フィーネ・デル・モンド! ― 遥かな未来、終末の世界で失われた美味を求めて冒険を満喫していた少女が、なぜか魔王と戦い、そして……

Evelyn

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第3部 カレーのお釈迦様

第45話 ベリアル君、豹変す

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 予想以上だった。
 イシュタルの攻撃力もベリアル君のアレも。

 イシュタルは銃撃や砲撃をかいくぐり、強力な火炎魔法で敵船を次々と炎上させる。
 巧妙な飛翔も、火炎の威力も、あれやこれやの大言壮語を裏切らない、さすがの実力どすえ。

(何だ、「どすえ」にハマってしまったのか?)

 はいさぁ。「はんなり」の語感が素敵どすえ。
 これで わ・ち・き も立派な キョーオトメ京乙女?
 ねえねえ、キョーオトメって、古代の二ホンって国の「じゃぱにーず・びゅーてぃー」を体現してたって言うじゃない。
 世界中の男性や知識階級の憧れだったって。
 ひゃっほーい。

(京乙女が「わちき」とか「ひゃっほーい」など言うものか。それではせいぜい、京都出身の、勘違いして妖艶ぶったヤンキーだな)

 あらあら、何をますことやら。

(「おっしゃい」だ!)

 おや、そないどすか?
 ちょっとも気付きませんでしたわぃなぁ語尾は特に「はんなり」と (笑)
 ごめんしてくだしゃんせぇ。

(いい加減、怪しげな京都弁(?)を操るのは止めろ! 背筋が寒くなる。それよりも、あの二人を見よ)

 実は、そのことはあまり考えたくないからボケていたのだ。

 イシュタルの火炎魔法の威力はさすがだ。
 大きな火球を次々と放って敵船を炎上させる姿は、「攻撃魔法の達人」と言ったゼブルさんの言葉通り。
 更にそこに強風を送り込み、火は勢いを増す。
 帆やマストが焼け落ち、船体は炎に包まれる。
 炎が船内の火薬に引火して大爆発を起こす。
 楽し気な高笑いが聞こえる。
 そのようにして、気楽に、もう何十の敵船を餌食にしたろうか。

(さすがだな。「暴風に乗って天に昇る」と謳われた女神だからな。あ奴の飛翔や風の魔法は、やはり一級品だ)

 暴風? ヤッパリじゃん。
 それなのに、さっきは意地の悪いことを。

あ、オホンまた口が滑った。そ、それにだ、「目も眩む閃光を放つ人」とも言われておったぞ。おやつ、い、いやまだウロタエてますが火炎を放つ姿を見れば、それも納得できるな)

 まあいい。このオッサンの意地悪はいつものことだ。
 それよりも、問題なのはベリアル君。
 えっ? 何が問題なのかって?
 それはねえ……

! !」

 アレですよ。
 まあね、「普段は大人しい人ほど、あるきっかけで豹変することがままあるお酒を飲んだり、車の運転の時とか?(作者・談)」って聞くからさぁ、もしかすると、なんて少しは思ってましたよ。
 でも、アレはちょっと……
 目は異様に吊り上がり、口は耳まで裂けあくまで比喩どすえ、全く超古代の神話に伝える最凶の悪魔の形相じゃありませんか。

ほらほらほらぁー決して「オラオラオラァー」ではありません! もっと狂えーッ! もっともっと楽しませろ――――ッ!!!」

 これですから。
 いやね、負傷者の回復や小型船の物理防御は、普段のベリアル君と変わらず、ちゃんとやってくれてるんですけどね。

 でも、混乱や幻惑魔法の威力がこれほどとは!
 あちこちの空中を飛び、敵船の操舵主を混乱させては互いに衝突させる。
 水夫は何かの幻影に怯えて逃げ惑い、海に飛び込む。
 兵士を幻惑しては同士討ちをさせる。彼らは幾度も斬られ、刺され、血まみれになりながらも、なおも何かにかれたように戦いを繰り返す。その相手は全て同僚の兵士。
 教会軍の船団は、どっかーんとか、ぐえぇとか、ぎゃあーッとか、ひぃーッとか…… まさしく阿鼻叫喚あびきょうかんの惨状だ。

 白昼の美しく澄んだ海上に地獄絵図が描かれた。
 こ、これは、まさしく「悪の芸術家」の所業。
 恐ろしい。

(優美に振る舞ってはいても、あ奴はベリアルだぞ。かつて、どれ程の数の都市や国を滅ぼしたことか。混乱や幻惑、扇動や誘惑の力にかけては、やはり、あ奴の右に出る者は居らぬな)

 右? じゃあ左はどうなんだ?

(古いギャグだな)

 うう…… やっぱり。
 失礼しました

 ルイジ船長が私の肩を軽く叩いて

「あの子供たちも、なかなかやるずらねぇ。これで勝ちは決まったのっし」

 なんて言う。
 おっ! 「ずらぁ」や「のっし」はともかく、その自信に溢れた風貌と、戦いの最中にも落ち着いた口調は、もはやの風格ではありませんか!

「言ったのし。戦意や気合だったら負きゃーせん。おまけに、敵は海から来たのが運の尽きだったさあ。300隻とか、船の数だけは大層でも、乗っとるのは陸戦の装備をした兵士や、戦いには員数外の水夫や、せいぜい未熟な海兵ばかり。いっちょ前に大砲なんぞあっても、腕のいい砲手が居らにゃあ飾りと一緒じゃあ」

 それにしても、これほど一方的な戦いになるとは。
 艦隊の連続一斉砲撃、鉄甲船の威力、海賊衆の敵船へ乗り込んでの奮闘、お子ちゃま二人の「狂気」の大活躍特に約1名……
 敵船団はもはや壊滅寸前だ。
 船は炎上し、沈み、兵士や水夫はあるいは甲板に倒れ、あるいは海に落ちていく。

 これじゃあ、私の出番はなさそう。

(残念なのか?)

 ぜーんぜんOK牧場だから,それはちょっと古過ぎて……(作者・談)
 だって、楽だから。

(それが本音か?)

 あ、いえいえいえいえ……(以下繰り返し)
 だって、みんなの自由と平和を守るための戦いFor Our Freedom and Peace! おーっ!だからね。
 自分たちで進んで戦ってくれたら、こんなに嬉しいことはない、って、あれ? なんかエラソーなこと言っちゃちゃって恥ずかしぃったら、なんじゃもんじゃ。

(ふふん。しかし、喜んだり恥ずかしがっている暇は無いようだぞ)

 そう。やっぱり出た。

 心の声さんの言う通り、その時、砲声や銃声、剣戟の音、子供たちの嬌声と高笑い、敵の悲鳴や絶叫が響く中、かろうじてまだ浮いている船々に、突然にふくれ上がる多くの魔力を感じた。
 しかも、あれもこれもが全く同質の魔力。
 何だこれは?

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 戦場一帯に轟く凄まじい大声?
 
 何が出るかな、何が出るかな、わくわく。

(なっ! この大事に、その high さは何なのだ。ルイジ爺のデタラメな方言と、海戦の高揚に、少しばかり思考や言語の中枢をヤラれたか?)

 失礼な。私は至って正気です。
 ただちょっと、出番(?)の前にいろんな興奮を紛らわしているだけで。
 おっ、これは、これは、これは! お待ちかねの誰が?天使だぴょーん。

!!!あまりの発言に、絶句

 さあ出ました。
 あちこちの船からほとんど同時に、数十もの輝く姿が空中に飛び上がる。
 もしかして、あれが皆、天使か?
 それらの姿は私たちの眼前、やまと號の船首からすぐ先の空中に集まり、目も眩む光を放ちつつ不気味に蠢うごめいて融合した。

 その光が弱まった時、そこには憤怒の形相の1人の巨人の姿。
 ほんでぴょ、まあ、それがさあ……
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