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それぞれの思惑~後編~

#22

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ーーわー、言っちゃったよっ。ど、どどどどどうしよう。 

この期に及んで、副社長の反応が怖くて堪らなくなってきた私は、言い逃げるようにギュッと副社長の首元にしがみついた。

それどころか、あんなに昂ってしまっていた筈の感情までもが潮が引くみたく落ち着きを取り戻してきたため、自分の言ってしまった言葉が津波の如く押し寄せてくる。 

……は、恥ずかしすぎる。 

……今すぐ、消えてしまいたい。 

……言うにしたって、もっと違う言い方があったと思うのに。

それらに合わせて後悔までもが一緒になって押し寄せてくる。

そんな私は、副社長から何かが返されるよりも先に、

「もっ、もう、煮るなり焼くなり好きにしてくださいっ!」そう捲し立てていた。 

そんな可哀想な余裕のない私に副社長から返って来たものは、

「随分と自棄やけになったような言い方だな」そんな言葉で。 

その声は、なんだか困ったような、困惑したような声だった。

少なくとも私にはそう聞こえてしまい。 

……やっぱり、迷惑でしかないんだ。 

……やっぱり、言うんじゃなかった。 

そう思っても、今さら、なかったことにできる筈もなく。 

何も言えないまま、ただ黙ってしがみついていることしかできない訳で。 

けれど、そんな私の願いも虚しく、呆気なく副社長から引き剥がされてしまって。

変わらず副社長の膝に乗せられたままの状態で、真正面から綺麗なお顔とご対面する形で向き合わされてしまったのだった。 

そうして、まるでトドメでも刺すようにして、麗しの副社長に探るような眼差しでジーッと真っ直ぐに見詰められてしまって。

途端に息の仕方も分からなくなってしまったように、息も苦しくなってくる。 

このまま窒息でもしちゃうのかな……なんておバカなことが頭を過りかけた頃、副社長にギュウッと強く抱き寄せられてしまって。

「……自棄やけでもなんでもいい。もう、言質《げんち》はとったからな? 後になって、なかったことにしてくれと言われても絶対に聞かない。 

煮るなり焼くなり、好きにさせてもらう。めいっぱい可愛がって、俺なしじゃ居られないようにしてやる。 

もう一生、手放してなんかやらないから覚悟しろ」 
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