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7日目 ショッピング
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7日目
日曜日の朝も、真っ青な空が広がり、焦げつく様な夏の日射しが降り注いでいた。
窓の外には相変わらず、巨大な入道雲が湧き上がっている。
せわしなくたくさんの人が行き交う地下街のインフォメーション前に、俺は立っていた。
ここは地下鉄の出口のすぐ近くだから、目につきやすい。
ありさと天神で待ち合わせする時は、いつもこの場所なのだ。
「お待たせ。稜哉さん」
地下鉄の改札を抜けてきたありさは、俺を見つけると嬉しそうに微笑んで、まっすぐこちらへ歩み寄り、目の前で立ち止まって、俺を見上げる。
今日のありさは、ゆるい薄紫のブラウスに、生成りがかったレースのショートパンツ。
パッと見にはミニスカートっぽいショーパンなので、なんだかドキドキしてしまう。
テニスウェアの方がもっと露出が多いのに、街なかで見る生脚って、どうしてこんなに色っぽいんだろう。
ほっそりと長くて綺麗なありさの脚は、どんなに眺めていても飽きない。
もちろん脚だけじゃなく、ありさの事はずっとずっと、いつまでも見つめていたい。
地下街のイリュミネーションが瞳に映り込んで、キラキラと輝くありさの瞳を見つめながら、俺は訊いた。
「買い物って、どこに行くんだい?」
「そうね… まずはコアとパルコ見て、INCUBEにも寄りたいかなぁ… そのあとで、博多駅ビルの方にも行きましょ?」
「俺、そこのレストラン街で、美味しいイタリアンの店見つけたんだ」
「ええっ?! 食べたい食べたい! お昼はそこに行きましょ♪」
嬉しそうに手をポンと合わせて、ありさは満面の微笑みを浮かべる。
そんな彼女を見ていると、幸福感で満たされてくる。
俺はありさを愛している。
ありさも俺を愛している。
どんな事があっても、俺達はずっといっしょにいたい。
永遠に…
天神付近のありさのお気に入りショップを見て回った後、地下鉄で博多駅まで行って、今度は阪急デパートとアミュプラザを巡る。
ありさの買い物は、『なにを買う』という目的はたいしてなく、ただいろんなショップを見て回って、気に入ったものがあれば試着したり、それでも買わずに他のショップに戻ってみたりと、気まぐれだ。
それに付き合わされるのはちょっとしんどい所もあるが、女性の買い物なんて、だいたいそんなもの。
むしろ、ルックスがよくてスタイル抜群のありさが、いろんなテイストの服を試着するのを眺めているのは、結構好きかもしれない。
街なかでありさと手を繋いで歩いていると、通りすがりの男も女も、俺達を振り返る。
そんな時、軽い優越感に浸る事ができる。
ありさみたいに性格も外見もいい女性は、ひいき目に見ても、なかなかいるもんじゃない。
そんな彼女を恋人にできるなんて、最高だ。
「ほんと、美味しい! さすが稜哉さんの選んだお店ね」
俺のお薦めイタリアンレストランで、ご馳走の並んだテーブルを挟んだありさは、スマホで料理を撮った後、器用な手つきでフォークにパスタを絡めて、福々と満足げな顔で味わった。
休日のレストランは、たくさんのカップルや女性達で賑わっていて満席で、入り口に行列ができる程だった。
俺達は運よく、一番眺めのいい窓際の席に案内され、ビルの建ち並ぶ市街と、その遥か向こうに広がった青い海を見ながら、食事することができた。空には相変わらず大きな入道雲が、真っ青な空と眩しいコントラストを描いている。
その頂きは成層圏にまで届いたらしく、頂上が押しつぶされた様に平たくなって、まるで鍛冶場にある金属の作業台みたいな形になっている。いわゆる『金床雲』ってやつだ。
「凄い雲だな。あんなに大きな入道雲は、初めて見たよ。珍しいよな」
巨大なカナトコ雲を見ながら、俺はありさに同意を求めるかの様に、なにげなく言った。
「ねえねえ、稜哉さん。食事が終わったらハンズに寄って、キッチン用品を見てみない? わたし、キッチンをトータルコーディネイトするのって、ずっと夢だったのよ」
ありさはそう言って、カナトコ雲にはまるで興味がないかの様に、食事を続けながらぼくを見つめ、微笑んで喋っていた。
『あれ?』
なんだろう?
この違和感…
いろんなものに興味を持つ好奇心旺盛なありさなのに、あのカナトコ雲にまったく反応を示さないなんて。
いつもの彼女なら、この珍しい雲に、『わあ!』とか『すごい!』とか驚嘆の声を上げ、スマホで写真を撮るはずで、俺もそういうリアクションを予想していた。
まあ、今は買い物に夢中で、次に巡るコースの事で、頭がいっぱいなんだろう。
軽く考えた俺は、違和感もすぐに忘れて、ありさとの会話に没頭していった。
あとから思えば…
この時に気づくべきだったのかもしれない。
つづく
日曜日の朝も、真っ青な空が広がり、焦げつく様な夏の日射しが降り注いでいた。
窓の外には相変わらず、巨大な入道雲が湧き上がっている。
せわしなくたくさんの人が行き交う地下街のインフォメーション前に、俺は立っていた。
ここは地下鉄の出口のすぐ近くだから、目につきやすい。
ありさと天神で待ち合わせする時は、いつもこの場所なのだ。
「お待たせ。稜哉さん」
地下鉄の改札を抜けてきたありさは、俺を見つけると嬉しそうに微笑んで、まっすぐこちらへ歩み寄り、目の前で立ち止まって、俺を見上げる。
今日のありさは、ゆるい薄紫のブラウスに、生成りがかったレースのショートパンツ。
パッと見にはミニスカートっぽいショーパンなので、なんだかドキドキしてしまう。
テニスウェアの方がもっと露出が多いのに、街なかで見る生脚って、どうしてこんなに色っぽいんだろう。
ほっそりと長くて綺麗なありさの脚は、どんなに眺めていても飽きない。
もちろん脚だけじゃなく、ありさの事はずっとずっと、いつまでも見つめていたい。
地下街のイリュミネーションが瞳に映り込んで、キラキラと輝くありさの瞳を見つめながら、俺は訊いた。
「買い物って、どこに行くんだい?」
「そうね… まずはコアとパルコ見て、INCUBEにも寄りたいかなぁ… そのあとで、博多駅ビルの方にも行きましょ?」
「俺、そこのレストラン街で、美味しいイタリアンの店見つけたんだ」
「ええっ?! 食べたい食べたい! お昼はそこに行きましょ♪」
嬉しそうに手をポンと合わせて、ありさは満面の微笑みを浮かべる。
そんな彼女を見ていると、幸福感で満たされてくる。
俺はありさを愛している。
ありさも俺を愛している。
どんな事があっても、俺達はずっといっしょにいたい。
永遠に…
天神付近のありさのお気に入りショップを見て回った後、地下鉄で博多駅まで行って、今度は阪急デパートとアミュプラザを巡る。
ありさの買い物は、『なにを買う』という目的はたいしてなく、ただいろんなショップを見て回って、気に入ったものがあれば試着したり、それでも買わずに他のショップに戻ってみたりと、気まぐれだ。
それに付き合わされるのはちょっとしんどい所もあるが、女性の買い物なんて、だいたいそんなもの。
むしろ、ルックスがよくてスタイル抜群のありさが、いろんなテイストの服を試着するのを眺めているのは、結構好きかもしれない。
街なかでありさと手を繋いで歩いていると、通りすがりの男も女も、俺達を振り返る。
そんな時、軽い優越感に浸る事ができる。
ありさみたいに性格も外見もいい女性は、ひいき目に見ても、なかなかいるもんじゃない。
そんな彼女を恋人にできるなんて、最高だ。
「ほんと、美味しい! さすが稜哉さんの選んだお店ね」
俺のお薦めイタリアンレストランで、ご馳走の並んだテーブルを挟んだありさは、スマホで料理を撮った後、器用な手つきでフォークにパスタを絡めて、福々と満足げな顔で味わった。
休日のレストランは、たくさんのカップルや女性達で賑わっていて満席で、入り口に行列ができる程だった。
俺達は運よく、一番眺めのいい窓際の席に案内され、ビルの建ち並ぶ市街と、その遥か向こうに広がった青い海を見ながら、食事することができた。空には相変わらず大きな入道雲が、真っ青な空と眩しいコントラストを描いている。
その頂きは成層圏にまで届いたらしく、頂上が押しつぶされた様に平たくなって、まるで鍛冶場にある金属の作業台みたいな形になっている。いわゆる『金床雲』ってやつだ。
「凄い雲だな。あんなに大きな入道雲は、初めて見たよ。珍しいよな」
巨大なカナトコ雲を見ながら、俺はありさに同意を求めるかの様に、なにげなく言った。
「ねえねえ、稜哉さん。食事が終わったらハンズに寄って、キッチン用品を見てみない? わたし、キッチンをトータルコーディネイトするのって、ずっと夢だったのよ」
ありさはそう言って、カナトコ雲にはまるで興味がないかの様に、食事を続けながらぼくを見つめ、微笑んで喋っていた。
『あれ?』
なんだろう?
この違和感…
いろんなものに興味を持つ好奇心旺盛なありさなのに、あのカナトコ雲にまったく反応を示さないなんて。
いつもの彼女なら、この珍しい雲に、『わあ!』とか『すごい!』とか驚嘆の声を上げ、スマホで写真を撮るはずで、俺もそういうリアクションを予想していた。
まあ、今は買い物に夢中で、次に巡るコースの事で、頭がいっぱいなんだろう。
軽く考えた俺は、違和感もすぐに忘れて、ありさとの会話に没頭していった。
あとから思えば…
この時に気づくべきだったのかもしれない。
つづく
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