だったら私が貰います! 婚約破棄からはじまる溺愛婚(希望)

春瀬湖子

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婚約破棄されたはずの俺が気付けば結婚していた話

1.婚約破棄とプロポーズはセット物?(困惑)

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「婚約破棄されたのなら、私が貴方を貰います!」
「え⋯、え?」
「私と結婚してください!!」
「え、えぇえっ!?」


両親の決めた婚約者から夜会で盛大に婚約破棄された俺に、何故か公爵令嬢が跪いてプロポーズ⋯?

その時の俺は青天の霹靂とはまさにこの事か、と無意識にごくりと唾を呑んだ。



ローズブロンドが美しくアーモンドのようなツリ瞳が猫のようで愛らしい。
家柄も子爵家の俺とは天と地ほど違う公爵家のお姫様。

1度だけ言葉を交わした事はあるものの、俺から話しかけるなんておこがましいとしか思えないような、そんな高貴な彼女に拐われるように連れ込まれたベッドルームでー⋯


“な、なんで押し倒されてるんだ!!?”

気付けば俺は彼女に組み敷かれていた。
ドッドッと心臓が痛いくらいに大暴れしている俺に、ふよんと彼女のおっぱいが押し付けられる。

「ッ!?」

“や、柔らかっ!?えっ、女の子の胸ってこんな感じなんだ!?夢と希望が詰まってるって本当だったんだ⋯”

一瞬頭が空っぽになった俺を精神的にも物理的にも襲ったのは、ズルッとズボンが下着ごと脱がされると言う衝撃。


――一応弁解をしておくと、夜会で婚約破棄された数時間後に高嶺の花であるお嬢様と結婚しただなんていう意味のわからない状況で、初夜だから臨戦態勢になれっていう方が無茶な訳で。

これに関して俺は悪くないと思う。


というかそもそも、突然だったはずなのに全ての書類が揃っていて、神官が馬車の前に何故か待っていて、そして新婚夫婦の部屋のセッティングまで完了しているとか⋯

まさかこれが公爵家、つまりはお金の力ってやつなのか⋯?


⋯なんて、俺の理解を越えたナニかが起こりつつも、結婚したのはどうやら夢ではないようで。


22年間を共にした『ネイト』という知らない人間の方が多かった姓が、一晩で全貴族が知っている『ビスター』になった小心者の俺は、せめて少しでも役に立てるよう必死で勉強をはじめた。


実家は商家も担っておりお金の流れは小さい頃から見ていたし、親同士が仲良かった元婚約者のパシ⋯お使いで各地によく赴いていたお陰でそれなりにパイプもあった。

規模こそ小さいが、その代わり質は本当に良く、それを『希少価値』として売る事も繋げる事も出来る。
それに。

「ねね、バルくん、この本バルくんが探してたやつだよね?」
「エリウス様、うわ、ありがとうございます!」
「仕事はゆっくり覚えてくれればいいからね。シエラの相手も大変でしょ?」

“⋯や、優しい⋯!”


何故か公爵家でやたらと良くして貰っていて。

“本を届ける事はあっても渡される事ってあっただろうか⋯”

じわりと目頭が熱くなりつつまじまじと本を眺めてしまう。


親切なのは小公爵様だけでなく、義父にあたる公爵様も同様で。


「バルフくん、シエラが何かその、やらかしはしていないかな」
「いえ、特には」
「その、あの子は友達がいな⋯ごほん、人付き合いがある意味得意ではなくてね⋯困ったことがあればいつでも言いなさい」

ありがとうございます、と深く頭を下げると俺の肩をポンッと叩いてくれる。

“や、優しい⋯っ!困ったことを押し付けられるんじゃなくて、困ったことがあれば言えだなんて⋯”

じわりと視界が滲むのを止められない。
高位貴族という存在を漠然と怖がっていた過去の自分を殴りたくなりつつ、この温かさが身に沁みた。


そしてこんなにも温かい公爵家の中で、最も俺の心を震わせるのがー⋯



「ば、バルフっ!今度私と出掛けませんこと?」

公爵家のお姫様であり、そしてなんと俺の妻であるシエラだった。


「うん、もちろんいいよ。どこか行きたいところはある?」

真っ赤な顔が可愛くて、自然と頬が弛みそうになるのを堪えつつそう聞くと、すぐにパッと彼女が破顔する。

「貴方とならどこへでも!で、でも出来たら服とか見たいですわ」
「俺もシエラとならどこでも構わないんだけど、えっと⋯その見たい服はシエラの服で合ってるかな?」
「いえ、その、バルフの⋯」

少し恥ずかしいのかスイッと視線を外すところもすごく可愛い。
すごく可愛いんだけどー⋯

「俺の体は1つだから、そんなに服はいらないかな⋯」

貢ぎ体質なのかすぐに買い与えようとしてくるので、正直にそう伝えた。
の、だが。

「かっ、か、かか、体っ!?そ、そうですわね、バルフの体はその、ひっ、1つですわね!?」
「うん?う、うん。そうだね⋯?」

全然変な意味で言ったつもりじゃなかったし、というかむしろどこをどうとっても変な意味ではないのだがー⋯

心配になるくらい真っ赤になってしまったシエラを見て小さく噴き出してしまう。

“初夜の時に押し倒してきたの、彼女の方なんだけどなぁ⋯”

そのあまりにも初心な姿が微笑ましくて、可愛くて。
でもだからこそ新婚の俺たちはまだ『そういう関係』にはなっていなかった。


“ゆっくり知っていこうって言ったの俺だしな。それに待つのも楽しいし⋯”

欲求がないかと聞かれればそんなことはない。
すぐに照れるくせに、いつもローズの香りを纏った彼女はその柔らかさを強調するみたいに距離が近く、あとやたらと可愛い。
ついでに何がとかは明言しないがとにかく弾力もすごい。ほんと。


“見てるだけで好かれてるって実感させられるって、それちょっとグッときすぎるんだよなぁ”

反則的なまでに可愛く見えるのは、全身で想いを伝えてくれるからなのかなんなのか。


隙あらばピトッと寄り添うように引っ付いてくる彼女の柔らかさを腕に感じ、ごくりと唾を呑みそうになるのを堪えなんとかある一点から視線を外す。

自分の方が彼女より年上だから、焦って怖がらせたりしないように初夜の続きは落ち着いてから⋯と触れたくなる気持ちを押し込み理性をフル稼働させて。

まさか自分がこんなに堪えなくちゃいけないほど求めてしまう相手が出来るだなんて、結婚する前の自分に伝えても絶対信じないだろうな⋯なんて考えそれも少し可笑しかった。


“エスコート⋯は、許されるよな?”
なんて少し不安に思うのは、彼女がじっと見つめるだけでじわじわと赤くなりながらそわそわしてしまうからで。

でも、どこでも目を引くその美しい髪に高貴なオーラ。
少しツンとして見える表情も、名前を呼んだ瞬間ゆるゆるになってしまうというオマケ付き。

“こんな可愛い生き物から目を離したら本当に一瞬で拐われちゃうよな”

――まぁ、夜会で彼女に拐われたのは俺なのだが、本当に道行く全員がシエラに目を奪われている気がして仕方ない。
もしかしたら彼女が可愛すぎて俺なんて透けて見えてる⋯というかむしろ見えてないかもしれないが、それでも側にいて絶対に守らなきゃ、と心に誓う。


これは不安に感じてる場合じゃないな、と彼女に腕を差し出すと、あの馬鹿殿下のせいでエスコート慣れしていないのか一瞬きょとんとして俺の顔と腕に視線を動かしていたシエラがー⋯

「バルフ大好きですわっ」

小さく跳ねるように腕に飛び付いてきて、まるで心臓が鷲掴みされたような衝撃を覚えた。

“か、かわ⋯っ!かわ⋯っ!?”

こんな地味な俺のエスコートをこんなに喜んでくれる人がこの世にいるだなんて。
しかもそれが自分の奥さんだなんて。


“⋯何かお返し出来ないだろうか?”
そう俺は必死に考え――



「⋯その、いつも貰ってばかりだからこれ⋯」

誰かに頼まれた訳ではなく、自分の意思で選んだプレゼントを渡すのが初めてだった俺は少し照れ臭い気持ちになりながらそっとシエラに指輪を渡した。
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