中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生

小狐丸

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北畠家の食料事情

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 永禄十二年(1569年)十二月 伊勢国  桑名城

 小氷河期にあたるこの時代、比較的温暖な伊勢の桑名でも、冬の寒さは厳しいものだった。
 それでも越前や北近江のように深い雪に覆われることはなかったが。

 北畠領内では様々な農産物や海産物が流通している。
 農産物では、じゃがいもやサツマイモ、かぼちゃや唐辛子を輸入して栽培している。
 唐辛子は、ポルトガル宣教師によって九州の大友氏に献上され伝来していた。

 北畠領では養鶏も盛んで、鶏卵や鶏肉を使用した料理も広まっている。
 戦国時代、鶏は時を告げる神聖な生き物で、その肉や卵を食べたりする事はなかった。
 そう言う下地があるので、卵は無精卵は孵化しない事を領民に教育する事から始めなければならなかった。

 その甲斐もあって、北畠領内での栄養事情は随分と改善された。

 米の品種改良も源太郎は積極的に行なった。
 当時のお米は、赤米や黒米といった古代米が主流で、栄養価は高いが、平成日本の記憶がある源太郎にとって、味の面で許容出来なかった。
 そこで源太郎は、魔法や錬金術を自重なく使い、満足には程遠いが、何とか合格点を付けれる米の品種改良に成功する。
 現在は、北畠領内で広く栽培しているが、間者からの盗難対策という余計な仕事も増えた。
 米の品種改良で、現代米に近い物が出来た事によって、源太郎は清酒の生産を始める。
 雑味がなく透きとおった清酒は、京の帝や公家衆をも虜にした。

 紀伊国を領地としてからは、捕鯨にも力を入れている。
 北畠水軍により、蝦夷や琉球経由で明との交易も盛んに行われ、蝦夷からは昆布や海産物を、中継貿易地の琉球からは砂糖や胡椒を手に入れた。

 北畠領内では、鶏の他に山羊や羊に加え、牛痘に欠かせない牛の飼育にも積極的に取り組んでいる。
 戦国時代の疫病で、猛威を振るった天然痘の予防には不可欠だった。
 源太郎の回復魔法で癒せる人の数は知れている。そこで天然痘の予防や、麻疹にかかった時の対処法を指導した。

 同時に、衛生観念の改革と綿花の栽培を進め、領民が安く暖かい衣服を着れるようになると、乳幼児の死亡率も随分下がった。

 農産物では小麦の他に、大麦の栽培を進めている。
 大麦は麦芽糖やビール、麦焼酎、ウイスキー、麦茶、麦味噌など用途は多い。
 小麦のようにグルテンをほぼ含まないので、麺などにはそのままでは使えないが、多くの酒類の原料となる有用な作物だった。

 飢える事なく、凍える事なく、北畠領民は戦国時代の日の本において、類をみない豊かさを享受していた。
 衛生環境と栄養事情の改善で、北畠領内の人口は急激に増加している。それは乳幼児の死亡率が下がっただけでなく、貧しい他国からの流民の流入の増加が原因だった。
 流入してくる流民も、爆発的に発展する北畠領では、いくらでも仕事にありつけた。流民に紛れる間者対策に、伊賀崎道順をはじめとする伊賀や甲賀の忍び達が忙しくなったのは仕方のない事だろう。



 部屋の中に炭で焼ける鳥の脂の香ばしい匂いがする。

 そこでは源太郎自ら炭火で串に刺した鳥を焼いていた。
 その周りに、於市、小夜、虎松丸と珠が、今か今かと焼き鳥が出来上がるのを待っている。

 於市と小夜はこの冬共に三人目の子供を産んだ。
 於市の産んだ子は男の子で、竜若丸と名付けた。
 小夜は女の子を産んで、愛と名付けた。

 まだ小さい茶々と茜を侍女に預け、焼き鳥が焼きあがるのを眺める妻と子を見て、源太郎は自然と笑顔になる。

「父上ー!まだですか?」

 痺れを切らした虎松丸が源太郎をせかす。

「よし!出来たぞ!」

 用意された大皿に、焼きあがった串を並べていく。
 於市や虎松丸が我先に大皿に盛られた焼き鳥を食べていく。珠や小夜も続いて、自分の好みの部位を皿から取って食べ始める。
 最初こそ肉食を戸惑った小夜も、今ではすっかり北畠家の食事に染まっている。

「珠もたくさん食べるんだよ」

「はい!珠はたくさん食べて、早く大人になりますね!」

 幼女と言っても良い珠から期待のこもった目で見られて、思わず目をそらす源太郎。それを見てクスクス笑う於市と小夜。

 今日も北畠家は仲良く平穏な一日を過ごすのだった……。

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