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「……久しぶりじゃーん。あらあら、お嬢様のくせにずいぶん辛気臭い顔してんじゃん。」
ケラケラ。
彼女を小馬鹿にした笑みを浮かべ、そんな言葉を向ける。
「……どこを逃げ回ったか知らないけど、そっちも似たようなもんじゃない?」
秋姫も負けじと見下すような目。
三花だ。
彼女が秋姫の前に現れたのだ。
「……逃げ回ってたわけじゃない……。」
秋姫の言葉が効いたのだろう。
三花が震える声で反論する。
「ふーん、そう。」
無関心を装う。
しかし、根掘り葉掘り聞いてみたいという欲を抑えられられない。
どんな酷い目に合ったのかと、うずうずする秋姫であった。
「……なにその顔……。」
「別にー?」
「……それはそうと私、あんたのこと待ってたんだけど……。」
「……え?」
待ち伏せ。
当たり前といえば当たり前だろう。
偶然。
そんなわけない。
こんなところに彼女がいるわけがない。
まさか襲撃か?
確かに生意気な態度を取っていたかもしれない。
しかし、それはお互い様だ。
そんなことで怒るだろうか?
「このまま私達だけ苦しむの……おかしいと思わない?」
「……え?」
「……あいつ……鼬原だけは……道連れにしなきゃ気がすまない……。」
「ちょ、ちょっと……。」
恐怖心。
自身とさほど変わらない華奢な三花。
そんな彼女に対してそのような感情を抱く秋姫であった。
逃げ出したい。
それが、今の彼女を目の当たりにした秋姫の率直な感想であった。
しかし、それが叶うことはなかった。
足がすくんで動かない。
それに、少しではあるが、彼女の気持ちが分からないわけではない。
「……今のあんた、まだ迷ってるみたいだし、返事は後日で良いよ。」
「え?……え?」
「じゃあ、良い返事期待してるから。」
「ちょ、ちょっと……!?」
何と自分勝手者なのだろうか。
好き勝手にそう言うと、三花は秋姫の前から立ち去るのであった。
いや、彼女だけではない。
自分勝手なのは自身もだろう。
秋姫はため息をついた。
華子へ危害を加えることは明白だ。
そんなものに協力しろと彼女は言った。
答えなど決まっている。
そう。
決まっているのだ。
そのはずなのだ。
「……帰りたくないな。」
ボソリ。
呟く秋姫。
帰宅すれば嫌でも考えなければならない。
腐っても友人。
そんな彼女へ襲撃をかけるかどうか。
ケラケラ。
彼女を小馬鹿にした笑みを浮かべ、そんな言葉を向ける。
「……どこを逃げ回ったか知らないけど、そっちも似たようなもんじゃない?」
秋姫も負けじと見下すような目。
三花だ。
彼女が秋姫の前に現れたのだ。
「……逃げ回ってたわけじゃない……。」
秋姫の言葉が効いたのだろう。
三花が震える声で反論する。
「ふーん、そう。」
無関心を装う。
しかし、根掘り葉掘り聞いてみたいという欲を抑えられられない。
どんな酷い目に合ったのかと、うずうずする秋姫であった。
「……なにその顔……。」
「別にー?」
「……それはそうと私、あんたのこと待ってたんだけど……。」
「……え?」
待ち伏せ。
当たり前といえば当たり前だろう。
偶然。
そんなわけない。
こんなところに彼女がいるわけがない。
まさか襲撃か?
確かに生意気な態度を取っていたかもしれない。
しかし、それはお互い様だ。
そんなことで怒るだろうか?
「このまま私達だけ苦しむの……おかしいと思わない?」
「……え?」
「……あいつ……鼬原だけは……道連れにしなきゃ気がすまない……。」
「ちょ、ちょっと……。」
恐怖心。
自身とさほど変わらない華奢な三花。
そんな彼女に対してそのような感情を抱く秋姫であった。
逃げ出したい。
それが、今の彼女を目の当たりにした秋姫の率直な感想であった。
しかし、それが叶うことはなかった。
足がすくんで動かない。
それに、少しではあるが、彼女の気持ちが分からないわけではない。
「……今のあんた、まだ迷ってるみたいだし、返事は後日で良いよ。」
「え?……え?」
「じゃあ、良い返事期待してるから。」
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いや、彼女だけではない。
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華子へ危害を加えることは明白だ。
そんなものに協力しろと彼女は言った。
答えなど決まっている。
そう。
決まっているのだ。
そのはずなのだ。
「……帰りたくないな。」
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そんな彼女へ襲撃をかけるかどうか。
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