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第2章 宿屋
大切なもの
しおりを挟む「セレナ、ごめんな。こんなことになっちゃって」
俺はベッドで横になっているセレナのすぐ横に腰掛けて話しかけた。
「ううん、シーマが謝ることじゃないよ。私のほうこそごめんね」
「えっ、何が?」
そもそも俺が買い出しを頼んだからセレナが襲われたんだし、それは変えようのない事実だ。だからセレナが謝るようなことなんてないはずなのに。
「私が弱かったせいでシーマに迷惑かけちゃった。もちろんエテルナさんにもね」
「そんなこと…『ねぇ、シーマ』」
確かに俺たちは冒険者としては弱い部類だが、普通の大人達には負けないくらいだとは思ってる。セレナが弱いってことを否定しようとしたが、それもセレナに遮られた。
「私…強くなりたい」
「…」
俺は思いもよらないセレナの言葉に何も返せずにいると、セレナは上半身だけ起き上がって言葉を続ける。
「単純に私1人では戦えなかったことが悔しかったの」
「それは冒険者に戻りたいってことかい?」
「わからない。でも、このままではまたいつかシーマに迷惑かけることになる。いつまでも守ってもらうだけなんて嫌なの。私がシーマを守れるくらいに強くなりたいの」
まさか、セレナがそこまで思ってたなんて知らなかったな。
もう少女ではない大人の女性がそこにいるんだ。
いつになく目に力が込められているのは決意の証なのか。
俺はそんなセレナに対してどう応えればいいのだろう。
確かにこのままではいけない気がする。
何かを失ってからでは遅いんだ。
俺にとって大切なものは何だ?
一番失いたくないものは何だ?
これからを生きる上で絶対に必要なものとは…
決まってるよな。
セレナだ。
親の形見である、精龍亭も大事だ。
でも、俺にとって…
いや、椎名守にとっても短い間ではあったが、セレナは特別な存在だった。
この可愛い茶髪の幼なじみが大好きなんだ。
今、セレナより大事なものなんてない。
よく考えるんだ。
俺たちの最適解を。
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