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第2章 宿屋
冒険者ギルド
しおりを挟む「あら? シーマにセレナじゃない」
冒険者ギルドに入るなり、金髪のスレンダーな美少女が声をかけてきた。
受付嬢のモニカだ。
歳が近いせいもあってモニカはいろいろと気にかけてくれる。ただでさえ若くて可愛いのに世話焼きなので冒険者の間ではかなり人気がある。受付に行列があれば、その先にモニカがいるってわかるくらいだ。
「シーマは大変だったね」
「モニカも知ってるのか…」
「そりゃあね。ギルドにはいろんな情報が入ってくるわ。ましてやこの街で人気の宿屋夫妻のことよ。知らないほうがおかしいわ」
そんなモニカの言葉で、改めてシーマくんの親へ対するこの街の評価を感じた。やっぱり親は偉大なんだな。守としてもいろんなことを聞きたかったな。
「そういうモニカだって、スタンピードの間は大変だったでしょ?」
セレナがさりげなく話を逸らすようにモニカに問いかける。こういう気遣いは正直うれしい。
「スタンピードの間はココも別の意味で戦場だったわよ。私たちは戦えないから、裏方としてコスタの冒険者を支えないとって」
他の街への応援依頼や、ポーション類の確保、戦況の把握や指示などギルドの役割は多岐に渡る。
「街を守ったギルドだもん、本部からも評価されて給料も上がるんじゃない?」
「そうだといいけどねー。忙しいだけだったらただの働き損だしね。セレナたちはまだ報酬受け取ってないんでしょ? こっちて来てちょうだい」
そう言ったモニカから銀貨5枚ずつを俺たちは受け取った。
この世界の貨幣の価値を、元の世界に換算すると、
鉄貨•••100円
銅貨•••1,000円
銀貨•••10,000円
金貨•••100,000円
大金貨•••1,000,000円
白金貨•••10,000,000円
このようになる。
銀貨5枚なら50000円だ。戦いに参加するだけで5万円なら悪くないが、それも命があってこそだ。シーマくんの親のこともあるので何とも言えない気分になる。
「あと…。これも受け取って」
そう言ってモニカは金貨1枚を俺に渡そうとしてくる。
「え? これは?」
「もう冒険者ではなかったけど、ご両親は街のために戦ってくれたわ。ギルド長からよ」
「…」
「もう! はい、これ!」
「あっ!」
俺が無言で立ち尽くしていると、モニカが突然俺の手を取って、金貨を強引に握らせた。その様子を見ていたセレナがちょっと驚いたようだ。
「ちょっとセレナ。これくらいで怒らないでよ。これもご両親のためなのよ」
「わかってるけど、手を握らなくてもいいじゃない…。
ほら! シーマもデレデレしないの!」
「別にデレデレしてないし…」
とか言いながらも、俺は内心ドキドキしていた。守からすれば、金髪の美少女が手を握ってくるなんてご褒美でしかないのだ。
どうせならしばらくこのままでも…ってそんなわけにもいかないよな。
「ちょっとくらい、いいじゃない…。自分ばっかり…」
モニカが小声で呟いていたが、セレナには聞こえてないみたいだけど、俺にはバッチリ届いてた。とりあえず聞こえない振りしておいたよ。
シーマくんはモテモテなのか?
そういえば鏡がないからシーマくんがどんな顔してるか知らないや。家に戻ったら確認してみようかな。
「そういえば、モニカに言わないといけないことがあるの」
「何かしら?」
「私、シーマと一緒に暮らすことになったの」
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