148 / 173
# 冬
最後の難関⑨
しおりを挟む
「だから、ナオさん。ナオさんが、ユウキの側に居るべきだと思うの。ユウキのことを一番理解しているのは、ナオさんだから」
「私が……?」
急激な緊張感で、全身に寒気が走る。
そんな選択、今更できるわけがない。
私には今、大切な恋人がいて、ユウキへの想いなんて胸の奥に閉じ込めたはずなのに。
その想いを再び引っ張り出すなんて、どう考えても不可能だ。
頭の中では、悲しそうな表情をしている、戸部君が思い浮かんでいた。
「ナオさん、ユウキのためにセラピスト目指しているんでしょ? 実際に資格を取ったら、ユウキに施してあげなきゃね」
私がリフレクソロジストを志した本来の目的が、実現できるかもしれない。
ユウキの足に、温もりを伝えること。
だけど、そうすることで、戸部君を不安にさせてしまう可能性もある。
戸部君を悲しませる選択だけは、取ってはいけない。
「岸井さん、ありがとうございます。まずは資格を取らないと始まらないので、まずは試験に集中します」
そう告げると、岸井さんはコップに入っている最後の一口を飲み終え、おもむろに立ち上がり始めた。
「こちらこそありがとう。話を聞いてくれて。ナオさんの成功を願ってるわ」
岸井さんは先に店を出ると、窓越しに手を振ってくれる。
それに合わせて手を振り返すと、少し微笑んで住宅街の方に消えていった。
店内にいる私は、まだカフェオレを飲み切ることができないでいる。
資格試験が近いというのに、また気持ちが揺らぎ始めた。
ユウキ、今一人で居るのかな……。
複雑な感情が私の腰を重くさせて、体を動かせないでいた。
脳内では、戸部君とユウキの姿が、同じ明るさを浴びて輝いている。
「私が……?」
急激な緊張感で、全身に寒気が走る。
そんな選択、今更できるわけがない。
私には今、大切な恋人がいて、ユウキへの想いなんて胸の奥に閉じ込めたはずなのに。
その想いを再び引っ張り出すなんて、どう考えても不可能だ。
頭の中では、悲しそうな表情をしている、戸部君が思い浮かんでいた。
「ナオさん、ユウキのためにセラピスト目指しているんでしょ? 実際に資格を取ったら、ユウキに施してあげなきゃね」
私がリフレクソロジストを志した本来の目的が、実現できるかもしれない。
ユウキの足に、温もりを伝えること。
だけど、そうすることで、戸部君を不安にさせてしまう可能性もある。
戸部君を悲しませる選択だけは、取ってはいけない。
「岸井さん、ありがとうございます。まずは資格を取らないと始まらないので、まずは試験に集中します」
そう告げると、岸井さんはコップに入っている最後の一口を飲み終え、おもむろに立ち上がり始めた。
「こちらこそありがとう。話を聞いてくれて。ナオさんの成功を願ってるわ」
岸井さんは先に店を出ると、窓越しに手を振ってくれる。
それに合わせて手を振り返すと、少し微笑んで住宅街の方に消えていった。
店内にいる私は、まだカフェオレを飲み切ることができないでいる。
資格試験が近いというのに、また気持ちが揺らぎ始めた。
ユウキ、今一人で居るのかな……。
複雑な感情が私の腰を重くさせて、体を動かせないでいた。
脳内では、戸部君とユウキの姿が、同じ明るさを浴びて輝いている。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる