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アホ日直(担当:平沼敬)

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 あれから、数日が経過した。僕と結菜さんの関係は、変わらないままだ。きっと結菜さんは、僕に興味がない。興味があるなら話しかけてきているはずだ。
 ……まあ、その理論でいうと僕は結菜さんに興味があるのに声を掛けられていないのだが。なんで話しかけられないんだろうなぁ。脳内では結菜さんとの楽しい会話を想像して、実行に移そうとしているのに……なんかキモいな。
 なにか、きっかけでもあればいいのだが……

 それから少しして、朝学活の時間となった。日直が、日付を間違えた……何やってんの?
 そして、アホ日直から欠席者の連絡がなされる。
 ……藤田綾音が、欠席とのことだ。なるほど。確かに藤田綾音の席に人はいない。脚が床のタイルのマス目にピッタリ合っているから、きっと今日は誰も触っていないのだろう……あれ、欠席の枠に藤田綾音とは書かれてないぞ?おのれあのアホ日直……
 かくして、欠席の連絡は終わった。結局、欠席は綾音だけ……あれ? 瑛もいないぞ? あのアホ日直またやりやがったな……
 アホ日直は、今日の朝学活で計七回のミスをした。もはや生徒どころか、担任すら呆れてしまっていた。ちなみに、僕は呆れを通り越して怒りすらあった。なんなんだこいつは真面目にやってんのか、と。忘れられた瑛が不憫で不憫で仕方がない。あと綾音。しかも声だけ一丁前に大きい。大きすぎる。うるさい。小さいよりはマシかもしれないがそれでも迷惑だ。

 少しして、理科の先生が教室に入ってきた。すると、アホ日直がすぐさま立ち上がり、先生のもとに向かった。
 「ノートありません」
 ……アホにもほどがあるだろ。なんだノートありませんって。持ってこいよ。というより忘れましただろ。ありませんとか言うの普通は小三とかまでなんだわ。
 それに先生は、こう返した。
 「今日ノート使わないから大丈夫」
 いや先生、そういう問題じゃ……ノート使わないの? ラッキー、僕も忘れてたんだよな。
 アホ日直の号令で、授業が始まった。流石に、号令は間違わなかった。ちょっと見直した。それでもマイナスには変わりないが。
 授業が始まり、先生はまずこう言った。
 「はいそれじゃ、前回のノート開けー」
 ……終わった……騙された……
 「教科書にも載ってるからそっちでも大丈夫だぞー」
 ああ、ありがとう神様! おかげで僕の命は救われました!
 それからしばし、前回の復習が続いた。十分ほどしていただろうか。先生曰く、この部分は大事な部分でよくテストなんかでも出る、らしい。つまり、ここがまったく覚えられていない僕はテストで人生が終了するということか。この役立たず神様め。
 その復習もたった今終わり、先生が新たに指示を出した。

 「隣同士でペア作ってー」

 ペア……? 何をするんだ?そういうのは先に言うべきだと思うが……
 僕の隣は……ああそうか、綾音は休みだ。あと、瑛も休みだった。あれ、それじゃあ……もしかして……結菜さんとのペアワークになる!?
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