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それぞれの思惑~前編~

#1

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週明けの月曜になって、いつものように副社長と一緒に、夏目さんの運転する車で出勤中なんだけれど、週末のように、また副社長を怒らせやしないかと……ヒヤヒヤしてしまう。

心地良く微かに揺れ続けている車の振動を感じながらも、隣で長い脚を組んでシートに背を預けて寛いでいる、今日も朝から麗しい副社長へと、視線を巡らせてみるものの、今のところ、特に変わった様子は見受けられない。

……の、だけれど、副社長の様子を何度もチラチラと盗み見していたせいで、思い出さなくてもいいものまで思い出してしまった可哀想な私。

たちまち、羞恥に襲われて、全身がカァーッと一気に熱を帯び始めたのが自分でも分かって、そのことで、頭がいっぱいいっぱいになってしまう。

あの週末の夜、朝と違って、どういうわけだか、途轍もなくご機嫌だった副社長。

バスルームに到着するなり、手慣れた手つきで服を脱がせてから、それはもう、時間をかけてたっぷりと、触れてないところなんてなかったんじゃっないかってくらいに、隈《くま》なく可愛がってくださった副社長。

副社長の厭らしく蠢く手や指や、熱くざらついた舌と唇の感触、響きわたる荒い吐息や甘ったるい声、卑猥な水音……などなど。

ーーひゃぁーーーー!! やめてぇ、出てこないでぇーー!!

心の中で叫んでみるも、次々に浮かんできてしまうから、めくるめくあのバスルームでの光景に、頭がクラクラとしてきて酔ってしまいそうだ。

なんとかしてその光景を振り払おうと一人必死になって悪戦苦闘していると、

「美菜? どうした? 気分でも悪いのか?」

そんな私の事情なんて知る由もない副社長が、なんだかとっても心配そうに、声を掛けてきて。

手も自然にさりげなく、こちらへ伸ばしてきたかと思えば、隣の私の身体を自分の胸の方へと引き寄せてくれちゃったもんだから。

突然のことに、心臓だって驚いちゃって、ドックン、ドックン鳴っちゃってるし、これでもかってくらいにボンって全身真っ赤っかになっちゃった私は、もはや発火寸前だ。

なんとかして、この状況から一秒でも早く逃げ出さないと、燃え尽きて灰になってしまいそうで……。

そう思った私は、副社長と夏目さんになんとか声を振り絞った。

「だ、だだだだ大丈夫です、はいっ。
ちょっと、車に酔いそうなだけですから」

「それならいいが」

「夏目さんっ! もうこの辺で降ろしてもらってもいいですか?」

「あぁ、オーケー。いいよな? 要?」

「あぁ、降ろしてやれ。

……まぁ、それも今日だけだ」

副社長が最後の方で、ボソボソと零した声が、私には良く聞こえなくて、気にはなりながらも……。

会社まで歩く時間のこともあるし、会社の人に見られても困ると思い、素早く車から降りて会社へと向かったのだった。

そもそも、一刻も早くこの場から逃れたかった私に、そんなことをイチイチ気にするような余裕なんてものはなかったのだ。
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