308 / 427
◆番外編◆ かなわないもの~side要~
#6
しおりを挟む
一体、何がどうなっているのかすぐに理解なんてできずに、放心したままの俺の首元に美菜はギュッと強く抱き着いてきて。
それでも俺は、暫くの間、ただただ美菜にされるがままで身動ぎできないでいた。
少しして、美菜に言われた一部始終のことがまるでコマ送りの映像でも見ているように、頭の中でリフレインし始めて、漸く理解できたのだが……。
それと同時に、頭に浮かんでくることと言えば、夏目のことで。
――美菜は夏目のことが好きじゃなかったのか?
でも、『俺に可愛がってもらいたい。キスして欲しいと思ってしまう』それが全部、俺のせいだと言ってきた美菜。
もしかして、譲が言ってたように、入院中ずっと傍で付き添っていた俺のことを少しは好きになってくれてるってことなのか?
それとも、身体だけを満たしてほしいってことなのか?
考えれば考えるほど、頭が混乱してよく分からなくなってくる。
そんな風に、考えあぐねている俺に向けて、美菜の口からは、
「もっ、もう、煮るなり焼くなり好きにしてくださいっ!」
そんなやけくその様な言葉が矢継ぎ早に放たれた。
その声で、混乱気味だった俺の頭は、ようやく冷静さを取り戻すことができたのだった。
あの日、夏目と何があったかは知らないが、夏目のことを諦めるために俺を利用しようとしてるのだろうか?
――昔、美優がそうであったように。
まぁ、あの時は、美優が夏目のことを好きだということも、夏目の血の繋がりのない妹だということも知らずに、好きになって。
『忘れられない人がいるから付き合えない』という美優に、『俺が忘れさせてやる』そう言って俺から迫ったのだけれど。
――もしそうだとしたら、皮肉なもんだな……。
そんな昔のことまで引っ張り出して考え込んでしまっていた俺は、
「随分と自棄になったような言い方だな」
そんなことを漏らしてしまっていて。
けれど、美菜からは何も返ってはこなかった。
――やっぱり、そういうことなんだろうか?
だから、何も言えないんだろうか?
そんな風に、思いたくもないのに、嬉しい筈の美菜の言葉を素直に喜ぶことができない。
――けど、本当は美菜の言葉を信じたい。
譲の言っていた通りであってほしい。
そんな祈るような想いで、俺にしがみついたままでいる美菜をゆっくりと引き剥がして、正面から美菜のことを真っ直ぐに捉えて見詰めてみれば……。
さっきと同じようにトロンと潤んだ綺麗な瞳で真っ直ぐに見つめ返してくる美菜。
こんなことをしたからって、真意なんて分かる筈がない。
それでも、美菜の言葉を信じることに決めた俺は、次の瞬間には、美菜の身体をギュウッと掻き抱くようにしてきつく抱き寄せていて。
「……自棄でもなんでもいい。もう、言質はとったからな?
後になって、なかったことにしてくれと言われても絶対に聞かない。煮るなり焼くなり、好きにさせてもらう。
めいっぱい可愛がって、俺なしじゃ居られないようにしてやる。
もう一生、手放してなんかやらないから覚悟しろ」
もっと、他にも言いようがあったと思うのに……。
そんなことにまで気を遣っているような余裕なんて持ち合わせていなかった俺には、そんな我儘な子供みたいなことしか言うことなんてできなかった。
それでも俺は、暫くの間、ただただ美菜にされるがままで身動ぎできないでいた。
少しして、美菜に言われた一部始終のことがまるでコマ送りの映像でも見ているように、頭の中でリフレインし始めて、漸く理解できたのだが……。
それと同時に、頭に浮かんでくることと言えば、夏目のことで。
――美菜は夏目のことが好きじゃなかったのか?
でも、『俺に可愛がってもらいたい。キスして欲しいと思ってしまう』それが全部、俺のせいだと言ってきた美菜。
もしかして、譲が言ってたように、入院中ずっと傍で付き添っていた俺のことを少しは好きになってくれてるってことなのか?
それとも、身体だけを満たしてほしいってことなのか?
考えれば考えるほど、頭が混乱してよく分からなくなってくる。
そんな風に、考えあぐねている俺に向けて、美菜の口からは、
「もっ、もう、煮るなり焼くなり好きにしてくださいっ!」
そんなやけくその様な言葉が矢継ぎ早に放たれた。
その声で、混乱気味だった俺の頭は、ようやく冷静さを取り戻すことができたのだった。
あの日、夏目と何があったかは知らないが、夏目のことを諦めるために俺を利用しようとしてるのだろうか?
――昔、美優がそうであったように。
まぁ、あの時は、美優が夏目のことを好きだということも、夏目の血の繋がりのない妹だということも知らずに、好きになって。
『忘れられない人がいるから付き合えない』という美優に、『俺が忘れさせてやる』そう言って俺から迫ったのだけれど。
――もしそうだとしたら、皮肉なもんだな……。
そんな昔のことまで引っ張り出して考え込んでしまっていた俺は、
「随分と自棄になったような言い方だな」
そんなことを漏らしてしまっていて。
けれど、美菜からは何も返ってはこなかった。
――やっぱり、そういうことなんだろうか?
だから、何も言えないんだろうか?
そんな風に、思いたくもないのに、嬉しい筈の美菜の言葉を素直に喜ぶことができない。
――けど、本当は美菜の言葉を信じたい。
譲の言っていた通りであってほしい。
そんな祈るような想いで、俺にしがみついたままでいる美菜をゆっくりと引き剥がして、正面から美菜のことを真っ直ぐに捉えて見詰めてみれば……。
さっきと同じようにトロンと潤んだ綺麗な瞳で真っ直ぐに見つめ返してくる美菜。
こんなことをしたからって、真意なんて分かる筈がない。
それでも、美菜の言葉を信じることに決めた俺は、次の瞬間には、美菜の身体をギュウッと掻き抱くようにしてきつく抱き寄せていて。
「……自棄でもなんでもいい。もう、言質はとったからな?
後になって、なかったことにしてくれと言われても絶対に聞かない。煮るなり焼くなり、好きにさせてもらう。
めいっぱい可愛がって、俺なしじゃ居られないようにしてやる。
もう一生、手放してなんかやらないから覚悟しろ」
もっと、他にも言いようがあったと思うのに……。
そんなことにまで気を遣っているような余裕なんて持ち合わせていなかった俺には、そんな我儘な子供みたいなことしか言うことなんてできなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,142
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる