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捕らわれた檻のなかで

#5

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ほどなくして、妙さんが退室すると……。

また、シンと静まり返った重苦しい空間に逆戻りしたことに加えて、

『もう少々かと』というさっきの妙さんの言葉のお陰で、緊張感まで舞い戻ってきてしまって。

ーーとうとう、会長との初めてのご対面。

そう思っただけで、口から、心臓やその他にも色んなモノまで出てきてしまいそうだ。

慣れない着物を着ているせいで、巻き付けられている帯が窮屈で、余計に息苦しい感じがする。

身体の姿勢を少し変えようと思っても、正座をした脚が痛くて上手くいかないし。

華やかな着物の生地に包まれている太腿を、キッチリと揃えたその上で、重ね合わせた手まで震えてきてしまう。

少しでも、落ち着けようと、深い深呼吸を何度か繰り返していると。隣の副社長が僅かに動くような気配がして……。

ゆっくりと副社長の方へと顔を向けようとした、ちょうどその瞬間《とき》だった。

……副社長によって、後ろからそっと腕の中に閉じ込められてしまったのは。

私のことを包み込んだ副社長の腕は、ちょうど、私の鎖骨の辺りで、クロスするようにしっかりと組まれてしまっている。

……どうやら、逃がさないということらしい。

突然のことで、何が起こったのかが、すぐに理解できずにいると、

「着物も、いいもんだなぁ」

なんて、わざとらしく、耳元に熱い吐息と唇を掠めながら、そんなことを声をひそめて低く囁いてくる副社長。

そのあまりの至近距離と、肌に触れる熱い吐息と、囁かれた甘い響きに、たちまち、ゾクリと、身体が勝手に粟立《あわだ》ってゆく。

「今夜、この帯を解《ほど》くのが楽しみだ」

今度は、私に副社長から、まるで、トドメを刺すようにして低く囁かれた言葉の意味に、あらぬ妄想までが脳裏を掠めてゆく。

ボンッ……という火を噴くような、効果音がしたんじゃないかって思うほど、全身が火照《ほて》って熱くなってくる。

きっと、脚の先から頭の天辺《てっぺん》まで真っ赤ッかに、なっていることだろう……。
羞恥に襲われてしまった私が堪りかねて、

「ちょ、やっ……やめてくださいっ! こんなところで……」

そう言って、赤くなってしまった顔を少しでも隠すために俯かせれば……。

「へぇ……。ここじゃなければいいのか?」

またまた、そんな意地悪なことを言い放つ副社長。

今度は、着物の胸元の襟合わせの隙間から、スーッ……と手を器用に滑り込ませてきたかと思えば、どういうわけか今度は、差し込んだ自身の手をすぐに引っ込めてしまった副社長。

急に、どうかしたんだろうかと、不思議に思って、副社長の方へと顔を上げようとした、次の瞬間には……。
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