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見聞録
魔力制限がある国 ②
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ア=ラウジ国は、三日月の形をした内陸国である。
国旗には赤色と黄色とペパーミントグリーンが入っていて、ア=ラウジ国の首都では、店や民家の屋根・壁・扉・窓枠にその色が多く用いられていた。
人々はみな、長い裾の上衣に、下はロングパンツという装いがほとんどだ。多彩を誇る服装は、国や首都を華やかに見せているかのようだ。
それ以外の格好をしている少数は、他国民で間違いないだろう。
「チャイナドレスに少し似てる、かな。でも、どことなく東南アジアチックなんだよね」
首都の東部を目指しながら、深紅の髪をシニョンに結い上げた少女は、日本語でぼそり呟く。
少女の傍らにはきのこに似たモンスターが二匹いて、少女同様初めて訪問する土地に目を輝かせている。
「初めてのア=ラウジ国はどうだ? リース」
「はい。前世のとある諸国地域を思い出します。服装や建物が特にそう思わせられますね」
前を歩いていた銀髪の男性に訊ねられ、リースと呼ばれた少女はしっかりと彼の目を見て返事をした。
「ねえ、旦那様、リース。帰国までに、こちらの国の服を仕立ててもらいましょう。いい土産になるでしょうから」
「そうだな」
「いいですね」
竜人族の美女に、彼女の夫とリースは同意する。
他国民である彼らは、華美でなく、重苦しすぎないカラーフォーマルの装いである。
「旦那様はやはり鳥の模様がいいかしら?」
「以前もそうだったろう?」
「あら、お嫌なの? 鳥の模様もいろいろありますのに。リースも、旦那様には鳥の模様が似合うと思いませんこと?」
「・・・・・・そう、ですね。イーグルさんには猛禽類など、お似合いだとは思います」
「そうでしょう」
リースの無難な返しに、イーグルと呼ばれた男性の妻は満足そうに笑っていた。
「では、ベルにはどういった柄や模様がリースは似合うと思うんだ?」
イーグルは、露店で売られている簡易なこの国の衣装を見ながら、リースに訊ねた。
リースも周囲の人たちの衣装の模様や、露店に並ぶ衣装の柄を見ながら、しばし思案する。
「イザベルさんは、どの模様や柄でも卒なく着こなせるかと。強いて挙げるのであれば、花だとバラやモモが似合う気がします」
「あら、嬉しい。ところで、モモはどのような花かしら?」
「ピンクの可愛らしい花ですよ」
「そうなのね。いつか実物を見て見たいわ」
「はい。では、春の花ですのでそれまでに見つけておきますね」
「ありがとう、楽しみにしているわね」
機嫌のいいイザベルに、リースはモモの花言葉と、ドラゴンや竜の刺繍が似合うとは決して伝えることはなく、胸の内にそっとしまう。
リースの心情を察してか知らずか、イーグルは忍び笑いをする。
イザベルは近くの露店に飾られていた上衣を手に取りながら、ふふっと少女のように笑っていた。
「体型がくっきりする部分も、私は気に入ってますわ」
イザベルにとって、体のラインがはっきりとする点も、この国の服装を気に入っているポイントらしい。
こちらの世界の衣服には、大抵魔法や呪いが付与されている。そのため、丈夫で長持ち。大きめに作っても、装着者の体型に合うように、自動で縮小することも可能となる。
「前世太りやすい体質には、残酷な衣装かも」
リースは、前世であれば太ったら着れなくなるであろうこの国の服装を眺めながら、正直な感想を前世の国の言葉で吐露した。
続け様、
「こっちの世界は本当にいろいろと便利だなぁ」
二つの世界を比較し、リースはしみじみとした口調で、うんうんと頷く。
国旗には赤色と黄色とペパーミントグリーンが入っていて、ア=ラウジ国の首都では、店や民家の屋根・壁・扉・窓枠にその色が多く用いられていた。
人々はみな、長い裾の上衣に、下はロングパンツという装いがほとんどだ。多彩を誇る服装は、国や首都を華やかに見せているかのようだ。
それ以外の格好をしている少数は、他国民で間違いないだろう。
「チャイナドレスに少し似てる、かな。でも、どことなく東南アジアチックなんだよね」
首都の東部を目指しながら、深紅の髪をシニョンに結い上げた少女は、日本語でぼそり呟く。
少女の傍らにはきのこに似たモンスターが二匹いて、少女同様初めて訪問する土地に目を輝かせている。
「初めてのア=ラウジ国はどうだ? リース」
「はい。前世のとある諸国地域を思い出します。服装や建物が特にそう思わせられますね」
前を歩いていた銀髪の男性に訊ねられ、リースと呼ばれた少女はしっかりと彼の目を見て返事をした。
「ねえ、旦那様、リース。帰国までに、こちらの国の服を仕立ててもらいましょう。いい土産になるでしょうから」
「そうだな」
「いいですね」
竜人族の美女に、彼女の夫とリースは同意する。
他国民である彼らは、華美でなく、重苦しすぎないカラーフォーマルの装いである。
「旦那様はやはり鳥の模様がいいかしら?」
「以前もそうだったろう?」
「あら、お嫌なの? 鳥の模様もいろいろありますのに。リースも、旦那様には鳥の模様が似合うと思いませんこと?」
「・・・・・・そう、ですね。イーグルさんには猛禽類など、お似合いだとは思います」
「そうでしょう」
リースの無難な返しに、イーグルと呼ばれた男性の妻は満足そうに笑っていた。
「では、ベルにはどういった柄や模様がリースは似合うと思うんだ?」
イーグルは、露店で売られている簡易なこの国の衣装を見ながら、リースに訊ねた。
リースも周囲の人たちの衣装の模様や、露店に並ぶ衣装の柄を見ながら、しばし思案する。
「イザベルさんは、どの模様や柄でも卒なく着こなせるかと。強いて挙げるのであれば、花だとバラやモモが似合う気がします」
「あら、嬉しい。ところで、モモはどのような花かしら?」
「ピンクの可愛らしい花ですよ」
「そうなのね。いつか実物を見て見たいわ」
「はい。では、春の花ですのでそれまでに見つけておきますね」
「ありがとう、楽しみにしているわね」
機嫌のいいイザベルに、リースはモモの花言葉と、ドラゴンや竜の刺繍が似合うとは決して伝えることはなく、胸の内にそっとしまう。
リースの心情を察してか知らずか、イーグルは忍び笑いをする。
イザベルは近くの露店に飾られていた上衣を手に取りながら、ふふっと少女のように笑っていた。
「体型がくっきりする部分も、私は気に入ってますわ」
イザベルにとって、体のラインがはっきりとする点も、この国の服装を気に入っているポイントらしい。
こちらの世界の衣服には、大抵魔法や呪いが付与されている。そのため、丈夫で長持ち。大きめに作っても、装着者の体型に合うように、自動で縮小することも可能となる。
「前世太りやすい体質には、残酷な衣装かも」
リースは、前世であれば太ったら着れなくなるであろうこの国の服装を眺めながら、正直な感想を前世の国の言葉で吐露した。
続け様、
「こっちの世界は本当にいろいろと便利だなぁ」
二つの世界を比較し、リースはしみじみとした口調で、うんうんと頷く。
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