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それぞれの思惑~後編~

#17

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ちょうどその時だった、副社長がジャケットのポケットに入れていたのであろうスマートフォンの振動する音が微かに響いてきて。

それに気付いた副社長がポケットから素早くそれを取り出し、その画面を確認すると、

「悪い。夏目からだ。ちょっと席外す」

そう言って、病室から廊下へと出て行ってしまった。

なんだか、一人で取り残されてしまったような、そんな気がしてしまい、急に寂しくなってしまった。

きっと、入院してた間、副社長がずっと一緒に居てくれてたせいなんだろうと思う。

これ以上、副社長のことを好きになっても辛くなるだけだというのに、芽生えてしまったこの想いは少しずつ募ってゆくばかりだ。

そんな私の想いは、傍に居た譲さんにも伝わってしまっていたようで。

「美菜ちゃんは要のことが大好きみたいだね?」

どうやら、単純な私の考えていることは、誰にでも簡単に分かってしまうらしかった。

「////」

でも、そんなにハッキリと言われてしまうとは思ってもいなかったので、真っ赤になってしまった顔を見られたくなくて俯くしかなかった。

「あー、もー、お兄さん、キューンってなっちゃったよー。初々しいなぁ……。要が必死になる理由が分かるなー。

あーあー、うらやまし~な~。ウチの奥さんなんて、いっつもツーンとしてるもんなぁ?まぁ、デレた時はメチャメチャ可愛いんだけどさぁ」

そんな私を置き去りにして、なにやら一人ブツブツ言いながら、何故か身体をクネクネさせて身悶えている様子の譲さん。

そうかと思えば、

「けど、ちょーっと、お兄さん気になっちゃったことがあるんだよなぁ?」

相変わらず茶化したように言ってきたかと思えば……。

急に、真剣な表情に変わった譲さんに正面から見据えられて、心臓の鼓動が嫌な音をたてながら、ありえないくらいのスピードで勢いよく暴れ始めた。

ーーどうしよう。 

もしかして、副社長との契約のことがバレちゃったのかな? 

でも、そんなことないと思うんだけど。

あーでも、譲さんってなんかそういうことに鼻が利きそうだし、もしかしたら。

ーーあー、もー、どうしたらいいのー? 

色んな事が頭の中でグルグルと駆け巡るけれど、どうしたらいいか皆目見当がつかない。

「だから、一つだけ、聞いてもいいかな?」

そんな感じで、内心焦りまくっている私に、尚も追い打ちを掛けようとするかのように、譲さんの追及は続くのだった。

けれど、もうこうなったからには、覚悟を決めて立ち向かうしかない訳で。

覚悟を決めて、『いざっ』と意気込む私に、譲さんから放たれたものは、 

「要のアレのことは、知ってるのかな?」 

想像していたモノとはちょっと違ってたけれど。 

「……えっ……はい」 

拍子抜けしつつも『アレ』と聞いて思い浮かぶことと言えば、副社長のアレのことしかない訳で。

それでもまだ、油断はできない……そう思って尚も身構えていると。 

「うん。そのことなんだけど……」 
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