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# 春

予期せぬエラー⑧

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「もう、何やってるのよ! 百歩譲ってケガしたのはいいけど、何でボーっとしながら包丁使ってるのよ! そんなの危ないじゃないの!」

 真っ青な顔した三人組の無言を、私の怒りが切り裂いた。
 立場的に迷惑をかけていたから、何にも言えずにいたけど、どうしても包丁を使いながらボーっとしていたことが許せなかった。 

「え、そこ? ごめん、それはシンプルに不注意。今日のことを考えていたら不安でさ」

 少し外れた指摘を、失笑しながら返答する彼のリアクションを見ると、入来ちゃんも吹き出しそうになっている。
 いつの間にか和やかな雰囲気に様変わりしているけど、私の不安は落ち着くことがない。

「それで、どうするの? 戸部君は施術できなそうだし」

 みんなに問いかけたところで、答えは二つに一つだ。
 私か入来ちゃんが、今日の施術を行う。
 自分が不安な顔つきをしているのは、鏡を見なくてもわかる。

 その表情で伝わったのか、入来ちゃんが口を開きそうになった瞬間、戸部君の力強い目が訴えかけているのを感じた。
 その真っ直ぐな目と、私の弱々しい目が合うと、戸部君はゆっくりと頷く。
 それは、もはやメッセージだった。

 背中を押されるように、挙手をする。
 入来ちゃんはその動作を見ると、一瞬開いた口を閉じて、嬉しそうに微笑んだ。


「私に……やらせて!」
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