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スピンオフ「クリス✕リィト編」
スピンオフ「クリス✕リィト編」第10話
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部屋に入りランプに火を灯す。オイルが植物性なのであまり光量は強くないが、食事をするぶんには問題にはならない。
クリスはもらった料理の木皿を広げてくれた。その間にリィトはワインを準備する。
「驚いたね」
リィトが口を開くと、クリスも頷いた。
「なんというか……、二人共情熱的なんだね。……省吾様、好きな相手にはあんな顔をするんだ」
クリスが目を伏せる。目尻が赤くなっていて、先程まで浮かれていたリィトの心はあっという間に嫉妬で塗りつぶされた。
「……悔しい?」
つい尋ねてしまう。クリスはいつもの苦笑を浮かべて首を横に振った。
「まさか。お似合いの二人だと思うよ」
「……クリスは他にいいなって思っている人はいないのかい?」
「他にって……」
いつだってクリスは省吾のことを好きなのだろうと聞いても否定をするし、最近は嫌がっている節さえある。だから聞かないようにしていたのに、今日は口を閉じられなかった。
「クリスは魅力的なんだから、クリスさえその気になればいつだって相手は振り向いてくれると思うよ」
「ありがとう」
はは、とクリスは笑う。
「そんな事を言ってくれるのはリィトくらいだよ」
「世界中の皆はまだ君の魅力に気がついていないだけなんだ」
「そういうリィトはどうなんだい?」
二人共席に座る。リィトはワインの蓋を開け、クリスのグラスに注いだ。
「今日一緒にいた人とか……、楽しそうだったじゃないか」
一緒にいた人、としてユーリーンのことを思い浮かべてしまい、リィトは顰め面をする。
「ユーリーンは女性が好きだし、そもそも俺の好みじゃない」
「そうなのかい?」
クリスは意外そうに目を丸くした。
「随分距離が近いから、てっきりそうなんだと思ってた。手も握っていたし……。ほら、リィトは人に近寄られるといい顔はしないだろう? でも、あの人には許していた」
「あいつは誰彼構わずにくっつくんだよ」
「そっか……」
納得したのか、クリスは目を伏せて持ってきた料理に手を伸ばす。ドラゴンの尻尾肉の串焼きは癖が強く、ワインによくあう味だった。
「……クリスは、俺に恋人が出来たらどうするんだい? もうこうやって食べに来てくれないのかい?」
嫌な予感がしながらも尋ねる。クリスは視線を彷徨わせた。
「リィトに恋人かぁ……。うーん、想像もつかないなぁ」
どうせ人見知りだよ、とリィトは心のなかで毒づく。クリスはワインで唇を湿らせると、リィトの大好きな笑顔を見せてくれた。
「きっと祝福すると思うよ。本当に好きな人と恋人になれたのだったら」
「………………」
リィトは唇を尖らせると、じとりとした目をクリスに向けた。
「寂しいとか、そうは思わないのかい?」
「まさか!」
心底意外なように返され、胃にさらなるダメージが与えられる。
「リィトが幸せになってくれたら、俺も嬉しいよ」
鼻の付け根がつんとする。本当に、自分はクリスにとって意識もされていないのだと思った。
「……そっか」
目を伏せた。クリスはいきなりリィトが不機嫌になった理由がわからないようで、まるで子供の機嫌を取る母親のように食事や酒を勧めてくれたのだった。
クリスはもらった料理の木皿を広げてくれた。その間にリィトはワインを準備する。
「驚いたね」
リィトが口を開くと、クリスも頷いた。
「なんというか……、二人共情熱的なんだね。……省吾様、好きな相手にはあんな顔をするんだ」
クリスが目を伏せる。目尻が赤くなっていて、先程まで浮かれていたリィトの心はあっという間に嫉妬で塗りつぶされた。
「……悔しい?」
つい尋ねてしまう。クリスはいつもの苦笑を浮かべて首を横に振った。
「まさか。お似合いの二人だと思うよ」
「……クリスは他にいいなって思っている人はいないのかい?」
「他にって……」
いつだってクリスは省吾のことを好きなのだろうと聞いても否定をするし、最近は嫌がっている節さえある。だから聞かないようにしていたのに、今日は口を閉じられなかった。
「クリスは魅力的なんだから、クリスさえその気になればいつだって相手は振り向いてくれると思うよ」
「ありがとう」
はは、とクリスは笑う。
「そんな事を言ってくれるのはリィトくらいだよ」
「世界中の皆はまだ君の魅力に気がついていないだけなんだ」
「そういうリィトはどうなんだい?」
二人共席に座る。リィトはワインの蓋を開け、クリスのグラスに注いだ。
「今日一緒にいた人とか……、楽しそうだったじゃないか」
一緒にいた人、としてユーリーンのことを思い浮かべてしまい、リィトは顰め面をする。
「ユーリーンは女性が好きだし、そもそも俺の好みじゃない」
「そうなのかい?」
クリスは意外そうに目を丸くした。
「随分距離が近いから、てっきりそうなんだと思ってた。手も握っていたし……。ほら、リィトは人に近寄られるといい顔はしないだろう? でも、あの人には許していた」
「あいつは誰彼構わずにくっつくんだよ」
「そっか……」
納得したのか、クリスは目を伏せて持ってきた料理に手を伸ばす。ドラゴンの尻尾肉の串焼きは癖が強く、ワインによくあう味だった。
「……クリスは、俺に恋人が出来たらどうするんだい? もうこうやって食べに来てくれないのかい?」
嫌な予感がしながらも尋ねる。クリスは視線を彷徨わせた。
「リィトに恋人かぁ……。うーん、想像もつかないなぁ」
どうせ人見知りだよ、とリィトは心のなかで毒づく。クリスはワインで唇を湿らせると、リィトの大好きな笑顔を見せてくれた。
「きっと祝福すると思うよ。本当に好きな人と恋人になれたのだったら」
「………………」
リィトは唇を尖らせると、じとりとした目をクリスに向けた。
「寂しいとか、そうは思わないのかい?」
「まさか!」
心底意外なように返され、胃にさらなるダメージが与えられる。
「リィトが幸せになってくれたら、俺も嬉しいよ」
鼻の付け根がつんとする。本当に、自分はクリスにとって意識もされていないのだと思った。
「……そっか」
目を伏せた。クリスはいきなりリィトが不機嫌になった理由がわからないようで、まるで子供の機嫌を取る母親のように食事や酒を勧めてくれたのだった。
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