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第3章 冒険 -グランツ編-
王都に向けて
しおりを挟む俺たちは冒険者ギルドを出て、シェリルの屋敷へ向かっている。
先日のレシピの報酬をいただくためだ。
「シェリル、グランツから王都まではどのくらいかかるんだ?」
「約10日くらいかなー」
「やっぱり結構かかるな。途中の宿屋とかはどうなんだ?」
「無くはないけど、多くもない。ある程度王都に近づけばそれなりの街があるんだけど、それまでは小さい村ばかりだよ」
「そうか。あのさ、シェリル。シェリルのとこで使ってない家ってないか? 小さくていいんだけど」
「聞いてみないとわからないけど、どうして?」
「アイテムボックスに入れておけば、途中で泊まれるし、馬車より安心で快適かなって思ってさ。セレナはどう思う?」
「それいいわね。どうせならキッチンも欲しいわね」
「えっ? それって毎日俺が料理する流れじゃない?」
「え~、ダメなのぉー?」
セレナ、いつからそんなにあざとくなったんだ?苦笑
「ただ家を借りるとなると、1つ大きな問題があるよ」
「何だ? シェリル」
「ボクの家族にアイテムボックスのことがバレるということだよ」
「ゲッ!! そうだったな。忘れてたー。いい考えだと思ったんだけどな...」
「もし、シーマがバレてもいいって思ってるなら、これからもらうレシピの報酬を家にしちゃえばいいんじゃない? 」
「なるほどな...。それもアリかも」
そうこうしてるうちにシェリルの屋敷に着いてしまった。
基本的にはバラす方向で、後はなるようにしかならないだろ。
出たとこ勝負だ。
「やあ、シーマくんたちよく来たね。報酬は準備してあるから、こっちに来てくるかい?」
屋敷に入るなり、レオンさんに出迎えれれて客間へと案内されると、そこには待ち構えるようにしてロナルドさんとステラさんがいた。
ロナルドさんがもっとやつれてないか心配だったけど、顔色も良くなってるし問題なさそうで安心した。
「シーマくん、この前は美味しい料理とレシピを提供してくれてありがとう。ロナルドもいろいろと元気になってくれて嬉しいわ」
「シーマ。個人的には若干の恨みもあるが、これは仕事としての取引だ。相応の報酬を用意しているが、お前から何か希望はあるか?」
まぁ、恨まれるよねー。
愛されてるんだから別にいいじゃん!!
それと、
希望を聞かれるとは思わなかったが、ある意味願ってもない展開だ。
俺はアイテムボックスから遮音の魔道具をみんなにわかるように取り出してから喋りかける。
「まず、これから話すことは非常に重要なことですので、俺たち3人とロナルドさん、ステラさん、レオンさん以外の方々は席を外していただきたいのですが」
俺の言葉に執事や侍女らが騒めく。
俺は突然現れて決まったシェリルの婚約者だ。信用がなくても不思議じゃないし、むしろ当然だろう。
ロナルドさんは、ステラさんとレオンさんに目で確認した上で、最後にシェリルのほうを向いた。シェリルが頷いたのを見て、ようやく言葉を発した。
「いいだろう。皆の者は外で待機しててくれ!」
ぞろぞろと皆さんが退出したところで、俺は魔道具のスイッチを入れた。
これを忘れたら意味がないからな。どこぞやの夫婦みたいに丸聞こえになっちまう。
「ロナルドさん、すみません。ご協力いただきありがとうございました」
「遮音の魔道具まで持ち出したんだ。それなりのことなんだろ? ちなみにこれから話すことはシェリルは知ってるのか?」
「もちろんだよ! そしてボクもこの対応は正解だと思ってる」
「ロナルドさんが疑問に思うのはもっともだと思います。ただ、俺たちは若過ぎるが故、ことの重要性が分かりません。その辺の判断についてもご指導を仰ぎたいと思っております。まずはこちらをご覧下さい」
そう言って俺は、腰からダミーのバッグや剣などを部屋の隅に置いてから席に戻り、手を前に出してから金貨を取り出して見せた。
「「「アイテムボックス!!」」」
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