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相性
しおりを挟む「っ...!学校で名前を呼ぶのはやめてくれ」
思わず振り返り、またしても手元に抱えられたお菓子を見ては前髪をくしゃりと握った。
「...それ」
「ああ、僕のために作ってくれたみたいで...貰わないのも悪いでしょう?」
僕のため?
貰わないのも悪い?
君に好意を寄せる彼女たちの作った、ハートの装飾まみれのお菓子。
それが君の胃袋に入るというのか?
「...政宗さん」
「、だから...学校では」
「前もこんなことありましたね、相手は女子生徒ですよ?僕が本気になるのは貴方だけです」
「......」
ふい、と顔を逸らし職員室へ向かう私の後ろを着いてくる若王子はやけに上機嫌だ。
馬鹿だな...女子生徒相手だからこそ、モヤモヤするんだろ...。
19時
「なんと今回から、代行の料金も校長のポケットマネーから支給されます。今までソフドリで我慢していた先生方、どうぞ沢山呑んでください!それでは、乾杯!」
今日の飲み会のこと、完全に忘れてた。
小テストの採点が終わった瞬間、若王子と碓氷に拉致られ、今に至る。
毎回3学年の担当だけ1箇所に固まり過ぎだ、と教頭に指摘されたにも関わらず、結局固まってしまった。
「早速ですけど、私お手洗いに行ってきますね~、姫神先生の隣取っちゃダメですよ~」
るんるんの石井に、若王子はゴミを見るような視線を向け、居なくなった瞬間に私の隣へ座り直す。
「石井先生に怒られちゃうよ」
「この前誘われて断れなかったでしょ、僕が隣に座れば誘われることも無いですから。僕だって誰かさんに酒ぶっかけられんのも嫌ですし」
...優しい。
「わ、悪かったよ...。と言うか、ずっと気になってたんですけど...貴方たちって異様に仲良いですよね」
ぎくっ
目の前に座る碓氷は普段から冷たい目をしているが、それに加えて更に冷ややかな視線を送ってくる。
そんなに仲良さそうに見えてたかな...?
ジャケットを脱いでネクタイを緩めた碓氷は、グラスに入った烏龍茶をぐいと飲んだ。
「まあ、僕たちは色々相性が良いですからね」
「ふーん...なんか怪しいんですよ、その仲の良さ」
始まったばっかりだけど、この席から逃げたい...。
ジョッキに入ったビールを飲みながらおどおどしていると、珍しい人物が碓氷の隣へ腰掛けた。
「やあ、ここに座ってもいいかな」
もう座っている。
保険医の黒田。
昔、赴任していた女性の保険医に手を出した生徒がいたことで、うちの学校の保険医は男でなくてはならないと言う決まりが出来た。
黒田は爽やかな優男で、尚且つ温厚癒し系。
職員室内のマドンナが石井であれば、その逆、プリンスは黒田である。
年配の女性教員から溺愛されている黒田が、男だらけのこの席に来れることが珍しいのだが...。
「っ!黒田、先生...席はまだ空いているが?ここには石井先生も来られるし退いていただきたい」
遠くで黒田コールをする女性教員に笑顔で手を振る黒田は、碓氷の言葉に耳を傾けることも無く店員さんを呼んだ。
「ジンジャーハイ1つ、お願いします」
「む、無視だと...」
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