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第3章 変身レッスン
第15話 そういう場所だから
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「今日はありがとう。すっごく楽しかった!」
水族館に行った後は、同じビルに入っているカフェでケーキを食べた。その後はウィンドーショッピング。
本当に楽しくて、時間があっという間に過ぎてしまった。
「こちらこそありがとう。ももさんのおかげで、素敵な一日を過ごせたよ」
そう言って笑った蓮さんは、少し悲しそうだ。
私と一緒で、今日が終わるのが寂しいのかな。
「ねえ、ももさん。こうしてまた、僕とデートしてくれる?」
「もちろん!」
私が元気よく頷くと、蓮さんはきょろきょろと周りを確認した後、私に一歩近づいてきた。
そして、耳元で囁く。
「……私とも、遊んでくれる……?」
それは間違いなく、如月さんの言葉だった。
「うん。絶対、誘うから」
とっさに、私も天野望結として返す。私たちは笑顔で手を振り合って、そのまま解散した。
◆
電車に揺られながら、今日一日のことを思い出す。
朝からずっと楽しくて、気づけば笑っていた。最初は天使ももらしく振る舞わなきゃ! なんて意気込んでいたけれど、いつの間にか、その意識も薄れていった。
わざわざ意識しなくても、自然と天使ももとしてふるまえるようになっていたから。
今日の私は、間違いなく天使ももだった。
『今日、本当にありがとう。誘ってくれて嬉しかった!』
如月さんからメッセージが届いた。きっと、電車に乗ってすぐに送ってくれたんだろう。
マメだよね、如月さんって。
如月さんについて、まだまだ知らないことはたくさんある。でも、変身部に入る以前と比べると、たくさんのことを知れたし、いろんな表情を見ることもできた。
『私もすごく楽しかったよ。ありがとう』
今回は水族館へ行ったから、次は動物園に行くのもいいかもしれない。
如月さんも興味があるなら、美術館とか、博物館もいいよね。
あ、せっかくお洒落をするんなら、写真映えするようなカフェやフォトスポットもいいな。
いろんなアイディアが頭の中に浮かぶ。どれか一つを選ぶなんてできないから、全部一緒に行ってしまいたい。
きっと、全部行けるよね。
◆
部室の前で、軽く深呼吸をする。中からは話し声が聞こえてくるから、きっともう二人は部室にきているのだろう。
大丈夫。今日の私はきっと、今までで一番、天使ももだ。
そしてたぶん、明日は今日よりももっと。
「おまたせ!」
扉を開けるのと同時に笑顔で挨拶する。目が合った雪さんが、驚いたように目を丸くした。
「……なんか、雰囲気変わった?」
「そうかな? どこが、どんな風に?」
にっこりと笑って、ちょっと得意げな感じで口角を上げてみる。
褒められた気がして嬉しいけど、もっともっと、褒め言葉を引き出したいから。
それが、天使ももの考え。
「前より、らしくなった気がする」
くすっと笑うと、雪さんは立ち上がって私の前にやってきた。
ビー玉みたいな瞳で見つめられて、ちょっとどきっとする。
「今の方がいいよ。自然な気がする」
自然……そっか。
今の私は天使ももの姿なんだから、天使ももでいるのが自然なんだ。
「ありがとう!」
「別に。思ったこと言っただけだから」
そう言ってすぐに椅子へ戻っていった雪さんの言動も、すごく自然だ。普段の姿を知らない私にとっては、違和感なんて全くない、佐倉雪っていう一人の女の子。
たぶん、私はまだ、そこまで上手に変身できているわけじゃない。
だけどこれから、もっともっと、ももらしくなりたい。
「ももさん」
蓮さんに名前を呼ばれた。
「なーに?」
「今の自分のこと、好き?」
「うん。好きだよ」
ももなら、と意識した答えじゃない。紛れもない本音だ。
だってももは私の理想で、私の好きが詰まった女の子なんだから。
「よかった。でもね……」
蓮さんが私の目を見て、にっこりと笑った。
「これからもっと、自分のことを好きになれるよ。ここは、そういう場所だから」
水族館に行った後は、同じビルに入っているカフェでケーキを食べた。その後はウィンドーショッピング。
本当に楽しくて、時間があっという間に過ぎてしまった。
「こちらこそありがとう。ももさんのおかげで、素敵な一日を過ごせたよ」
そう言って笑った蓮さんは、少し悲しそうだ。
私と一緒で、今日が終わるのが寂しいのかな。
「ねえ、ももさん。こうしてまた、僕とデートしてくれる?」
「もちろん!」
私が元気よく頷くと、蓮さんはきょろきょろと周りを確認した後、私に一歩近づいてきた。
そして、耳元で囁く。
「……私とも、遊んでくれる……?」
それは間違いなく、如月さんの言葉だった。
「うん。絶対、誘うから」
とっさに、私も天野望結として返す。私たちは笑顔で手を振り合って、そのまま解散した。
◆
電車に揺られながら、今日一日のことを思い出す。
朝からずっと楽しくて、気づけば笑っていた。最初は天使ももらしく振る舞わなきゃ! なんて意気込んでいたけれど、いつの間にか、その意識も薄れていった。
わざわざ意識しなくても、自然と天使ももとしてふるまえるようになっていたから。
今日の私は、間違いなく天使ももだった。
『今日、本当にありがとう。誘ってくれて嬉しかった!』
如月さんからメッセージが届いた。きっと、電車に乗ってすぐに送ってくれたんだろう。
マメだよね、如月さんって。
如月さんについて、まだまだ知らないことはたくさんある。でも、変身部に入る以前と比べると、たくさんのことを知れたし、いろんな表情を見ることもできた。
『私もすごく楽しかったよ。ありがとう』
今回は水族館へ行ったから、次は動物園に行くのもいいかもしれない。
如月さんも興味があるなら、美術館とか、博物館もいいよね。
あ、せっかくお洒落をするんなら、写真映えするようなカフェやフォトスポットもいいな。
いろんなアイディアが頭の中に浮かぶ。どれか一つを選ぶなんてできないから、全部一緒に行ってしまいたい。
きっと、全部行けるよね。
◆
部室の前で、軽く深呼吸をする。中からは話し声が聞こえてくるから、きっともう二人は部室にきているのだろう。
大丈夫。今日の私はきっと、今までで一番、天使ももだ。
そしてたぶん、明日は今日よりももっと。
「おまたせ!」
扉を開けるのと同時に笑顔で挨拶する。目が合った雪さんが、驚いたように目を丸くした。
「……なんか、雰囲気変わった?」
「そうかな? どこが、どんな風に?」
にっこりと笑って、ちょっと得意げな感じで口角を上げてみる。
褒められた気がして嬉しいけど、もっともっと、褒め言葉を引き出したいから。
それが、天使ももの考え。
「前より、らしくなった気がする」
くすっと笑うと、雪さんは立ち上がって私の前にやってきた。
ビー玉みたいな瞳で見つめられて、ちょっとどきっとする。
「今の方がいいよ。自然な気がする」
自然……そっか。
今の私は天使ももの姿なんだから、天使ももでいるのが自然なんだ。
「ありがとう!」
「別に。思ったこと言っただけだから」
そう言ってすぐに椅子へ戻っていった雪さんの言動も、すごく自然だ。普段の姿を知らない私にとっては、違和感なんて全くない、佐倉雪っていう一人の女の子。
たぶん、私はまだ、そこまで上手に変身できているわけじゃない。
だけどこれから、もっともっと、ももらしくなりたい。
「ももさん」
蓮さんに名前を呼ばれた。
「なーに?」
「今の自分のこと、好き?」
「うん。好きだよ」
ももなら、と意識した答えじゃない。紛れもない本音だ。
だってももは私の理想で、私の好きが詰まった女の子なんだから。
「よかった。でもね……」
蓮さんが私の目を見て、にっこりと笑った。
「これからもっと、自分のことを好きになれるよ。ここは、そういう場所だから」
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