切りをつけようとしてくれているのもありがたいと思う。
けど、美菜に触れるのを躊躇している原因がまさか夏目とのことだなんて、まさか本人を前にそんなことを面と向かって言える訳もなく……。
だからって、他に適当な理由なんて思い浮かぶ訳もないから、俺はまた黙り込むしかなくて。
そしたら夏目は、それをどうやら美優の所為だと勘違いしたようで……。
「そんな暗くなるなってぇ? もう六年も経ったんだし。もう充分だって、な?」
未だ窓の外に視線を向けたままの俺の顔を覗き込んできて、案ずるなと念を押すように言ってくる。
「……いや」『そうじゃない』って続けようとした俺の声は、何かを思い出した風な夏目の声に虚しく遮られることになったのだが……。
「あっ、そーだ。それからもうひとつ、要には言っとかなきゃいけないことがあったんだった。
要、お前、美菜ちゃんに出逢う前、酒呑むとだいたいいつも酔っ払って記憶なかくしてたし、あの日もきっとそーだったろうなーと思って。まぁ、一応言っとくけど。俺と深ーいBL的なやらしい関係になったと思ってるんだったら、それ、勘違いだからさぁ。
俺らそーいうことは“まだ”やってねーから」
「……へ!?」
『まだ』ってとこが若干引っ掛かるし。
『そういうことはもっと早く言えよ』とか。
色々と突っ込みどころ満載なのだけれど、とにかく夏目の放ったこの言葉に驚きすぎた俺は、危うく椅子から落っこちそうになった。
まぁ、そこは、ハイスペックな俺、難なく免れたのだけれど、その代わり、部屋には俺の出した素っ頓狂な声が響き渡ることとなったのだった。
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