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縺れあう糸

#21

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とうとう達してしまった私が力の入らない身体をクタリと弛緩させたまま、瞳を閉じて、乱れた呼吸をなんとか整えようと、肩で浅い呼吸を繰り返していると……。

いつの間にか私のことを腕枕するようにして、程よく筋肉のついた逞しい胸に抱き寄せてくれていた要さんは、私の髪を優しく何度も撫でてくれていて。

私のおでこやこめかみ、瞼や頬にというように、至るところに優しく触れるだけの可愛いキスの雨を降らせてくれている。

ずっとこのままで居たいな、なんて思ってしまうくらい、要さんの唇が優しく触れる感触が、とっても心地いい。

でもこのままでも居られないから、ゆっくり瞼を上げて、霞がかった視界でボンヤリ見つめていると。徐々にクリアに鮮明になってゆく視界に、ただならぬイロカを放つ要さんの綺麗なお顔が映し出されて。
 
心配そうに私のことを窺ってた表情は、私の視線と交わった刹那、ホッと安堵したような表情へと変わったかと思えば……。
 
今度は、とびきりの微笑みを浮かべて、私のことを眩しそうに眇《すが》めた瞳で、愛おしそうに見つめてくれている。
 
途端に、いつまで経ってもこのシチュエーションに慣れることができない私の体温が一気に上昇し、鼓動もドキドキと忙しなく早鐘を打ち鳴らし始めた。

きっと、顔だって、真っ赤になっているに違いない。
 
さっきも容赦なかったし、おかしなスイッチ全開の要さんに何か言われるんじゃないかと、違う緊張感に襲われかけていた私に、
 
「美菜、少しは落ち着いたか?」
 
要さんからは、予想に反して、表情と同じように、甘い声音で優しい言葉がかけられて。

達したばかりで、頭がボンヤリとしている所為か、私には、まばゆい王子様仕様の要さんのまわりに、キラキラと輝く特殊なエフェクトでもかかっているように見えてしまう。

夢見心地でうっとりとしてしまってる私が、返事の代わりに、コクンと頷いて、王子様仕様の要さんのことを見つめていると、
 
「美菜があんまり可愛すぎて、少々ムチャをさせたからもう少し休ませてやりたいと思っていたのに。そんなに可愛い顔で見つめられたらヤバイだろう?悪いがもう余裕がない」

要さんからは、何故かそんな言葉が返ってきて。
 
さっきまでのとびきり優しかった王子様仕様の要さんの表情が、たちまち悩ましげな表情へと豹変してしまった。

――えっ!?急にどうしちゃったの?何がヤバイの?

夢見心地でうっとりとしていたからか、どういう状況なのかさっぱり理解できない私は、要さんによって、呆けている間にベッドへと組み敷かれてしまっていた。

体重がかからないようにして、私の身体に覆い被さるようにして、そっとのしかかってきた要さんによって、頬を手で包むように固定され、愛おしげに見つめられつつ、
 
「美菜、愛してる」
 
甘い声で囁かれてすぐに、深く甘く口づけられ、上蓋を熱い舌で巧みに擽られてしまえば、思考が徐々に溶かされてゆく。
 
「……っん……んんっ……はぁ……っ、んう……」
 
脚の間の泥濘んだ裂け目に、硬度と質量ともに充分すぎるほどにみなぎらせた熱い昂りをあてがわれて初めて、ようやく状況を蕩けた頭の片隅で理解した時には、昂りのすべてを受け入れてしまっていた。

私の腰のくびれを力強く掴んで、夥しい水音を立てながら、自身の腰を打ち付けている要さんの逞しくしなやかな腕に、すがりつくようにして手を絡ませて、要さんの起こす緩やかな波に揺られているうち、何も考えられなくなってゆく。

そうこうしているうちに、不意に身体が浮遊するような感覚に襲われたかと思う間もなく、身体を起こし胡座をかく体勢へと持ち込んだ要さんの膝の上に抱き上げられていて。
 
その上、要さんと繋がりあっているお陰で、要さんの熱く滾っている昂りに、より深い下腹部の最奥を突き上げるようにして貫かれるたびに。

「……あっ、これ、やっ、……あっ、らめぇ」
 
奥から何かがせりあがってくるような、えもいわれぬ甘過ぎる快感が、容赦なく身体を貫いていくから堪らない。
 
要さんの腕に支えられていないと、今にもバランスを崩して、ふにゃりと倒れ込んでしまいそうだ。
 
それを知ってか知らずか、余裕のない表情をした要さんに、背中をあやすように撫でられ、艶っぽく潤んだ瞳で見つめられただけで、頭の芯までもが甘く痺れてゆく。

「……はぁ、はぁ……っ、……みな」
 
とどめのように、掌で胸の膨らみを包み込んで、柔らかく揉みながら、荒い息づかいの合間に、要さんに愛おしげに名前を呼べれて、甘いキスまでされてしまえば……。
 
甘い快感と、溢れんばかりの幸福感に包まれ、身も心も蕩けて、今にも昇天してしまいそうだ。

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