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それぞれの思惑~前編~
#2
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「おはようございます」
「あぁ、綾瀬。おはよう」
いつものように、通用口で居合わせた先輩社員の方々と挨拶を交わしながら歩いて、これまた絶妙なタイミングで開いた扉を潜り抜けて、エレベーターに乗り込んで。
階数表示のボタンの『6』を押して、『今日も一日頑張るぞ』と気合も十分に、気持ちの切り替えをしながら、電光の灯る表示が目的の階に変わるのを待っていると、ほどなくして目的の階へと到着した。
私の研修先である商品開発部はオフィスの六階にある。
広いフロアには仕切りがなく、チョコレートを始めとする食品に関する部門や、宝飾関係、服飾関係などなど、それぞれ扱う商品によってデスクが部門ごとに分かれて配置されている。
最近になって、漸く見慣れてきたドアを開けると、いつものように広いフロアが視界に広がっているのだけれど、何やらざわついてて。
三十名程いる商品開発部の社員たちのうち、私の所属している食品部門の先輩社員の十名が、今の今まで、和田部長を取り囲むようにしてなにやら話していたのに、何故だか私の姿を見るなり、皆それぞれ散り散りに自分のデスクへと戻っていく。
何やら可笑しな雰囲気に、いたたまれない気持ちになりながらも、気のせいかも知れないと思い、普段通りを装ってみたのだが……。
「おはようございます」
「あぁ、綾瀬、おはよう。早速だけど、ちょっと話がある」
「……はい」
どうやら、私の予感は的中したようで、和田部長に連れられて、会議室に行くことになってしまって。
「急なことなんだけど……。
綾瀬には、今日から秘書室の夏目さんの元で、研修をしてもらうことになったから。
こっちの仕事はいいから、午前中に私物とか整理できたら、秘書室の方にそのまま行ってもらっていいから」
「……」
突然、なんの前触れもなく、聞かされたこの言葉によって、私は言葉を失ってしまったのだった。
寝耳に水だったとはいえ、もう決まってしまったというのだから仕方がない。
新入社員である私には、当然、嫌だとか言って駄々をこねるようなことも、異議申し立てなんてこともできる筈もなく……。
早々に諦めることにした私は、それでもシュンとしながら私物の整理を済ませて、鉛のように重い重い脚取りで、十階の秘書室まで向かったのだった。
「あぁ、綾瀬。おはよう」
いつものように、通用口で居合わせた先輩社員の方々と挨拶を交わしながら歩いて、これまた絶妙なタイミングで開いた扉を潜り抜けて、エレベーターに乗り込んで。
階数表示のボタンの『6』を押して、『今日も一日頑張るぞ』と気合も十分に、気持ちの切り替えをしながら、電光の灯る表示が目的の階に変わるのを待っていると、ほどなくして目的の階へと到着した。
私の研修先である商品開発部はオフィスの六階にある。
広いフロアには仕切りがなく、チョコレートを始めとする食品に関する部門や、宝飾関係、服飾関係などなど、それぞれ扱う商品によってデスクが部門ごとに分かれて配置されている。
最近になって、漸く見慣れてきたドアを開けると、いつものように広いフロアが視界に広がっているのだけれど、何やらざわついてて。
三十名程いる商品開発部の社員たちのうち、私の所属している食品部門の先輩社員の十名が、今の今まで、和田部長を取り囲むようにしてなにやら話していたのに、何故だか私の姿を見るなり、皆それぞれ散り散りに自分のデスクへと戻っていく。
何やら可笑しな雰囲気に、いたたまれない気持ちになりながらも、気のせいかも知れないと思い、普段通りを装ってみたのだが……。
「おはようございます」
「あぁ、綾瀬、おはよう。早速だけど、ちょっと話がある」
「……はい」
どうやら、私の予感は的中したようで、和田部長に連れられて、会議室に行くことになってしまって。
「急なことなんだけど……。
綾瀬には、今日から秘書室の夏目さんの元で、研修をしてもらうことになったから。
こっちの仕事はいいから、午前中に私物とか整理できたら、秘書室の方にそのまま行ってもらっていいから」
「……」
突然、なんの前触れもなく、聞かされたこの言葉によって、私は言葉を失ってしまったのだった。
寝耳に水だったとはいえ、もう決まってしまったというのだから仕方がない。
新入社員である私には、当然、嫌だとか言って駄々をこねるようなことも、異議申し立てなんてこともできる筈もなく……。
早々に諦めることにした私は、それでもシュンとしながら私物の整理を済ませて、鉛のように重い重い脚取りで、十階の秘書室まで向かったのだった。
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