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第6部 飛び立つ勇気
1-6やっぱり家族って言わなくても伝わるものなんだね
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夜、実家のダイニングのテーブルで、家族三人で鍋を囲んでいた。今夜は、黒毛和牛を使った、超豪華なすき焼きだった。霜降りの肉に、たっぷりの野菜、炊き立てのご飯。鍋はぐつぐつと音を立て、タレの甘い香りが漂ってくる。
目の前の取り皿の、といた卵も、とても美味しそうだ。テーブルの上には、おせちの残りなども並んでおり、食べ物で埋め尽くされていた。普段は、パン二、三個と水だけなので、向こうでは考えられないほどの、贅沢な夕食だ。
見ているだけで美味しそうで、いつもなら、待ちきれない状態だったと思う。でも、今の私は、あまり食欲がなかった。
色んな考えや、強い想いが、頭の中に渦巻いていたからだ。それに、どう両親に伝えていいか、まだ、考え中だった。昔から、難しい話や説明するのは、物凄く苦手なので、上手く言葉にできる、自信がない。
それに、せっかく、仲直りできたばかりなのに。また、揉めるようなことは、絶対にしたくない。でも、私の中の想いは、どんどん強くなる一方だった。
帰りたい……今すぐに。私のいる場所は、ここじゃない――。今すぐに、やらなければならないことが、一杯ある。一分一秒でも早く、向こうの世界に帰らないと……。
「ほら、風歌。もう、肉も野菜も煮えてるぞ。早く食べなさい」
「えっ――あぁ、うん。ありがとう」
お父さん声を掛けられ、ハッと我に返る。私は箸を伸ばし、肉と野菜を取り皿に入れた。つやつやの卵が絡んで、とても美味しそうだ。でも、私は箸をそっと置いた。
大きく息を吸い込むと、
「あの……私、二人に話があるんだけど――」
意を決して、声をかける。
すると、二人も箸を止め、こちらに視線を向けてきた。
「あのね……私、明日の夜行便で、向こうに帰ろうと思うんだ」
私の言葉に、一瞬、時間が止まったかのように、静まり返った。
「って、急にどうしたんだ?! 仕事は、六日まで休みなんだろ? まだ、時間はあるんだし。もっと、のんびりすれば、いいじゃないか?」
お父さんは、あからさまに、驚いた表情を浮かべて答えた。だが、お母さんは、何事もなかったかのように、再び箸を動かし始める。
「その、物凄く身勝手なことをしたのに、優しく受け入れてもらって。本当に、二人には、心から感謝してる。でもね、今は、ここでのんびりしている場合じゃない、って思うんだ」
「一秒でも早く帰って、勉強したい。そして、絶対に昇級して、一人前になりたい。今の私には、それしか、考えられないんだ。日に日に、その気持ちが、大きくなっていて――」
今の私には、やるべきことが有る。一瞬たりとも、立ち止まっていたくない。夢に向かって、常に進み続けていたいのだ。こっちに来てからの、違和感や不安は、その歩みを、止めてしまったからだと思う。
「確かに、勉強や仕事も、大切かも知れないが。お正月ぐらい、のんびり休んでもいいだろう? 今まで、苦労してやって来たんだから、たまには休まないと」
お父さんの表情を見れば、本気で心配してくれているのが分かる。
「ありがとう、お父さん。でも、もう十分に休めたから。こっちの世界は、とても楽しいし、物凄く恵まれていて。向こうの、ギリギリの生活のとは、大違い。ただ、幸せ過ぎて、ずっといたら、私ダメになっちゃいそう」
「やっぱり、厳しくて、大変な生活で、適度な緊張感があるほうが、私には、いいみたい。それに、きっと、こうしている間にも、他の子たちは、頑張ってるはずだから。私だけ、のんびりしている訳には、行かないよ」
シルフィード業界は、とても華々しい世界だ。でも、その裏側は、物凄い競争社会だった。夢見がちな私だって、さすがにその大変さは、理解している。
今までは、見習いだったから、ある程度、自由にやって来れた。でも、今年からは、私も一人前だ。もし、ファンが付かなかったり、仕事がとれなかったら、引退も考えなければならなくなる。
これからはもう、完全な競争社会の中に、身を置かなければならない。昇級が近づくにつれ、そのプレッシャーも、どんどん大きくなって来ていた。
「それも、分かるが。一日や二日で、変わりはしないだろ? いい仕事をするには、リフレッシュも大切だし。母さんからも、言ってやってくれないか?」
お父さんが声を掛けると、お母さんは手を止め、ゆっくりとお茶を飲む。
しばらくして、
「本人が、そう言ってるなら、それでいいでしょ」
全く表情を変えずに、あっさりと答えた。
「いや、しかしだな……」
「でも、帰るなら夜じゃなくて、昼間にしなさい」
ようやく、こちらに視線を向けて来る。
「えっ? でも、通常便は、お金かかるから」
「それぐらい、出すわよ。お父さん、すぐに、予約を入れてちょうだい」
「えっ、しかし――? うっ、あぁ……」
お父さんは、お母さんに鋭い視線を向けられると、慌ててスマホを手に取って、操作を始めた。
「でも、本当にいいの? 私、とんでもなく酷いことをして、謝りに来て。今回のことも、凄く身勝手だと、分かってるから。せめて、交通費ぐらい、自分で出さないと」
「何を今さら。風歌が身勝手なのは、昔からでしょ? それとも、こんな短期間で、全てが改善して、立派な人間になったとでも、思ってるの?」
「うぐっ――。そ、それは、さすがに思ってませんが……」
うーん。相変わらず、言い方がきっつい。まぁ、事実だから、しょうがないんだけど。少しは大人になったとか、周りを考えられるようになったとか、思ってた。でも、結局、最後は、自分のわがままを、押し通しちゃってるんだよね。
はぁー。私って、まだまだ、子供だなぁ――。
「まぁ、最初から、こうなることは、分かってたわよ。毎日、心ここにあらずな感じだったし。どうせ、ずっと向こうの世界のことを、考えていたのでしょ?」
「えっ……何でそれを?」
「あんたの親を、何年やってると思ってるの? それに、顔や態度に出やすいのは、昔から、何も変わってないじゃない」
「んがっ――」
かなり、気を付けてたつもりなんだけど。やっぱり、出ちゃってたのかぁ。というか、お母さんが、鋭すぎるだけな気がするけど。
「風歌、空きの席あるけど、十三時の便で大丈夫か?」
「うん。ありがとう、お父さん」
「よし。ちゃんと、十三時に、予約を入れておいたぞ」
お父さんは、スマホの画面を、私に見せてきた。すると、それは『特急便』のチケットの、予約画面だった。
「えぇっ?! 高いから、通常便でいいのに」
「気にするな。来る時も、特急便に乗って来たんだろ? あと、明日は、空港まで車を出すからな」
「途中で、お土産も、たくさん買わなければならないから。早目に出ないとダメよ」
「じゃあ、九時には家を出るか。そうすれば、ゆっくりお土産も選べるし」
私抜きで、二人で話し合って、どんどん段取りを進めて行く。何だかんだで、あれやこれやと、盛り上がっている。あまりに、とんとん拍子で話が進んで、私は呆気に取られていた。
「あ……あの。お父さん、お母さん、本当にありがとう。何から何までして貰って、なんとお礼を言っていいか」
本来なら、家に入れてもらえなくても、しょうがないと思ってた。同意書にサインをして貰ったことですら、奇跡に近い。なのに、ここまで、やってもらえるだなんて、想像もしていなかった。
「いいんだよ、風歌。家族なんだから、応援するのは当然だろ。なぁ、母さん」
「私はまだ、応援するとは、決めてないわよ。あくまで、様子見だから」
お母さんは、淡々と答える。相変わらず厳しいけど、それは正論だ。まだ、何の実績もないんだから。
「母さん、それはいくら何でも、厳し過ぎないか?」
「そんなことは、どうでもいいから、さっさと食べなさい。片付かないでしょ。風歌も、ボーッとしてないで、食事が終わったら、すぐに、帰り支度をしなさい」
「はい――」
私は素直に答え、食事を再開する。
お母さんの厳しい言動は、以前と何も変わっていない。昔なら反論したり、不機嫌になっていたはずだ。でも、今はその厳しい言葉が、むしろ、心地よく聴こえる。それが、私に対する、エールに思えたからだ。
お父さん、お母さん、本当にありがとう。今は、まだまだ子供だし、何もできないかもしれないけど。いつか必ず、本物の一人前の、立派な大人になるよ。
たぶん、私にできる最大の恩返しは、私が一人前になって、心の底から、認めてもらえるようになる事だと思うから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『大きな決意を胸に秘めた二度目の旅立ち』
君たちが歩む道は、過去の遺産からの旅立ちだ
目の前の取り皿の、といた卵も、とても美味しそうだ。テーブルの上には、おせちの残りなども並んでおり、食べ物で埋め尽くされていた。普段は、パン二、三個と水だけなので、向こうでは考えられないほどの、贅沢な夕食だ。
見ているだけで美味しそうで、いつもなら、待ちきれない状態だったと思う。でも、今の私は、あまり食欲がなかった。
色んな考えや、強い想いが、頭の中に渦巻いていたからだ。それに、どう両親に伝えていいか、まだ、考え中だった。昔から、難しい話や説明するのは、物凄く苦手なので、上手く言葉にできる、自信がない。
それに、せっかく、仲直りできたばかりなのに。また、揉めるようなことは、絶対にしたくない。でも、私の中の想いは、どんどん強くなる一方だった。
帰りたい……今すぐに。私のいる場所は、ここじゃない――。今すぐに、やらなければならないことが、一杯ある。一分一秒でも早く、向こうの世界に帰らないと……。
「ほら、風歌。もう、肉も野菜も煮えてるぞ。早く食べなさい」
「えっ――あぁ、うん。ありがとう」
お父さん声を掛けられ、ハッと我に返る。私は箸を伸ばし、肉と野菜を取り皿に入れた。つやつやの卵が絡んで、とても美味しそうだ。でも、私は箸をそっと置いた。
大きく息を吸い込むと、
「あの……私、二人に話があるんだけど――」
意を決して、声をかける。
すると、二人も箸を止め、こちらに視線を向けてきた。
「あのね……私、明日の夜行便で、向こうに帰ろうと思うんだ」
私の言葉に、一瞬、時間が止まったかのように、静まり返った。
「って、急にどうしたんだ?! 仕事は、六日まで休みなんだろ? まだ、時間はあるんだし。もっと、のんびりすれば、いいじゃないか?」
お父さんは、あからさまに、驚いた表情を浮かべて答えた。だが、お母さんは、何事もなかったかのように、再び箸を動かし始める。
「その、物凄く身勝手なことをしたのに、優しく受け入れてもらって。本当に、二人には、心から感謝してる。でもね、今は、ここでのんびりしている場合じゃない、って思うんだ」
「一秒でも早く帰って、勉強したい。そして、絶対に昇級して、一人前になりたい。今の私には、それしか、考えられないんだ。日に日に、その気持ちが、大きくなっていて――」
今の私には、やるべきことが有る。一瞬たりとも、立ち止まっていたくない。夢に向かって、常に進み続けていたいのだ。こっちに来てからの、違和感や不安は、その歩みを、止めてしまったからだと思う。
「確かに、勉強や仕事も、大切かも知れないが。お正月ぐらい、のんびり休んでもいいだろう? 今まで、苦労してやって来たんだから、たまには休まないと」
お父さんの表情を見れば、本気で心配してくれているのが分かる。
「ありがとう、お父さん。でも、もう十分に休めたから。こっちの世界は、とても楽しいし、物凄く恵まれていて。向こうの、ギリギリの生活のとは、大違い。ただ、幸せ過ぎて、ずっといたら、私ダメになっちゃいそう」
「やっぱり、厳しくて、大変な生活で、適度な緊張感があるほうが、私には、いいみたい。それに、きっと、こうしている間にも、他の子たちは、頑張ってるはずだから。私だけ、のんびりしている訳には、行かないよ」
シルフィード業界は、とても華々しい世界だ。でも、その裏側は、物凄い競争社会だった。夢見がちな私だって、さすがにその大変さは、理解している。
今までは、見習いだったから、ある程度、自由にやって来れた。でも、今年からは、私も一人前だ。もし、ファンが付かなかったり、仕事がとれなかったら、引退も考えなければならなくなる。
これからはもう、完全な競争社会の中に、身を置かなければならない。昇級が近づくにつれ、そのプレッシャーも、どんどん大きくなって来ていた。
「それも、分かるが。一日や二日で、変わりはしないだろ? いい仕事をするには、リフレッシュも大切だし。母さんからも、言ってやってくれないか?」
お父さんが声を掛けると、お母さんは手を止め、ゆっくりとお茶を飲む。
しばらくして、
「本人が、そう言ってるなら、それでいいでしょ」
全く表情を変えずに、あっさりと答えた。
「いや、しかしだな……」
「でも、帰るなら夜じゃなくて、昼間にしなさい」
ようやく、こちらに視線を向けて来る。
「えっ? でも、通常便は、お金かかるから」
「それぐらい、出すわよ。お父さん、すぐに、予約を入れてちょうだい」
「えっ、しかし――? うっ、あぁ……」
お父さんは、お母さんに鋭い視線を向けられると、慌ててスマホを手に取って、操作を始めた。
「でも、本当にいいの? 私、とんでもなく酷いことをして、謝りに来て。今回のことも、凄く身勝手だと、分かってるから。せめて、交通費ぐらい、自分で出さないと」
「何を今さら。風歌が身勝手なのは、昔からでしょ? それとも、こんな短期間で、全てが改善して、立派な人間になったとでも、思ってるの?」
「うぐっ――。そ、それは、さすがに思ってませんが……」
うーん。相変わらず、言い方がきっつい。まぁ、事実だから、しょうがないんだけど。少しは大人になったとか、周りを考えられるようになったとか、思ってた。でも、結局、最後は、自分のわがままを、押し通しちゃってるんだよね。
はぁー。私って、まだまだ、子供だなぁ――。
「まぁ、最初から、こうなることは、分かってたわよ。毎日、心ここにあらずな感じだったし。どうせ、ずっと向こうの世界のことを、考えていたのでしょ?」
「えっ……何でそれを?」
「あんたの親を、何年やってると思ってるの? それに、顔や態度に出やすいのは、昔から、何も変わってないじゃない」
「んがっ――」
かなり、気を付けてたつもりなんだけど。やっぱり、出ちゃってたのかぁ。というか、お母さんが、鋭すぎるだけな気がするけど。
「風歌、空きの席あるけど、十三時の便で大丈夫か?」
「うん。ありがとう、お父さん」
「よし。ちゃんと、十三時に、予約を入れておいたぞ」
お父さんは、スマホの画面を、私に見せてきた。すると、それは『特急便』のチケットの、予約画面だった。
「えぇっ?! 高いから、通常便でいいのに」
「気にするな。来る時も、特急便に乗って来たんだろ? あと、明日は、空港まで車を出すからな」
「途中で、お土産も、たくさん買わなければならないから。早目に出ないとダメよ」
「じゃあ、九時には家を出るか。そうすれば、ゆっくりお土産も選べるし」
私抜きで、二人で話し合って、どんどん段取りを進めて行く。何だかんだで、あれやこれやと、盛り上がっている。あまりに、とんとん拍子で話が進んで、私は呆気に取られていた。
「あ……あの。お父さん、お母さん、本当にありがとう。何から何までして貰って、なんとお礼を言っていいか」
本来なら、家に入れてもらえなくても、しょうがないと思ってた。同意書にサインをして貰ったことですら、奇跡に近い。なのに、ここまで、やってもらえるだなんて、想像もしていなかった。
「いいんだよ、風歌。家族なんだから、応援するのは当然だろ。なぁ、母さん」
「私はまだ、応援するとは、決めてないわよ。あくまで、様子見だから」
お母さんは、淡々と答える。相変わらず厳しいけど、それは正論だ。まだ、何の実績もないんだから。
「母さん、それはいくら何でも、厳し過ぎないか?」
「そんなことは、どうでもいいから、さっさと食べなさい。片付かないでしょ。風歌も、ボーッとしてないで、食事が終わったら、すぐに、帰り支度をしなさい」
「はい――」
私は素直に答え、食事を再開する。
お母さんの厳しい言動は、以前と何も変わっていない。昔なら反論したり、不機嫌になっていたはずだ。でも、今はその厳しい言葉が、むしろ、心地よく聴こえる。それが、私に対する、エールに思えたからだ。
お父さん、お母さん、本当にありがとう。今は、まだまだ子供だし、何もできないかもしれないけど。いつか必ず、本物の一人前の、立派な大人になるよ。
たぶん、私にできる最大の恩返しは、私が一人前になって、心の底から、認めてもらえるようになる事だと思うから……。
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