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0章 歪んだバイト
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不思議な空間に歪に組み込まれた人類の知恵。それは全ての生き物を狂わせて、争いを産む。知恵というものは、便利であるほど脅威になり得るのだと、それを見ていた生き物は思い、額の魔法石を光らせた。
バイト3日目──────────
「ほら、魔法に集中しすぎて魔力が乱れてるよ。そんなんじゃ、防御魔法が出来たって他からつけ込まれる」
「わ、分かってる!! ……けど、オレにダブルタスクは……!」
謎に魔獣から狙われているアークをなんとか仕事が出来るようになるまで指導することになった魔法使いたち。とりあえず基礎知識と防御魔法を教えてみているが、1日2日でどうにかなることでもない。
頑張っているアークを尻目に、アーラは適当にスマホをいじっていた。そこに疲れきったアークが泣きついてくる。
「なぁ、アーラ……お前はいつから魔法使い始めたんだ?」
「……ボクは、気がついたらですかね」
「マジ? どんな幼少期だよ」
「…………別に、普通です」
一切スマホから目を離さず、適当な返事をするアーラにアークは首を傾げた。聞いてはいけなかったことなのかもしれないと反省しつつも、何か違和感を感じていた。すると、アーラが不機嫌そうに目を細める。
「魔法ってのは、一朝一夕じゃないんです。逆に聞きますけど、なんであなたはこれまで魔法を使おうとは思わなかったんですか? そんなに魔力があるのに」
「魔力があるからだよ。オレ、昔は人型保つのも出来ないくらい魔力扱えなくてさ、それなのに量だけは誰よりもあったから余計大変だったんだ」
「……宝の持ち腐れってやつですか。センス無さそうですもんね」
嫌味のように言い捨てたアーラは、スマホをいじる。電波もないのに一体何を見てるのだろうか。そんなことよりも、この緊張感溢れる空気をどうしようかと大人たちは目を見合せた。
「ア、アーラさん? どうかされましたか?」
「何もないですよ」
(何もないって雰囲気じゃねぇだろ……!)
勇気を出して声をかけたルプスでさえもズバッと切り捨てられた。本人が何も言わないんじゃ、何も出来ない。これが思春期か……などと4人が思ったその時。
──────────クルルルルッ
「?」
「あれって、まさか……!」
どこからともなく現れた1匹の魔獣。漆黒の長毛をなびかせ、キラリと額の紫が光った。魔獣は空中を地面のように踏みしめて、子供の元へと歩を進める。そして、その軟体動物のような体を押し付けた。
「嘘だろ……本物か……?」
「こんな偽物作ったら、何かしらの法律に引っかかるでしょ。それに、額から感じる魔力は本物だし」
「じゃあこれが本物の"カーバンクル"だってのか? それこそ犯罪の匂いがするだろ」
吸い込まれそうなほど美しい魔法石を持つ魔獣、そんなものは1種類しかいない。しかし、そんな希少生物がこんな場所にいてもいいのだろうか。他の魔獣のように檻に入っているわけでもないし、凶暴でもない。
カーバンクルは、喉を鳴らしながらアーラを見上げた。これにはさすがのアーラもスマホから目を離してカーバンクルの方を見つめる。何を言うでもなく数秒が過ぎた後、アーラはカーバンクルの魔法石に触れた。
「おい……! んなの触ったら…………あれ?」
「……すごいね。カーバンクルの魔法石に触れてるよ。こんな経験したの世界でも片手で数える程度しかいないでしょ」
命とも言える自身の魔法石を触らせるカーバンクルなんていない。たとえ相手がどれだけ優秀な魔法使いであっても、龍であったとしても、それに触れていいのはカーバンクルに認められたモノだけ。
そんな奇跡のような状況を見た4人は、ただただそれを見つめた。すると、カーバンクルは急に動きを止めて何もない方向を見つめ出す。全員が無意識にその方向を見ると、そこには本当に何も無かった。
「なんだ? 何か見えるのか?」
「怖いね……何かワタシたちには見えない何かがあそこにいるのか……」
「んなわけあるか。どうせ虫とかだろ? オレたちが見えないほど小さい。視覚も嗅覚もオレたちとは全く違うんだから」
アークがそう言った瞬間だった。カーバンクルの大きな耳がピンと立って前を向き、瞳孔がカッと開いた。そんなカーバンクルの様子に気がつく前に、ある異変が5人を襲う。
アーラの耳飾りが今までに見たことがないくらいに光り輝き、視界が遮られる。手に触れていた毛の感触がなくなったのを理解した後、まだボヤける視界の中でアーラはとんでもない光景を知らされる。
「……!? ……な、にが……」
目の前に現れたのは、檻の中にいるはずの牙狼とケットシー。いや、あっちの狼は牙狼の上位種であるガルムのような見た目をしている。しかし、ここにガルムはいなかったはず……
どこから現れたのか分からない魔獣を前に、アーラは対応を決めかねていた。倒してしまうのは簡単だが、無許可でそんなことをしたら法律違反だ。監視されているこの場所でそんなことをしたら、逃げ場がない。
そんなことを考えていると、敵意が1つしかないことに気がついた。よく見ると威嚇しているのはケットシーの方だけで、ガルムは動く気配がない。というか、すごく落ち着いている。
「…………えっと、How are you?」
「なんで英語なんだよ」
「喋ったぁ!!」
普通の魔獣なら、声を聞くという行為はしても応えるということはしないはず。言葉を返したということは、目の前のコレは魔獣じゃない。魔人だ。
その事実にアーラが感動していると、思いっきり威嚇してきているケットシーがこちらに突進しようとした。……が、呆気なくガルムの手によって抑え込まれてしまう。
「おい、よく見ろ。コイツはアーラだ。というか、何魔獣返りしてんだよ。さっさと目ェ覚ませ」
「……っ、……ごめ、なんか抑えきれなくて」
「喋ったぁ!!」
「もういいよ! てか、なんでお前はそのまんまなんだ。まさか、人型魔獣か?」
「違います。多分、この耳飾りのおかげでしょうね。というか、なんで2人はその姿に?」
「こっちが聞きてぇわ」
魔力と話し方から察するに……
ガルム=ルプス
ケットシー=アーク
で間違いないだろう。そうなると疑問は2つ。何故、魔法が解けたのか。残りの2人はどこに行ったのか。しかし、後者はすぐに解決した。
「いや~、びっくりびっくり」
「驚いたね、いきなり術式解かれちゃうなんて」
「え、2人も人型のままじゃん。オレたちだけ? こんな醜態晒してんの」
「いやいや、その姿を醜態とは言わないよ。ワタシたちだって、さっきまでは元の姿に戻ってたし……」
「うん。もう普通に戻れるよ。魔法使ってみな~」
そう言われて、2人は目を見合せた後に変身魔法を使ってみる。すると、本当に何事もなく人型に戻れた。見慣れたその姿は、なんの違和感もない出会った頃と同じ姿だ。
では、さっきの現象がなんだったのか。今日のトークテーマは決まった。5人はそれぞれ床に座って話し始める。
「……まず、謎現象が起こる前にカーバンクルの様子がおかしくなったよね」
「でも、カーバンクルの生態なんて分かんねぇことだらけなんだからよ。それが関係してるかは分からねぇだろ?」
「それも一理ある。じゃあ、あの瞬間何か特別なことが起こったと仮定しよう。そうだね、例えば……」
「強制解除魔法、とか」
普通では有り得ないが、1番考えられる例えを出てきたモルス。怪しく笑うその様子は、確実に何かを確信しているようだった。しかし、それが妄想から来るものなのか、それとも確証を持っているのかは分からない。
強制解除魔法……それはどんな魔法、魔力を利用している運動の全てを停止させることの出来る天災レベルの魔法だ。そんなものは都市伝説とされていたが、アーラはそれが出来そうな人物に出会っていたことを思い出した。
「…………なーんか、面白くなってきたな」
ドMの変態が心底楽しそうな呟きをする。
類は友を呼ぶとはよく言ったもので、そんな奴の周りにいる奴らも、無意識に口角を上げていた。
バイト3日目──────────
「ほら、魔法に集中しすぎて魔力が乱れてるよ。そんなんじゃ、防御魔法が出来たって他からつけ込まれる」
「わ、分かってる!! ……けど、オレにダブルタスクは……!」
謎に魔獣から狙われているアークをなんとか仕事が出来るようになるまで指導することになった魔法使いたち。とりあえず基礎知識と防御魔法を教えてみているが、1日2日でどうにかなることでもない。
頑張っているアークを尻目に、アーラは適当にスマホをいじっていた。そこに疲れきったアークが泣きついてくる。
「なぁ、アーラ……お前はいつから魔法使い始めたんだ?」
「……ボクは、気がついたらですかね」
「マジ? どんな幼少期だよ」
「…………別に、普通です」
一切スマホから目を離さず、適当な返事をするアーラにアークは首を傾げた。聞いてはいけなかったことなのかもしれないと反省しつつも、何か違和感を感じていた。すると、アーラが不機嫌そうに目を細める。
「魔法ってのは、一朝一夕じゃないんです。逆に聞きますけど、なんであなたはこれまで魔法を使おうとは思わなかったんですか? そんなに魔力があるのに」
「魔力があるからだよ。オレ、昔は人型保つのも出来ないくらい魔力扱えなくてさ、それなのに量だけは誰よりもあったから余計大変だったんだ」
「……宝の持ち腐れってやつですか。センス無さそうですもんね」
嫌味のように言い捨てたアーラは、スマホをいじる。電波もないのに一体何を見てるのだろうか。そんなことよりも、この緊張感溢れる空気をどうしようかと大人たちは目を見合せた。
「ア、アーラさん? どうかされましたか?」
「何もないですよ」
(何もないって雰囲気じゃねぇだろ……!)
勇気を出して声をかけたルプスでさえもズバッと切り捨てられた。本人が何も言わないんじゃ、何も出来ない。これが思春期か……などと4人が思ったその時。
──────────クルルルルッ
「?」
「あれって、まさか……!」
どこからともなく現れた1匹の魔獣。漆黒の長毛をなびかせ、キラリと額の紫が光った。魔獣は空中を地面のように踏みしめて、子供の元へと歩を進める。そして、その軟体動物のような体を押し付けた。
「嘘だろ……本物か……?」
「こんな偽物作ったら、何かしらの法律に引っかかるでしょ。それに、額から感じる魔力は本物だし」
「じゃあこれが本物の"カーバンクル"だってのか? それこそ犯罪の匂いがするだろ」
吸い込まれそうなほど美しい魔法石を持つ魔獣、そんなものは1種類しかいない。しかし、そんな希少生物がこんな場所にいてもいいのだろうか。他の魔獣のように檻に入っているわけでもないし、凶暴でもない。
カーバンクルは、喉を鳴らしながらアーラを見上げた。これにはさすがのアーラもスマホから目を離してカーバンクルの方を見つめる。何を言うでもなく数秒が過ぎた後、アーラはカーバンクルの魔法石に触れた。
「おい……! んなの触ったら…………あれ?」
「……すごいね。カーバンクルの魔法石に触れてるよ。こんな経験したの世界でも片手で数える程度しかいないでしょ」
命とも言える自身の魔法石を触らせるカーバンクルなんていない。たとえ相手がどれだけ優秀な魔法使いであっても、龍であったとしても、それに触れていいのはカーバンクルに認められたモノだけ。
そんな奇跡のような状況を見た4人は、ただただそれを見つめた。すると、カーバンクルは急に動きを止めて何もない方向を見つめ出す。全員が無意識にその方向を見ると、そこには本当に何も無かった。
「なんだ? 何か見えるのか?」
「怖いね……何かワタシたちには見えない何かがあそこにいるのか……」
「んなわけあるか。どうせ虫とかだろ? オレたちが見えないほど小さい。視覚も嗅覚もオレたちとは全く違うんだから」
アークがそう言った瞬間だった。カーバンクルの大きな耳がピンと立って前を向き、瞳孔がカッと開いた。そんなカーバンクルの様子に気がつく前に、ある異変が5人を襲う。
アーラの耳飾りが今までに見たことがないくらいに光り輝き、視界が遮られる。手に触れていた毛の感触がなくなったのを理解した後、まだボヤける視界の中でアーラはとんでもない光景を知らされる。
「……!? ……な、にが……」
目の前に現れたのは、檻の中にいるはずの牙狼とケットシー。いや、あっちの狼は牙狼の上位種であるガルムのような見た目をしている。しかし、ここにガルムはいなかったはず……
どこから現れたのか分からない魔獣を前に、アーラは対応を決めかねていた。倒してしまうのは簡単だが、無許可でそんなことをしたら法律違反だ。監視されているこの場所でそんなことをしたら、逃げ場がない。
そんなことを考えていると、敵意が1つしかないことに気がついた。よく見ると威嚇しているのはケットシーの方だけで、ガルムは動く気配がない。というか、すごく落ち着いている。
「…………えっと、How are you?」
「なんで英語なんだよ」
「喋ったぁ!!」
普通の魔獣なら、声を聞くという行為はしても応えるということはしないはず。言葉を返したということは、目の前のコレは魔獣じゃない。魔人だ。
その事実にアーラが感動していると、思いっきり威嚇してきているケットシーがこちらに突進しようとした。……が、呆気なくガルムの手によって抑え込まれてしまう。
「おい、よく見ろ。コイツはアーラだ。というか、何魔獣返りしてんだよ。さっさと目ェ覚ませ」
「……っ、……ごめ、なんか抑えきれなくて」
「喋ったぁ!!」
「もういいよ! てか、なんでお前はそのまんまなんだ。まさか、人型魔獣か?」
「違います。多分、この耳飾りのおかげでしょうね。というか、なんで2人はその姿に?」
「こっちが聞きてぇわ」
魔力と話し方から察するに……
ガルム=ルプス
ケットシー=アーク
で間違いないだろう。そうなると疑問は2つ。何故、魔法が解けたのか。残りの2人はどこに行ったのか。しかし、後者はすぐに解決した。
「いや~、びっくりびっくり」
「驚いたね、いきなり術式解かれちゃうなんて」
「え、2人も人型のままじゃん。オレたちだけ? こんな醜態晒してんの」
「いやいや、その姿を醜態とは言わないよ。ワタシたちだって、さっきまでは元の姿に戻ってたし……」
「うん。もう普通に戻れるよ。魔法使ってみな~」
そう言われて、2人は目を見合せた後に変身魔法を使ってみる。すると、本当に何事もなく人型に戻れた。見慣れたその姿は、なんの違和感もない出会った頃と同じ姿だ。
では、さっきの現象がなんだったのか。今日のトークテーマは決まった。5人はそれぞれ床に座って話し始める。
「……まず、謎現象が起こる前にカーバンクルの様子がおかしくなったよね」
「でも、カーバンクルの生態なんて分かんねぇことだらけなんだからよ。それが関係してるかは分からねぇだろ?」
「それも一理ある。じゃあ、あの瞬間何か特別なことが起こったと仮定しよう。そうだね、例えば……」
「強制解除魔法、とか」
普通では有り得ないが、1番考えられる例えを出てきたモルス。怪しく笑うその様子は、確実に何かを確信しているようだった。しかし、それが妄想から来るものなのか、それとも確証を持っているのかは分からない。
強制解除魔法……それはどんな魔法、魔力を利用している運動の全てを停止させることの出来る天災レベルの魔法だ。そんなものは都市伝説とされていたが、アーラはそれが出来そうな人物に出会っていたことを思い出した。
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