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◆番外編◆ 消えないもの~side要~
#7
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一目惚れなんてしたこともなかったし、そんなモノ信じたことなんてなかったが、きっと、そんな類のモノだったんだろうと思う……。
そう考えたら、美菜と一緒に同じ時間を過ごすようになってからの自分がしてきたことの全ての辻褄が合う。
美菜と初めて出逢った時も、夏目がいつも通りに厳しく美菜に詰め寄った時も、美菜が可哀想で黙って見ていられなくて、夏目を宥めて助け舟を出してやったり。
そういえばあの後、夏目に素性を探らせたりもしたっけ……。
美菜のことを初めて会長夫婦に逢わせるために本宅に連れて行った時だってそうだ。
美菜と二人っきりで待っている間、慣れない場所で、着なれない着物でずっと正座でいた所為もあったのか、緊張しっぱなしでガチガチになってしまってた美菜。
自分が美菜のことをそういう状況に巻き込んでいることも棚に上げて、少しでもその緊張を解いてやりたくて、優しい言葉を掛けてやってたし。
それで、美菜の纏う空気が少し緩んだことで、少しでも俺に心を開いてくれた気がして……。
嬉しくて、年甲斐もなくはしゃいでしまってた俺は、久し振りに逢った妙さんにまで、美菜のことを紹介していたり。
会長夫婦に美菜を引き合わせた時にも、美菜とのことを喜んで受け入れてもらえたことがなにより嬉しかったし。
帰りの車の中では、美菜に自分から膝枕させておいて、頭を撫でて貰ったからっていい気になって、調子に乗ってしまったり。
夜は夜で、美菜に早く好きになってもらいたいって気持ちばかりが急いて先走りして。
思い通りにならないアレや美菜に腹が立って、美菜に酷いことをしてしまってたし。
どれもこれも全部、好きになってしまってた美菜にも、自分と同じように俺のことを好きになって欲しかったからだと思う。
……自分自身のことなのに、いや、自分のことだからこそ、今の今まで、そんなことにも気付けなかった。
夏目のお陰で、そのことに気付くことになったのはいいが、夏目とのことがある以上、俺が美菜に触れてしまうのが怖いということに変わりはない。
どうしたって消すことなんてできない過去を嘆くことしかできない俺は、夏目の言葉に何かを返すこともできないまま、ただただ黙り込むことしかできないでいた。
どうすることもできないままふと瞼を閉じてみれば、浮かんでくるのは、寂しそうな表情をした美菜の姿で。
美菜にそんな表情をさせたい訳じゃないのに、どうしたらいいかなんて分からない。
「おーい、要」
そんな風に、自分の世界に入り込んでいた俺のすぐ後ろから、夏目の呼ぶ声が聞こえてきて。
「……ん?」
それでやっと我に返ることができた俺がなんとか返したモノに対して返って来たモノはというと……。
「俺、ちょっと言い過ぎたけどさぁ。
契約交わしてでも、美菜ちゃんには、どうしても傍に居て欲しかったんだろ?」
さっきまでの追い込みをかけるようなあの鋭い追及は一体なんだったんだろうと、肩透かしを食らってしまうような穏やかなモノだった所為で……。
「あぁ」
俺がついうっかりと肯定してしまってたくらいだ。
そう考えたら、美菜と一緒に同じ時間を過ごすようになってからの自分がしてきたことの全ての辻褄が合う。
美菜と初めて出逢った時も、夏目がいつも通りに厳しく美菜に詰め寄った時も、美菜が可哀想で黙って見ていられなくて、夏目を宥めて助け舟を出してやったり。
そういえばあの後、夏目に素性を探らせたりもしたっけ……。
美菜のことを初めて会長夫婦に逢わせるために本宅に連れて行った時だってそうだ。
美菜と二人っきりで待っている間、慣れない場所で、着なれない着物でずっと正座でいた所為もあったのか、緊張しっぱなしでガチガチになってしまってた美菜。
自分が美菜のことをそういう状況に巻き込んでいることも棚に上げて、少しでもその緊張を解いてやりたくて、優しい言葉を掛けてやってたし。
それで、美菜の纏う空気が少し緩んだことで、少しでも俺に心を開いてくれた気がして……。
嬉しくて、年甲斐もなくはしゃいでしまってた俺は、久し振りに逢った妙さんにまで、美菜のことを紹介していたり。
会長夫婦に美菜を引き合わせた時にも、美菜とのことを喜んで受け入れてもらえたことがなにより嬉しかったし。
帰りの車の中では、美菜に自分から膝枕させておいて、頭を撫でて貰ったからっていい気になって、調子に乗ってしまったり。
夜は夜で、美菜に早く好きになってもらいたいって気持ちばかりが急いて先走りして。
思い通りにならないアレや美菜に腹が立って、美菜に酷いことをしてしまってたし。
どれもこれも全部、好きになってしまってた美菜にも、自分と同じように俺のことを好きになって欲しかったからだと思う。
……自分自身のことなのに、いや、自分のことだからこそ、今の今まで、そんなことにも気付けなかった。
夏目のお陰で、そのことに気付くことになったのはいいが、夏目とのことがある以上、俺が美菜に触れてしまうのが怖いということに変わりはない。
どうしたって消すことなんてできない過去を嘆くことしかできない俺は、夏目の言葉に何かを返すこともできないまま、ただただ黙り込むことしかできないでいた。
どうすることもできないままふと瞼を閉じてみれば、浮かんでくるのは、寂しそうな表情をした美菜の姿で。
美菜にそんな表情をさせたい訳じゃないのに、どうしたらいいかなんて分からない。
「おーい、要」
そんな風に、自分の世界に入り込んでいた俺のすぐ後ろから、夏目の呼ぶ声が聞こえてきて。
「……ん?」
それでやっと我に返ることができた俺がなんとか返したモノに対して返って来たモノはというと……。
「俺、ちょっと言い過ぎたけどさぁ。
契約交わしてでも、美菜ちゃんには、どうしても傍に居て欲しかったんだろ?」
さっきまでの追い込みをかけるようなあの鋭い追及は一体なんだったんだろうと、肩透かしを食らってしまうような穏やかなモノだった所為で……。
「あぁ」
俺がついうっかりと肯定してしまってたくらいだ。
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