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第二章

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 表に出てライオウたちの様子を確認すると……
 ライオウたちと子供たちがじゃれ合っているようだった。

「ライオウ! 私たちを追いかけて」
「おう!」
「こっちこっち! 僕たちの方もだよ」
「おう!」

 見た感じは遊んでいるようにしか見えないけれど、でも運動量は多いようだし、これはこれでいいのかな。
 と思っていたら、ライオウに指示されて屈伸運動や素手での戦い方を習い始める子供たち。
 
「遊んで体動かしてやることはやって……楽しそうだし言うことないね」
「そうね。楽しい運動なら続けれそうだしね。本当、リナの仲間たちがいてくれて良かったわ」

 私の仲間三人が子供たちの面倒を見て、育ててくれている。
 これから先親の愛を受けることはできないが、あの子たちは皆の愛を受けて育っていく。
 うん。きっと大丈夫だ。
 あの笑顔を見ていたら分かる。
 歪に曲がることなく、真っ直ぐ育つはずだ。

 午後からの授業を終えると、最後にライオウと畑仕事を始める皆。
 ライオウがスコップで大地を掘り起こし、半分の子供たちがクワを使用し汗水たらしながら耕していく。
 残り半分の子供たちは手で土を細かくしていた。
 そして石灰、堆肥たいひ、肥料を投入し、土の状態を整えていく。
 全てが終わる頃には夕方となっており、皆くたくたになっていた。

 だが誰もが嫌な顔一つせず、まるで生きる楽しみを得たような表情を浮かべている。

「僕たちでもお金を稼げるんだね」
「うん。クマが言ってたね。これで野菜なんかを作って売って……それで生活をしていくって」

 何もできなかった自分たちが、生きる術を見つけた。
 子供たちは灌漑深く畑を眺め、そして皆で顔を合わせ頷く。

「明日からも頑張ろう。私たちならできるはずだよ!」
「おお!」
「なんだかすごく前向きだね、皆」

 あまりにもポジティブな子供たちを見て、少し疑問に感じる私。
 イドはあくびをして興味がなさそう。
 するとクマが私のもとに飛んで来て教えてくれる。

「皆の可能性を説いただけなんだけどね」
「可能性か……」
「うん。誰でもやればできる。皆の無限の可能性を良く分かってくれたようだよ」
「それだけでも全然違うよね。さすがクマだよ」
「まさか。僕は大したことないよ」

 クマが私の腕の中に着地し、子供たちを見ながら言う。

「僕たちはリナ様のサポートをしているだけだ。子供たちの面倒を見ると言ったサリア。そのサリアの手助けをするリナ様の心が優しいんだよ。僕たちはそれに従っただけさ」
「そんな……そんな大したことじゃないよ」
「んなことねえだろ。お前は十分すげーよ。俺だったら絶対見捨ててるもんな」

 イドは私から顔を逸らしながらそんなことを言った。

「優しさが欲しかったら優しくしろって。私はそう教えられただけだから」
「それも、お母さんの教えかい?」
「うん。お母さん、勉強が好きだったから。難しいことは分からないけど、そうやって分かりやすいことは優しく教えてくれたんだ」

 ささやかなことで優しさというのは広がっていくと思う。
 少し手を差し伸べてあげるだけで、それが誰かを救うことになって、その人の心が癒されて……
 そういうことの連続なんだと私は今感じてる。

 そしてこの子たちからまた優しさが伝播していけばいいなと、心から願うばかりだ。
 
 辛いことが多い世の中かもしれないけれど、皆に幸せに生きてほしい。
 せめてこの子たちや周囲にいる人たちぐらいはそうなるように私は頑張ろうと思う。
 それがきっと、自分の幸せにも繋がっていくはずだから。

 ◇◇◇◇◇◇◇


 クマたちが子供たちの所に行き、イドと二人きりの朝。
 特にすることもない私はタブレットを操作していた。

 ---------------------
 
 マイホーム レベル7
 
 機能 聖域 身体能力強化Ⅴ ショップⅤ
        クリエイトⅢ 従者Ⅱ ステータス確認 
   空間収納 空間移動Ⅱ 伴侶 
 ---------------------

「あ、マイホームのレベルが上がってる」
「ふーん」

 リビングのテーブルでイドと隣同士で座っていると、彼はタブレットを覗き込んできた。
 イドの整った顔が間隣にきて、私の心臓がドキッと跳ねる。

 結婚もして慣れたはずなのに、不意打ちにはいつも驚いてしまう。
 イドはカッコ良過ぎるからなぁ。

「で、何がどう変化したんだよ?」
「んとね……ショップのレベルとクリエイトのレベルが上がってるみたい」
「ショップか……何が買えるようになった? 美味しい物があるか調べてくれ」
「はいはい」

 イドは食に興味深々のようで、ジュルリと涎を飲み込みながら確認するように言う。
 こういう可愛い部分も好きだななんて考えながら『ショップ』アプリを立ち上げる。

「うーん……食べる物は増えてないみたい」
「んだよ。つまんねえな」
「あー、でも、この世界の武器とかまで買えるようになってるみたい」

 この世界の武器……剣や槍などありとあらゆる武器が数えきれないほど並べられている。
 性能はよく分からないけど、『炎の剣」や『風の弓』など、どう見ても普通の性能じゃない物まで確認できた。

 この武器を使えばもっと簡単にモンスターを倒せるかも……
 私は胸を高鳴らせ、気になる武器を購入していた。
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