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それぞれの思惑~後編~
#18
しおりを挟む一体、どんな言葉が飛び出してくるのだろうかと内心ひやひやしつつ、でもそのことを悟られない様に神経を尖らせ、正面の譲さんの動向を観察でもするかのように見詰めていると……。
真剣な表情を崩すことなく憂いまでちらつかせて、不意に私から視線を逸らせたかと思うと、私が腰を下ろしているベッドの方に視線を落としたまま、独り言でも呟くように声を零し始めた。
「要に限らず、男って、意外と繊細な生き物でさぁ。欲情していざってなっても、ちょっとしたことで萎えちゃったりしてもできないことあるし。
相手を大事にしたいって想いが強すぎても、ウマくいかない時もある。その逆で、相手にグイグイ来られても興醒めしちゃったりとかさぁ……。
男は好きじゃない相手とでもデキるみたいに思われがちだけど、そんな男ばかりじゃないから。 美菜ちゃんも知ってるだろうけど、要もそんなヤツじゃない。
アイツ見かけは偉そうだし、傍若無人に振る舞ったりするけど、メチャクチャ繊細だし、弱くて脆いとこあるしさぁ……。
でもそういうの人に見せちゃいけないとか、男らしくないとか思ってるから、あーなっちゃうんだよ、きっと。
亡くなった父親の良いとこばかり聞かされて育ったってのもあると思うんだ。
誰でも、格好悪いとこの一つや二つ、あるのにさぁ……。
あっ……前置き長くてごめん。結局、何が言いたいかと言うと……。
早く絆を深めたいのにデキないからって、焦らないでゆっくり付き合ってやってほしいんだ。
デキないのと想いの深さは別モノだから、それを分かってやっててやってほしいんだ。
まぁ、美菜ちゃんは、そーいう心配はなさそうだけど……。
一応、医師として、つっても専門じゃないんだけどさぁ……要と同じ男として、兄的立場としてのアドバイスってことで……。
我儘な子供がそのまま大人になっちゃったような、そんなとこがちょっとある要だけど、よろしくね?
美菜ちゃん……って、えっ!? なんで泣いちゃってんの? 俺、そんなに感動されちゃうようないいこと言っちゃった?
えっ、でも、ちょ……やめて、泣かないでぇ……。美菜ちゃん泣かしたことバレちゃったら、俺の大事なアレがホルマリン漬けにされちゃうから~!!」
副社長との契約のことなんて知る筈のない譲さんに、副社長の婚約者のように扱われてしまった挙句。
副社長のことを託されてしまった私は、余りにも違いすぎる現実との落差に追いつくことなんてできずに、気づけば涙を流していて。
それを拭おうとすればするほど、余計に溢れて止まらなくなるのだった。
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