48 / 60
48. 姉と妹
しおりを挟むあけましておめでとうございます!
*新年早々ですが、今話、ショッキングなシーンと、登場人物の通常では考えられないような思考の描写が出てきます。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。
私には妹がいる。
勿論、可愛いと思っているし、家族としての情愛もある。
けれど、依存心が強いのか、私に対する執着のような物を感じてからは、少し距離を置くようになった。
上手く離れる事が出来たと思っていたのに…。
母が領主の所に働きに行くと決まってから、また私に執着するようになった。
しかも、前以上に…。
更に、前年に続き、その年も凶作で食料も無く、妹と距離を置こうにも無理だった。
領主の所に行く母は、働く条件として、子供を置いて来るように言われたけど、落ち着いたら迎えに来るか、それが無理でも食料を持って来るから。と言っていたけど、本当のところはわからない。
妹は、母に捨てられたのだと、毎日泣いていた。
たぶんそうなのだと、私も思っていたけど、それを妹に言うつもりはなかった。
そして、とうとう食料が尽きた。どうしたらいいか分からなかった。
取り敢えず、領主の邸に行ったが、母には会えなかった。
本当か嘘かはわからなかったが、母は「死んだ」と聞かされた。
途方に暮れた私に、邸の使用人が砦を襲撃する計画があって、それに参加すると御飯を食べさせてもらえると聞いて、参加する事にした。
けれど、妹を連れて行く事など出来ない。
でも、妹は付いていくと言って聞かなかった。
連れて行くのは、危険だと思った。だから置いて行こうとしたのに、付いて来ていたらしい。襲撃直前に気づき、離れた場所で隠れているように約束させた。
砦を襲撃した時、敵と遭遇した私は切られたと思った次の瞬間、鳩尾に激痛を感じて死んだのだと思った。
が、死んだと思っていた私は、実は気を失っていただけで、砦で保護されていた。
眼を覚ますと、妹が私の顔を覗き込んでいた。
妹が無事だった事に安心した。
その時にいた砦の警備隊員から、運び込まれる時に、私を助けようと、妹が飛び出してきたと聞かされ、血の気が引いた。
そして、無茶をした妹を叱った。でも、妹がそうしていなければ、離れ離れになってしまうところだった。
だから、結果オーライだと、喜んでいた。
だから、妹に対して、疑惑など持っていなかった。この時までは…。
ヤコブ村の村長夫妻の所に引き取られる事になって、安心したのだけど、暫くしてから、何かがおかしいと思うようになった。
「 まだ子供だとはいえ、荒くれ共の中でよく無事だったね。」と、村長夫妻がよく口にした言葉に引っ掛かりを覚えたのは、いつからだっただろうか?
食料も無く、空腹に夜も眠れずにいた時とは違って、食料も睡眠も十分とれるようになって、正常な思考になってくると、何かがおかしいと思い始めた。
空腹だった時は、食べ物の事しか考えられなかったから…。
嫌な考えが頭に浮かんでは、そんな事は無いと打ち消す。
そしてある日、妹の視線に気づいた。
背筋を冷たい汗が伝う。
けれど、気の所為だと自分に言い聞かせる。
しかし、いつまでも誤魔化せる訳ではない。
そしてその日がやって来た。
ローランドが故郷に帰るから、その挨拶をしに来た。
一緒に行きたかったのに、彼は頑なに拒否する。
この時私は、自分も妹と同類なのだと気づかされた。
それを認めてしまえば、随分と気持ちが楽になった。
だから、私は彼を追いかけた。
~~~~~
私には、姉がいる。
とっても面倒見が良くて、優しくて、妹思いで、私はそんな姉が大好きだった。
だから、小さな頃からいつも姉にひっついていた。いつも傍にいるのが当たり前だった。
それが変わったのはいつからだろう?
思い当たるのは、たぶん、弟が生まれてからだと思う。
いつも私の面倒を見てくれていた姉が、話も出来ない、ただ無くだけの弟と呼ばれる物に、世話を焼くようになって、私よりも弟を優先する事に納得がいかなかった。
だから、姉がトイレに行っている間に泣いて煩いから、姉の真似をして泣き止まそうとしたのに、泣き止まなかった。
腹が立った私は、弟の顔にクッションを投げつけた。
泣き声が小さく感じて、良かったと思った。
そのうち、泣き声も聞こえなくなって、静かになった。
これでやっと、姉と遊べると喜んでいたけど、姉は、怒ってクッションを退けると、弟を見るなり泣き出した。
母が来て、姉に事情を聞くけれど、泣きながらなので、母にも訳が分からなかったみたいだった。
でも、その日から弟が居なくなったお陰で、優しい姉が戻って来て嬉しかった。
母も姉も優しくて、幸せな日々が続いていたのに、父とかいう奴が来た為に、殴られたり、髪の毛を掴んで引き摺り回されたりして、泣いてばかりいた母と姉。
そんなある日、私は見てしまった。
母が父が食べる物に、何か草のような物をいれたのを…。
その草は、庭の奥まった所に生えていた物だった。
いつも自分だけご馳走を食べているその男は、食べ終わった後、喉を押さえてのたうち回った揚げ句、静かになった。
一部始終を見ていた私は、とってもいい事が分かって、一人喜んでいた。
だって、嫌な奴がいてもその草を食べさせれば、居なくなるのが分かったから。
まさか、母に使う事になるとは思わなかったけど…。
でも、いいよね。
私達姉妹を捨てて自分だけ幸せになろうとしたんだから…。
とは言っても、使うと決めて、母に食べさせるまで悲しくて泣いた。
私達の事を捨てなければ使わずにすんだのに…。
でも、私にはまだ姉がいる。
姉は私を捨てたりしない…筈。
それを試すみたいな試練が訪れるなんて思ってもみなかった。
けど、待っているように言われた私が付いて行っても、姉は私を捨てなかった。
姉だけは変わらず優しかった。
だから、私達に嫌な事をしようとした奴等に食べさせたの。あの草を…食べ物に混ぜて。
砦に襲撃する人数が減ったけど、いいよね。
そのお陰で、親切そうな人達に守ってもらえて、村長夫妻の子供になる事が出来たから。
なのに…
あんな人を選んで、私を捨てて追いかけるなんて思わなかった。
ここまできて、私を捨てるなんて…。
あの夫婦の所為だ。あの人達が、姉に村の男との結婚を押し付けたりするから…。
だから、姉が私を捨ててあんな人に頼らなきゃいけなくなったんだ。
きっとそうに決まってる。
そして私は、姉に結婚押し付けた夫婦と男達に、あの草を食べさせた。
先ずは、あの男達に食べさせ、上手くいった。
けど、二人も死んだ事で怪しまれたのだろう。村長夫妻に食べさせる時に、私の食べ物に混ぜられていたなんて…。
失敗した。
でも、私は気づいたから、吐き出した。
だから、生き残る事が出来た。
そして、私は姉を追いかけたのだった。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【R18】私は婚約者のことが大嫌い
みっきー・るー
恋愛
侯爵令嬢エティカ=ロクスは、王太子オブリヴィオ=ハイデの婚約者である。
彼には意中の相手が別にいて、不貞を続ける傍ら、性欲を晴らすために婚約者であるエティカを抱き続ける。
次第に心が悲鳴を上げはじめ、エティカは執事アネシス=ベルに、私の汚れた身体を、手と口を使い清めてくれるよう頼む。
そんな日々を続けていたある日、オブリヴィオの不貞を目の当たりにしたエティカだったが、その後も彼はエティカを変わらず抱いた。
※R18回は※マーク付けます。
※二人の男と致している描写があります。
※ほんのり血の描写があります。
※思い付きで書いたので、設定がゆるいです。
初めての相手が陛下で良かった
ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。
※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる