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14巻
14-1
しおりを挟む1 強襲聖域軍団
大精霊達から邪精霊のカケラが原因でシドニア辺境の街に魔物が溢れ出したと聞いた僕――タクミ。
先行して聖域で合流したユグル王国の騎士団の一部隊を陸戦艇ごとガルーダに搭載して、僕達は飛び立った。
「目的地はサマンドール王国側の旧シドニア神皇国領ですかな?」
「はい。先の戦いで敗北したシドニアの住民の多くがロマリア王国やサマンドール王国に流民となって、人口が激減したのは知っていますが、それでもそこで暮らす人がいるはずですから」
僕は共にサラマンダーに乗り込んだ聖域騎士団の団長、ガラハットさんに答えた。
シルフの話では、旧シドニア国内では魔物による大虐殺が行われているという。一刻も早く住民を保護する必要があった。
通信の魔導具で、バーキラ王国の近衛騎士団団長ギルフォードさんと連絡を取った。
現在、ロマリア王国の騎士団と魔法師団、それと冒険者が国境付近で魔物の討伐と避難民の救助をしているらしい。
バーキラ王国からの援軍が到着次第、シドニア国内に前線を押し返すそうだ。その後方支援と国境付近の防衛をユグル王国からの援軍が担うと聞いている。
二機のサンダーボルトとウラノス、ガルーダが編隊を組んで飛ぶ。ガルーダサイズの飛行物体など見た事がない人がほとんどなので、出来れば姿を消して飛行したかったんだけど、救援に来た事を示さないといけないため、ある程度目立つのは仕方ない。
空を見上げてパニックになる人もいたが、大きな騒ぎにはならなかったようだ。
一番スピードの遅いガルーダに合わせた編隊でも、サマンドール王国と旧シドニアの国境付近に到着するのにそれほど時間はかからなかった。
「ヒャッホーゥ!!」
飛行タイプの魔物があっという間に駆逐されていく。
その中で奇声を上げながら空を縦横無尽に飛び回り、魔物を殲滅しているのはドラゴンフライを操縦する狐獣人の女の子レーヴァだ。
先ほど小型の高機動型戦闘機ドラゴンフライに乗り込み、テンション高く飛び出していったんだ。
「タクミ様、一時の方向に平坦な広いスペースを確認。避難者の姿は確認出来ません。魔物だけです」
「よし、サンダーボルト二機に拠点確保の指示をお願い。僕達はレーヴァと飛行タイプの魔物を駆逐後合流する」
僕の言葉に従ってソフィアが二機のサンダーボルトに指示を伝えると、サンダーボルトは降下しながら地表に向けて攻撃をばらまき、周辺の魔物を殲滅していく。
ドドドドドドドドドドッーーーー!!
空気を震わすサンダーボルトからの攻撃。
それにより、魔物達は原型すらとどめていない。
ガルーダからも避難する人を助けるための援護射撃が行われ、周辺空域の飛行タイプの魔物を殲滅したレーヴァのドラゴンフライと僕達のウラノスも上空から地上の魔物を攻撃する。
二機のサンダーボルトが急降下して着陸するとハッチが開き、強襲部隊と工兵部隊、ゴーレムが展開する。
八十メートル×二百メートルの四隅に魔導具が設置され、直ぐさま起動する。
魔導具により地面のデコボコは平らになり、表面が硬化すると簡易な滑走路が完成した。
そこにガルーダが降下し着陸すると、格納庫ハッチが開き、陸戦艇サラマンダーが次々と出てくる。
聖域騎士団のサラマンダーと、一台はユグル王国のサラマンダーだ。
ガルーダの離着陸からの部隊展開訓練は平時から行っているので、とてもスムーズだ。
サラマンダーが旧シドニア側に展開して、中から騎士団と魔法師団が出てくると、ガラハットさんが次々に指示を出し始める。
「陸戦艇サラマンダー一号艇は既にサマンドール王国側に入り込んだ魔物の討伐及び、避難民の救助を行え! 工兵部隊は陣地の構築! サンダーボルト二機は、ロマリア王国方向の空域に存在する飛行タイプの魔物を殲滅せよ!」
ガラハットさんの号令で、陸戦艇サラマンダー一台がサマンドール王国方向へと走り、サンダーボルト二機が再び飛び立つ。
ユグル王国のサラマンダーもサマンドール王国側に入り込んだ魔物の討伐をするようだ。
僕達の乗るウラノスとレーヴァの乗るドラゴンフライは、旧シドニアの外周を回りながら、飛行タイプの魔物を殲滅する事にした。
幸いなのは、ワイバーンクラスの魔物がいない事か。
魔物を探して飛び立つサンダーボルトとは反対方向に僕達は高速で飛行する。
ウラノスとドラゴンフライの二機なら、旧シドニア神皇国を一回りするのに、それほど時間はかからない。
他の国に比べ、旧シドニアの面積が狭いというのもある。
『タクミ様、レーヴァはお先に行かせてもらうであります!』
「無茶するなよ!」
『了解であります!』
通信が切れると、ドラゴンフライが加速してあっという間に見えなくなる。
僕がレーヴァが撃ち漏らした魔物を倒しながら、地表へも攻撃して飛んでいると、反対回りしていた二機のサンダーボルトがもう前方に見えてきた。
僕は直ぐに通信の魔導具を取る。
「こちらウラノス。周辺空域の魔物の討伐は完了。サンダーボルトは地上の魔物を上空から討伐してください。くれぐれも避難民に気を付けてください」
『『了解です!』』
対地攻撃能力の高いサンダーボルトには、地上の魔物を間引いてもらう。
次にレーヴァに通信を入れる。
「レーヴァ、飛行タイプの魔物を殲滅後、僕達に合流してくれ。僕達はガルーダ周辺の魔物を討伐しながら遊撃する」
『了解であります!』
その後、ウラノスの針路を簡易滑走路へと向けた。
2 タクミ、惨状を目にする
着陸したウラノスから人魚族のフルーナや有翼人族のベールクトを含む僕達のパーティーメンバーが降り立つ。
僕はウラノスをアイテムボックスに収納すると、矢継ぎ早に指示を出すガラハットさんのもとへ走る。
「ガラハットさん!」
「おお! イルマ殿、飛行タイプの魔物討伐ご苦労様ですぞ」
「はい。これから、僕達は遊撃部隊として避難民の救助をしながら魔物の数を減らします」
「儂らはサマンドール王国側に侵入した魔物を討伐後、前線を押し上げますぞ」
「お願いします!」
「ご武運を!」
ガラハットさんに現場の指揮を任せると、僕は皆んなのもとに戻る。サマンドール側に入り込んだ魔物の討伐もそれほど時間はかからないだろう。サマンドール王国にも兵士や冒険者はいるはずだから。
旧シドニア側に足を踏み入れると、そこここに逃げ遅れた人の死体が転がっている。
その状況に僕達は絶句する。
「……酷いわね」
「可哀想ニャ」
特にシドニアで一時期暮らしていたアカネと、奴隷ではあったもののシドニア神皇国で生まれ育ったルルちゃんは、僕以上に思うところがあるみたいだ。
サンダーボルトで広範囲を攻撃した事により、周辺の魔物はほぼ全滅しているが、シドニア方面からはまだまだ押し寄せてくるのを、僕と従魔のカエデは察知していた。
僕は亜空間からゴーレムのタイタンとグレートドラゴンホースのツバキを出す。
「タイタン、ツバキ、無理しないようにね」
『オマカセクダサイ』
『お任せください』
続いてソフィア、アカネ、レーヴァがそれぞれの従魔を呼び出す。
「グローム」
「フェリル」
「セル」
グロームは雷の魔法を使うサンダーイーグルという猛禽類系の魔物。
フェリルはルナウルフという闇属性の狼系魔物。
セルがセルヴァルという巨大な猫系の魔物だ。
グロームが雷を纏い上空を旋回し、フェリルが影から影へと移動し、巨大な猫のセルがしなやかな動きでレーヴァに寄り添う。
「タクミ、まず広範囲に聖域結界を使った方がいいんじゃない」
「確かに、瘴気による穢れが気になるね」
アカネの指摘通り、大量の魔物による穢れが、亡くなった人をアンデッドに変えるかもしれない。
火属性魔法で燃やしてもいいのだけど、一度に広範囲となると聖域結界が良いだろうな。
「じゃあソフィアとアカネは、効果範囲を拡げる魔法をお願い」
「分かりました」
「分かったわ」
精神を集中して魔力を練り込み、聖域結界を発動する。
「聖域結界!」
僕を中心に温かな光が拡がって周辺を浄化する。
ソフィアとアカネが、魔法の効果をアップさせるバフをかける事により、聖域結界の光がさらに拡がっていく。
忙しく動き回る聖域騎士団や聖域魔法師団の団員が、思わず立ち止まってその光景に見入り、ガラハットさんが怒鳴る声が聞こえる。
聖域結界の光は、直径一キロを超えた。
「ふぅ、これで周辺の穢れは大丈夫だと思う」
亡くなった人の死体は残されているが、それがアンデッドと化す事はないだろう。
「お疲れ様です」
「ありがとう」
ソフィアがマナポーションを手渡してくれた。
まだ魔力的に余裕はあるが、念のため僕はそれを飲み干す。
これから長丁場だからね。
「タクミ、遠くに見える魔物の動きが鈍ってない?」
「ん? 本当だね。もしかしてこいつら光属性に弱いのか」
アカネが押し寄せて来る魔物の動きを指摘する。
中には、そのまま崩れ落ちるものもいた。
こんな事、よほど闇に傾いた魔物でないと有り得ない。
「タクミ様、以前使った魔導具は使えないのですか?」
「使えるけど、例の如くポイントに設置しないといけないよ」
ソフィアが言う以前使った魔導具とは、トリアリア王国と旧シドニア神皇国の合同軍とバーキラ王国、ロマリア王国、ユグル王国の同盟三国が聖域近くの未開地で戦争した時に使ったもの。
広範囲に聖域結界を発動させるアイテムだ。
あの時は、対アンデッド用として使ったのだけど、今回の黒い魔物達もアンデッド並みに光属性に弱い可能性が高い。
「タクミ様、レーヴァに任せるであります! ドラゴンフライなら、あっという間であります!」
「じゃあ、逆回りで私がウラノスで設置するわ」
「ルルもお手伝いするニャ」
レーヴァと、アカネ、ルルちゃんが魔導具の設置を請け負ってくれた。
この魔導具は、五芒星の頂点に設置して起動する必要がある。
小国とはいえ旧シドニアをカバーするとなると、発動するための魔力の問題があるけど、それを解決する方法はある。
「じゃあ頼もうかな。僕達はこの付近で魔物を殲滅しているから、設置後ここで合流しよう」
「了解であります!」
「じゃあウラノスをお願い」
僕がレーヴァに魔導具を三つ渡すと、彼女は早速ドラゴンフライへと駆け出した。アカネにも一つ渡しつつ、ウラノスをアイテムボックスから取り出す。
アカネは魔導具を受け取ると、ルルちゃんとウラノスに乗り込み、飛び立った。
僕も起点となるこの場所に魔導具を設置する。
「それで、魔力の問題はどうするのですか?」
広範囲への魔法発動を心配したソフィアが聞いてきた。
「ああ、これを使うよ」
僕は地面を土魔法で成形し、そこにアイテムボックスから取り出した巨大な魔晶石を置いた。
「なっ、こんな大きな魔晶石をいつの間に」
「ハハッ、また何か造る時に使えないかと思ってね」
ソフィアが驚くのも仕方ない。
巨大な戦艦のオケアノスやガルーダを動かすために使用した魔晶石よりも遥かに大きいのだから。
何か大掛かりなものを製作する時に使えないかと作っておいたんだ。
「これでも外側は聖域結界の効果が弱くなるだろうけど、あの魔物に効果はあると思う」
流石に小国まるごと範囲に入れた魔法なので、中心付近と比べて外側の効果が若干弱くなるのは避けられない。
それでも亡くなった人達がアンデッドになるのを防げるだろう。無惨な死を迎えた後もアンデッドになって、魂を囚われるなんて酷すぎると思う。
3 騎士団無双
旧シドニア神皇国とロマリア王国との国境付近には、続々と戦力が集結しつつあった。
ロマリア王国の騎士団や魔法師団、冒険者に加え、同盟国のバーキラ王国の近衛騎士団とボルトン辺境伯家、ロックフォード伯爵家の戦力。それらが神速の行軍で、ロマリア国内に少数ながら入り込んだ魔物を討伐しつつ、ロマリア王国の騎士団が奮戦している旧シドニアの国境へと合流を果たした。
「避難者を誘導! ポーションで回復を!」
ガラハットの息子で現バーキラ王国近衛騎士団団長ギルフォードが大声で指示を出す。
バーキラ王国の近衛騎士団、国王派貴族家の騎士団のポーション保有数は潤沢だった。
これは普段からタクミやレーヴァがパペック商会を通して比較的安価で販売しているのに加え、聖域から素材となる薬草類を購入して、国内の薬師や錬金術師による生産を順調に進めている事が理由だった。
騎士団や魔法師団に回復魔法の使い手はいるが、数が少ないため大小様々な怪我をした大量の避難者に対応出来ない。
それ故にポーションを大量に持ってきている。
そのポーションを惜しげもなく逃げてきた怪我人に使えるのは、騎士団が魔物に無双状態だからこそだろう。
「はっ!」
「どりゃ!」
「押し返せぇー!」
ハルバードの一振り、剣の一振りで魔物を葬り、盾で殴りつける。
ロマリア王国の近衛騎士団も負けていない。
まるで競い合うかのように魔物を殲滅していく。
「……俺は夢でも見ているのか」
ただ、シドニアとの国境を領地とするロマリア王国の貴族家の騎士達は、その光景を信じられないでいた。
「これが俺達と同じ騎士だと言うのか」
バーキラ王国では、近衛騎士団だけじゃなく、国王派の貴族家の騎士団が聖域騎士団との合同訓練に参加していたが、流石にロマリア王国からは、近衛騎士団だけだった。
それにバーキラ王国の近衛騎士団や国王派貴族の騎士団の装備は聖域から購入したものだ。その性能はロマリア王国の辺境を護る騎士達とは比べものにならない。
その騎士団の圧倒的な実力だけじゃなく、馬もなく走る馬車よりもはるかに大きい鉄の箱――陸戦艇サラマンダーの存在にも驚いていた。
当初、自分達だけでは支えきれないと、悲壮な覚悟で魔物を押し込めていたが、陸戦艇に乗ったロマリアの近衛騎士団が到着してから、戦況は劇的に好転した。
さらに同盟国バーキラ王国からの援軍が到着すると、その圧倒的な戦力で前線を押し上げ始めている。
「俺達も負けていられるかぁ!」
自分達の領地は自分達で守るんだと、辺境の騎士達は気合いを入れる。
「おい、おい、何だアレ。凄えじゃねぇか」
「誰も彼もデタラメに強え」
ロマリア王国で活動する冒険者も、緊急依頼で集まっていたが、ロマリア王国近衛騎士団とバーキラ王国近衛騎士団及び国王派貴族家の騎士団の圧倒的な力に驚いている。
「盾を並べよぉ!」
「「「「オウ!」」」」
ドンッ!!
密度の高い魔物の群れに対し、ロマリア王国の騎士団が小隊長の号令で密集陣形で盾を並べ、息の合ったシールドバッシュを繰り出すと、魔物の塊は粉砕されはね返される。
「十歩前へ進め!」
「「「「オウ!」」」」
騎士団は魔物を蹴散らし前へと進み、前線を押し上げる。
「仲間と避難者に当てるなよ! 狙い定め……撃てぇ!」
今度は陸戦艇サラマンダーの上に陣取った魔法師団が、迫り来る魔物の敵影が濃い場所へ魔法を放つ。
味方や逃げてくる人達に被害が及ばない、適切な威力の魔法を選択して放ち続ける魔法師団。魔物を押し込み前進する騎士団との連携で、周辺の魔物は急速に数を減らしていく。
前線では、魔物を蹴散らしていた部隊が後続の部隊とスイッチする。
いくらレベルが上がって身体能力が高くなったとはいえ、ずっと戦い続ければ精神的にも肉体的にも疲労してしまう。
そのため、適度な間隔で前線で暴れる部隊が交代していく。
交代した部隊は少しの休憩の後、後方支援を行い、そしてまた前線へと向かう。
この一定の時間でローテーションしていく方法を見た冒険者や他の騎士団も次第に真似をし始め、一層安定して戦えるようになっていく。
「無理をするなよ! まだまだ先は長い! 確実に数を減らす事を徹底しろ!」
地元の騎士団や冒険者をフォローしながら、着実に魔物を殲滅するロマリア王国近衛騎士団とバーキラ王国からの援軍。
そのお陰もあって、地元の騎士団や冒険者も何とか崩れず、やがて有利に戦闘を進め始める。
「一部隊は、遊撃で散らばった魔物の殲滅を! ロマリアの騎士団と連携するんだ!」
「はっ!」
ギルフォードの指示で、精鋭の小隊が遊撃に回り始めると、ロマリアとシドニアとの国境付近での戦いは終息し始める。
溢れ出した魔物も無限ではない。
溜め込まれた悪意はやがて勢いをなくしていった。
ただ、この場にいる誰もの顔に安堵の笑顔はない。
前線を押し上げ、シドニア中心部へと少し進んだだけで、目を覆いたくなる惨状が広がっていた。
4 大陸の中心に降り注ぐ光
一見優位に戦いを進めているロマリア王国とバーキラ王国の連合軍だが、その反面、指揮官達の表情は険しい。
今まで殲滅してきた魔物は、数は多いが言ってみれば前座のようなものだ。
斥候から上がってくる報せには、強力な個体が進行中との情報があった。
今なら竜種でも倒せる自信はあるが、自分達以外の地元の貴族家の騎士団や冒険者には、大きな被害が出るだろう。
「あ、あれは……」
「おお! あれは、イルマ殿か!」
旧シドニア神皇国全土を覆うように、光の柱が天へと立ち上がる。
ギルフォードやバーキラ王国の騎士達とロマリアの騎士達は、この光に見覚えがあった。
未開地でのトリアリア王国とシドニア神皇国対バーキラ王国、ロマリア王国、ユグル王国の三ヶ国同盟との戦争時に同じ光を見ている。
しかし、今目の前の光景は、以前とは比べものにならないほど大規模だった。
「ギルフォード殿、魔物の動きが鈍っていますぞ!」
「ああ。これでアンデッドの発生を心配せずに済む。何より、冒険者達の被害を減らせる」
溢れ出た魔物が悉く聖なる光に弱点を持つ事に、ギルフォードはその歪さを改めて感じる。魔物の大半は獰猛で人間を襲うものだが、臆病な魔物や比較的穏やかな魔物、知能の高い魔物も存在する。苦手にする属性も様々なのが普通だ。
それが例外なく光属性を弱点にするなど、この魔物達が作為的に造られたと言っているようなものだ。
通常のスタンピードとは明らかに違う。
「前線を押し上げるぞ! 隊列を組み直せ! 食事を交代で摂り次第、攻勢をかけるぞ!」
「「「オオォォーー!!」」」
バーキラ王国とロマリア王国の連合軍が、本格的にシドニア側へと行軍を始める。
ギルフォードは、この魔物の氾濫に違和感を覚えながら、陸戦艇サラマンダーに乗り込んだ。
◇
サマンドール王国の国境付近は酷い被害だった。
サンダーボルトによる強襲により、滑走路を確保してガルーダが着陸、陸戦艇サラマンダーと聖域騎士団、聖域魔法師団の活躍で、国境付近での魔物との戦闘は落ち着いた。
僕――タクミは、全ての魔物が光属性魔法に弱点を持つ事が分かると、皆んなと手分けして準備に取り掛かった。
レーヴァが地図を持ち、ドラゴンフライを全速力で予定地点へと向かわせる。
ウラノスよりもさらに高速飛行が可能なドラゴンフライなら、大陸中央部に位置してはいても、国土面積が最も小さな国だった旧シドニア神皇国を一周するのに時間はかからない。
同じく反対周りから魔導具を設置するウラノスのアカネとルルちゃんも、直ぐに戻ってくるだろう。
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