続・思わぬ収穫? ~見聞録~

七月 優

文字の大きさ
26 / 69
見聞録

魔力制限がある国 ②

しおりを挟む
 ア=ラウジ国は、三日月の形をした内陸国である。
 国旗には赤色と黄色とペパーミントグリーンが入っていて、ア=ラウジ国の首都では、店や民家の屋根・壁・扉・窓枠にその色が多く用いられていた。
 人々はみな、長い裾の上衣に、下はロングパンツという装いがほとんどだ。多彩を誇る服装は、国や首都を華やかに見せているかのようだ。
 それ以外の格好をしている少数は、他国民で間違いないだろう。

「チャイナドレスに少し似てる、かな。でも、どことなく東南アジアチックなんだよね」

 首都の東部を目指しながら、深紅の髪をシニョンに結い上げた少女は、日本語でぼそり呟く。
 少女の傍らにはきのこに似たモンスターが二匹いて、少女同様初めて訪問する土地に目を輝かせている。

「初めてのア=ラウジ国はどうだ? リース」
「はい。前世のとある諸国地域を思い出します。服装や建物が特にそう思わせられますね」

 前を歩いていた銀髪の男性に訊ねられ、リースと呼ばれた少女はしっかりと彼の目を見て返事をした。

「ねえ、旦那様、リース。帰国までに、こちらの国の服を仕立ててもらいましょう。いい土産になるでしょうから」
「そうだな」
「いいですね」

 竜人族の美女に、彼女の夫とリースは同意する。
 他国民である彼らは、華美でなく、重苦しすぎないカラーフォーマルの装いである。

「旦那様はやはり鳥の模様がいいかしら?」
「以前もそうだったろう?」
「あら、お嫌なの? 鳥の模様もいろいろありますのに。リースも、旦那様には鳥の模様が似合うと思いませんこと?」
「・・・・・・そう、ですね。イーグルさんには猛禽類など、お似合いだとは思います」
「そうでしょう」

 リースの無難な返しに、イーグルと呼ばれた男性の妻は満足そうに笑っていた。

「では、ベルにはどういった柄や模様がリースは似合うと思うんだ?」

 イーグルは、露店で売られている簡易なこの国の衣装を見ながら、リースに訊ねた。
 リースも周囲の人たちの衣装の模様や、露店に並ぶ衣装の柄を見ながら、しばし思案する。

「イザベルさんは、どの模様や柄でも卒なく着こなせるかと。強いて挙げるのであれば、花だとバラやモモが似合う気がします」
「あら、嬉しい。ところで、モモはどのような花かしら?」
「ピンクの可愛らしい花ですよ」
「そうなのね。いつか実物を見て見たいわ」
「はい。では、春の花ですのでそれまでに見つけておきますね」
「ありがとう、楽しみにしているわね」
 
 機嫌のいいイザベルに、リースはモモの花言葉と、ドラゴンや竜の刺繍が似合うとは決して伝えることはなく、胸の内にそっとしまう。
 リースの心情を察してか知らずか、イーグルは忍び笑いをする。
 イザベルは近くの露店に飾られていた上衣を手に取りながら、ふふっと少女のように笑っていた。

「体型がくっきりする部分も、私は気に入ってますわ」

 イザベルにとって、体のラインがはっきりとする点も、この国の服装を気に入っているポイントらしい。
 こちらの世界の衣服には、大抵魔法や呪いまじないが付与されている。そのため、丈夫で長持ち。大きめに作っても、装着者の体型に合うように、自動で縮小することも可能となる。

「前世太りやすい体質には、残酷な衣装かも」

 リースは、前世であれば太ったら着れなくなるであろうこの国の服装を眺めながら、正直な感想を前世の国の言葉で吐露した。
 続け様、
「こっちの世界は本当にいろいろと便利だなぁ」
二つの世界を比較し、リースはしみじみとした口調で、うんうんと頷く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...