転生先は背後霊

高梨ひかる

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セドリックが10歳になった。
魔力欠乏症の死亡率のピークは魔力が成長しきる10歳と言われているので、このままなら安泰だろうといわれたのがつい昨日。
セドリックは10歳の誕生日に、神殿と言われる場所へ行く。

異世界あるあるな気がするが、この国では10歳になると魔力開花の儀式を行うのだそうだ。
属性を調べ、有益に使うために学ぶ指針とする儀式。
この儀式で命を落とした人や変な属性を指摘された人はいないといわれているので、単純に神様の祝福――というやつなのだそうだ。
この儀式さえ受けてしまえば魔力の変化が止まり、魔力の変化が止まるわけだから魔力欠乏症も治る。
ちなみに闇属性も普通の属性らしいよ。安らぎの属性で案外人気あるらしい。

そして俺も背後霊5年目にして初めて街に出ます。

いつ容態が悪化するかわからないセドリックは基本的に家から出ることはなかった。
もちろん毎日勉強してたし庭に出て運動や剣技もしていたので、家のどでかさを考えると不健康さは全くないが。
それでも大多数の人混みに紛れるのはまだ早いのではないかと公爵が許さなかったのである。

まあ、気持ちはわかるよな。
死にかけてた息子がいくら回復したからと言って街中に出したいかって言われるとすごい疑問だ。
社交界でも公爵家の息子が魔力欠乏症であるというのは有名な事実だったらしく、社交界は10歳を迎えてから――ということになってたのである。
当然ながら初めて街へ出るセドリックは大興奮だ。
俺も大興奮である。

この世界の常識はセドリックとともに叩き込まれたが、実際体験するのは別問題だよね。
普通にドワーフとかエルフとか獣人とかいる世界だし、この公爵領は特に差別もないらしく大きな街として人種のるつぼらしいからね。
ケモミミとか正義だよねやっぱり。

ということで馬車でガタゴトガタゴト。
窓から見える景色は、郊外から街中へ進む道である。

公爵様のおうち、でっかい街の端の方に建ってるんだよね。
真ん中に建てるんじゃなくて、森も含めて空気の良い方に建てたのだそうで、もちろん外周にはちゃんと警備兵もいるし防壁らしき壁もあるけど、端っこ。
そのため街にこっそり出るとかいう距離じゃなかったため、俺も楽しみにしていたのである。

実は背後霊もどきだから神殿に入れないとかあってひと悶着あったりしないかなと思っていたのは秘密で。
一応悪霊の類ではないらしく、俺はすんなりと神殿に入ることができました。
良かった。
神殿にまっすぐ進んできたので人は米粒くらいしか見れなくて不満だけど、儀式が終わったら街中も見れるらしいので楽しみにしておこう。

ということで、早速儀式です。

儀式は誕生日当日になると出来るらしく、貴族は事前に予約して訪ねるのが一般的だそうだ。
なのでずらーっと並んでてとかは特になく、公爵家のおぼっちゃまなので個室に品の良いお爺さんが待ち構えてらっしゃった。
で、儀式内容は簡単で水晶玉に触るだけ。
属性を認識することで魔力が安定するとかなんとからしいよ。仕組みはわからんけど病気が治るのなら触らない理由がない。
ちなみに10歳以下で触っても魔力が安定することはないらしいので、神の御業と言わざるを得ない。
魔力欠乏症で死ぬ奴は一定数いるんだからそこは譲歩しろよなとか思うけどね。

閑話休題。

ご両親が見守る中で、水晶玉にそっと触るセドリック。
本来ならその水晶玉の中に1、ないしは2属性の光が渦巻き徐々に安定すると事前に聞いていた。
だが、水晶玉は不思議な状態になった。

きっちり半分だけ白と緑に光り、半分がそのまんまになっているのである。

「これは……?」
「ふむ、不思議なこともあるものですな」

何かを探すようにきょろきょろするお爺さん。
ちなみに神官っぽいのなら俺見えないかなーと手を振ったりしたけど反応なかったんで見えてません。
見えてないけどなんか探されている気がする。

『もしやこれ、俺も触るべき?』

なんとなく好奇心にかられ、なにも反応していない反対側を触る。
すると水晶玉の半分はゆっくりと色を変え、黒と赤の光を示した。

「ほう、これは面白い」

お爺さんの反応は悪くないが、両親とセドリックの顔色が悪いな。
早く説明してほしい。

「あの……セドリックに、何か……?」
「いやいや、悪いことではないので安心してくだされ」

全然安心できる要因ないとおもうが、腰を掛けろという動きをされたのでセドリックが両親のもとに戻り近くの椅子に座る。
ちなみにお爺さんは水晶玉の前にいるので最初から座っていた。

「まず属性じゃが、セドリック殿は光と風のようじゃな。光は王家によくある属性故、素直に父親であるあなた譲りの属性であろう。第二属性の風はおそらく母方かの?」
「はい、私の属性は風と水です」
「であるなら、何も問題はなかろう。気になっているのはこちら側――闇と、火であるな?」

頷く両親に、お爺さんは深く頷く。

「こちらはな。魔力欠乏症を克服した子供に稀に見られる現象なのじゃよ。第3……この場合第4もあるようじゃが、本人とは真逆の属性が現れるといわれておる。あたかももう一人の人間がそこにいるかのように」
「「!」」
『つまりこの属性は俺のか……』

闇と火とかすごく……厨二病です。

「成長するにつれ消えるともいわれておるが、これが出るなら魔力の安定に間違いはなく、魔力欠乏症をもう一度発症することはないといわれておる。だから悪い兆候ではなかろうよ」
「そうですか……」
「じゃがな、一つだけ注意することがある」
「?」

お爺さんは神妙に両親を見た。

「4属性があるということは、小さき頃から修行すれば使えるということでもある。じゃが、属性の多さは本人の魔力を結果的に使いすぎてしまい倒れるなんてことにもなりかねぬ。必ず体調に気を付け、使いすぎには注意するように。病で倒れずとも、魔力の使いすぎて昏睡することがないわけではないのだ、特に儀式を受けたての子であれば」
「わかりました、一層気を付けることにいたします」
「うむ。魔力欠乏症を克服すると魔力は跳ね上がるといわれておるでな、逆に過多症として苦しむことがあるかもしれぬ故、制御は特に念入りに習得することをお勧めしますぞ」
「ありがとうございました」

その後も注意点を言われるだけ言われて、両親とセドリックは神殿を出てきた。
異世界テンプレ的な『この子はすごい……!』みたいな引き留めるイベントは全くなかったが、元々身分が高く国と密接な関係だから問題ないのかもしれないな。
セドリックは次期公爵だから国から出ることもないだろうし、王弟である父親も国のために民の為に勉学を励めってタイプだしな。
4属性と言われたセドリックは何か思うことがあるのか、ふわふわと視線をさまよわせているが。

「ねえ、お父さま」
「どうしたセドリック」

神殿に行く道すがら約束していたように、まずはご飯だとばかりに馬車で移動する中でセドリックが父親を呼んだ。

「僕はずっと誰かに見守られている気がしていました」
「……」
「難しいなと思う勉強の時も、ちょっと転びそうになった時も、ふと気づくと風が吹くのです。気をつけろと言わんばかりに」
「……そうか」

気づかれないと思っていたが、案外気づかれてるもんなんだな。
手を出すことはできないが、小さいセドリックがこけそうになるたびついつい手を出してはすり抜けられていた。
何の感覚もないものだと思っていたけれど、セドリックにはやっぱり何かしらが伝わっていたのだろう。
でなければ、もう一人の人間がいるようだといわれて気味悪がるでもなく、ただ好奇心に駆られたように辺りを見回すなんてことするはずないんだから。

「だから大丈夫です、お父さま」
「!」
「僕はきっと、守られているんです」
「……そうか」

俺を少し感じるセドリックと違い、両親はやはり不安なのだろう。
俺自身は成り代わりたいとも今更離れてセドリックをどうにかしたいという気持ちはないが、見えない何かである俺を信用するのはまぁ難しいよなぁ。
ぎゅう、と手を握り合う二人を見つめながら俺もひそかにため息をつく。
せめて見えるとか話すとか、そんな感じで存在を認めさせることは出来んかなぁ……と。
数年の間ちょこちょこ考えてはいたものの、まるで解決策が見つからないものに俺も頭を悩ませるのであった。

帰り道で見かけたケモミミは可愛かったです。
セドリックが子供すぎて挨拶以外のなんの発展もなかったけどな。

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