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駄々
しおりを挟む「いや、ちょっと待ってください...!どうしてそうなるんですか...!」
声を荒らげた碓氷が、再び私の所まで戻ってくる。
「主任が行かないなら僕は行きません」
「え~、じゃあ私も~」
自席で通知表をつける若王子と石井までも修学旅行の下見を放棄しだしたため、流石に苦笑が溢れた。
「そもそもに4人で下見って、どう考えても人数が多いんですよ。2人で十分でしょう、ね?主任」
「そうだね、黒田先生と碓氷くん2人でなんてどうですか?」
ぱぁっ、と明るくなる黒田とは裏腹に、先程よりも怖い顔をする碓氷。
「やだ」
「碓氷先生、オレと2人で下見に行こっか」
「やだ!」
思った以上に駄々っこな碓氷を横目に、若王子が席を外す。
出来れば下見になんか行きたくない。
若王子と旅行に行くのは嬉しいから100歩譲っていいとして、神崎を1人残しておくことが不安なのだ。
あんなに可愛いくてカッコイイのだから、誰かに連れ攫われてもおかしくない。
「教頭に下見のメンバー替えを依頼してきましたよ。これで最終決定にしてくれだって」
「はぁ、残念だな~。でもテーマパークはカットだし、姫神先生もノリ気じゃないから行ってもって感じですよね~。姫神せんせ、今度は2人で旅行行きましょうね!」
「ダメです、そんなの僕が許しません」
席に座り直した若王子の肩をガシッと掴み、鬼の形相で見つめる碓氷は酷く焦ったように声を上げた。
「おい何勝手に...!」
「碓氷先生、僕は通知表をつけるのでとっっっても忙しいんです。触らないでください、へし折りますよ」
満面の笑み。
すこぶる機嫌の悪い若王子に、うっ、と息を詰まらせた碓氷は後にチラリと黒田を見やる。
「...、下見の件で話があります...」
「うん、いつでもいいよ。場所移動する?」
「何でだ...ですか、貴方の席にお伺いしますから座って待っててください」
上機嫌な黒田は嬉しそうに返事をして自席へと戻っていく。
一方で、頭を抱えた碓氷は、これでもかと言うほど大きなため息を吐いた。
「碓氷くん」
「...はい」
「もしかして私たちと行くこと楽しみにしてた...?」
ピシッ
「はぁ...?」
私の余計な一言が碓氷の堪忍袋の緒を突き破る。
「楽しみにしていたわけがないだろ!」
わぁ...めっちゃ怒ってる...!!
あたふたしながら、どうにか落ち着かせたい私は、通知表と睨めっこする他2人の横でデスクからお菓子を取り出す。
「そ、そうですよね、ごめん...!あの、お菓子食べます?」
「いりません」
「肩でも揉もうか?」
「結構です!」
ああ、ついには目も合わせてくれなくなった...。
「う...碓氷くん、変なこと言ってごめんなさい...怒らないで...」
碓氷の横まで椅子を持って行き謝り倒すと、またしても大きなため息。
「...いいですよ、もう」
「碓氷くん...!」
「4人で行くより、黒田先生と行く方がマシ...ですから...」
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