89 / 102
ウェディングパーティ編
ウェディングパーティ編:夜・end
しおりを挟む夜、皆が寝静まった深夜2時。
永井は炭火焼き地鶏のパックを肴にビールを飲んでいた。
「珍しいな。いつもはレモンサワーなのに。」
「・・・てめぇこそ。花嫁ほっぽって、何しに来た。」
リビングのドアのあたりから酒田の声がした。
食卓のおしゃれ用の吊り下げライトでは広いリビングを薄ぼんやりとしか照らしてくれず、表情や姿をハッキリとは確認できない。
1人の時間を邪魔された苛立ちで嫌味を言ってしまったが、何か飲み物を取りに来ただけかもしれない。と思い当たり「水か?」と聞けば「いや、違う。」と否定された。
水では無いと言ったくせに、暗がりから出てきた酒田は冷蔵庫に向かい、戻ってきた時にはビール缶を2本持っていた。
「いいか?」
「ダメだっつったらどうすんだよ。」
「あー・・・、慶介の寝顔を見ながら1人で飲む。」
「チッ、勝手にしろ。」
酒田がプシュッとプルタブを引き、缶のままググゥっと一気に煽る。
永井も同じように煽ってみたが、元々ビールは好きではないのでそれほどたくさんは飲めなかった。
コンッと置かれた缶の音が、半分以上飲んだのではないか?と思うほどに軽かったので、分けてやる気のなかった地鶏の炭火焼きを「空きっ腹に酒は良くない。」と酒田にも進めた。
「永井、今日の結婚式、助かったよ。ありがとう。」
「ホントだよ。お前ら2人して丸投げしやがってよ。」
「ははは、おかげで良い結婚式だった。」
永井は片眉を上げて酒田からの感謝の言葉を受け取った。
お互いそれ以降の会話はなく、しばし、酒を飲む音だけがする静寂。
ビールの残りも半分に減った頃、永井は沈黙を破り語りだす。
「今回、メインで仕事してわかったが、ーー俺は、慶介の秘書にはなれないと思った。」
「それは・・・」
「距離を取りたいという意味じゃない。俺は、真の意味で慶介を諦めることは出来ないと思う。慶介のために何かをする時、俺は補佐に徹することが出来なかった。慶介がお前を想う気持ちに寄り添えねぇんだ。・・・それが出来ないのなら、オメガの補佐は出来ないだろうと、後藤さんと竹林に言われたよ。・・・・・・俺は、慶介の側に居たかった、横が無理ならせめて後ろは、と思ってたが、・・・無理そうだ。」
「そうか・・・。」
「ーーだから、お前の秘書にしてくれ。」
缶ビール片手に、机に肘を付いて、足は投げ出した悪い姿勢の見本のような姿で言う言葉ではないのかもしれない。
水瀬に見られたら「その態度で?は?」みたいな事をゴミムシを見るような目で言われることだろう。
ただ、酒の力を借りたとはいえ、本心からの決意だ。
「わかった。慶介のことは全て、永井に任せる。」
酒田はさほど間をあけず、永井を秘書にすることを決めた。
その迷いの無さに「お前、俺の事、信用しすぎじゃないか?俺はシェルターの立てこもりと禁じ手を使った男だぞ?」と言いたくなった。
しかし、ここで拒絶するような器量の狭さを見せる酒田を、想像できないくらいには、永井も酒田に惚れ込んでいる。
「ありがとう。」
「ーーただ、秘書になるなら柔道はやめてもらわないといけないんだが・・・。」
「ああ、わかってる。まずは、再来年とその次のオリンピックで金を目指す。秘書になるのはその後だ。」
「だよな。獲れよ、金。」
「ああ。」
***
・・・・・・ウェディングパーティ編…end
10
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
泡にはならない/泡にはさせない
玲
BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――
明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。
「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」
衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。
「運命論者は、間に合ってますんで。」
返ってきたのは、冷たい拒絶……。
これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。
オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。
彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。
——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる