放課後の秘密~放課後変身部の活動記録~

八星 こはく

文字の大きさ
16 / 37
第4章 ミステリアス少女の秘密

第16話 佐倉雪

しおりを挟む
 変身部の部室に通うのも、もうすっかり慣れてきた。私は美術部もあるから毎日行けるわけじゃないけど、居心地がよくて頻繁に足を運んでいる。
 そして蓮さんと雪さんは、ほとんど毎日部室にいる。

「こんにちは!」

 勢いよく扉を開けてすぐ、違和感に気づいた。蓮さんがいないのだ。
 更衣室で会わなかったから、てっきりもう先に部室にいるのかと思ったんだけど。

「蓮さんはまだなの?」

 天野望結じゃなくて、天使ももとしての振る舞いも、少しずつ慣れてきた。最初はすごく恥ずかしかったけれど、今では逆に、素が出る方が恥ずかしい、くらいの気持ちだ。
 如月さんだって、蓮さんモードと普段とじゃ、全然違うし。

「今日はこないと思う」
「えっ?」

 蓮さんがいないなんて珍しい。保健室にこなかった日でさえ、変身部には顔を出してくれていたのに。

「先生に呼び出されて、親と三者面談してるらしいから」
「三者面談……?」

 一年生の時は夏前に三者面談があったけれど、今年はないはずだ。
 たぶん、二年生がみんなするやつじゃなくて、如月さんが特別にしてることだよね。

「そうだったんだ」

 頷きながら、雪さんの正面に腰を下ろす。心の中で、もやもやが広がっていくのが分かった。
 どうして雪さんは、そんなことを知ってるの? なんで如月さんは、私には教えてくれなかったの?
 放課後変身部では、普段の話はほとんどしない。だから私は雪さんの正体を知らないし、雪さんと如月さんの関係も知らない。
 ……二人って、すごく仲良しだったりするのかな。
 如月さんと仲良くなれたと思ってたけど、まだまだなのかな。
 私がそんなことを考えている間に、雪さんはテーブルの上に数学の問題集を広げた。
 ……あれ? この問題集、私のと違うかも。

「もしかして雪さんって、三年生なの?」
「うん、そう」

 あっさり雪さんは頷いた。でも、私にとっては貴重な情報だ。
 だって、名前と見た目以外、全然雪さんのことを知らないんだから。
 雪さんは、大事な変身部の仲間だ。だから、雪さんとも仲良くなりたい。
 でも、どうすればいいのかな?
 変身部には、お互いのことをずけずけと質問しない、という暗黙のルールがある。特に、変身前のことに関しては。

「……あ、そうだ!」
「ちょっと、急に大声出してなに?」
「雪さん、ももが絵を描くの、手伝ってくれない!?」
「え? 私、絵なんて描けないけど」
「そうじゃなくて、モデルになってほしいの!」

 勢いで口にしたことだけれど、意外といいアイディアな気がする。
 そういえば私、誰かをモデルにして絵を描いたことってほとんどないし。

「雪さん、綺麗だしすごく絵になると思って」
「そういうことなら、仕方ないわね」

 そう言いつつも、雪さんはすごく嬉しそうだ。にやけた頬を隠しきれていない。
 雪さんって、褒められるのが好きなのかな。





 勉強をしている雪さんの横顔を見ながら、スケッチブックに下描きをしていく。

「うーん……」

 ラフ画の出来栄えは悪くない。でも、どこかピンとこない。
 これじゃ、目に映ったものをそのまま描いただけって感じ。別に、それだって悪いわけじゃないけど……。
 せっかくなら、目には映らないものも絵にしたい。
 雪さんをそのまま描くんじゃなくて、雪さんの雰囲気とか、雪さんが持つ世界観とかが一目で分かるような作品にしたい。
 そのためにも、もっと雪さんのことを知らなきゃ。ううん、知りたい。

「雪さん。今、話しかけてもいい?」
「いいけど。どうかした?」

 勉強の手を止めて、雪さんが私を見た。綺麗な黒髪が揺れる。
 この髪ってウィッグなのかな。それとも地毛? 黒だから、どっちか分からない。
 雪さんって、一見、見た目は普通なんだよね。すごく綺麗な子だけど、教室にいても違和感はないっていうか。
 でも、変身部にいる以上、本当の雪さんとは全く違う姿なんだろうな。

「えーっと……」

 本名は? とか、本当の姿は? なんて聞けない。
 でも、雪さんを知りたい。

「そうだ! 雪さんって、趣味とかある?」

 人のことを知りたいなら、好きなものとか、嫌いなものを聞くのが第一歩だよね。
 いきなり嫌いなものを聞くのはちょっと微妙だし、まずは好きなことについて聞いてみよう。

「読書かな。結構、いろいろ読むよ」
「へえ……具体的に、どんな作品が好きなの?」
「……私の話、めちゃくちゃ長くなるけど。いい?」

 雪さんは真剣な顔で私を見ていた。
 もしかして雪さんって、好きなことの話になると、かなり饒舌になっちゃうタイプ?

「うん。いっぱい聞かせて!」

 大歓迎だ。だって私は、いっぱい雪さんのことを知りたいから。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

あだ名が245個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

処理中です...