206 / 363
第5部 厳しさにこめられた優しい想い
5-8一人前になってもこの三人の友情は変わらないだろうか?
しおりを挟む
二十八日の夜。私は〈東地区〉にある、イタリアン・レストラン〈アクアマリン〉に来ていた。今日は、恒例の女子会だけど、特別な意味がある。明日、行われる『送迎祭』の、前夜祭だからだ。
明日の『送迎祭』は、朝からずっと、お祭り騒ぎになる。なのに、しっかり『前夜祭』でも、本番さながらに、盛り上がっていた。これは、この町の、古くからの伝統だ。お祭り好きの私にとっては、凄く素敵な習慣だと思う。
町中のレストランや飲食店は、どこも『前夜祭』のお客さんで、満席だった。最近は、地元の人だけではなく、大陸や向こうの世界から来た人たちも、この前夜祭に参加しているらしい。
あと〈グリュンノア〉の年越し行事は、世界的にも有名だ。わざわざ、年越しのために、この町に来る観光客も、非常に多かった。そのため、人の数が一気に増え、町中がお祭りムード一色に染まり、大変な活気に包まれていた。
普段でも、観光客の人たちで、盛り上がっているけど。今日は、どこもかしこも人だらけ。尋常じゃない数の人たちが、町中にひしめいていた。『魔法祭』の時と同じか、場合によっては、それ以上の、観光客の人たちが訪れるらしい。
年間を通しても、最大級のイベントだ。でも、明日の『送迎祭』が終われば、しばらくは、のんびりなんだよね。というのも、三十日が『仕事納め』だからだ。
シルフィード業界は『三十一日』から翌年の『六日』までは、協会のルールで、丸々一週間、お休みになっている。私たち見習いには、あまり関係ないけど。人気シルフィードたちは、年に一度ゆっくり休める、非常に貴重な期間だ。
私は、家にいても、何もやることないし。できれば、仕事をしてたいんだけどね。でも〈ホワイト・ウイング〉も、一週間、完全に閉めちゃうんだって。
まぁ、街をウロウロするのもいいけど。外は凄く寒いし。屋根裏で、ゴロゴロしているのも、暇なんで。年末年始、どう過ごすかは、まだ決めていなかった。あとで、ユメちゃんにでも、相談してみようかな……。
ちなみに、今座っているテラス席は、私たち三人が、初めて『女子会』をやった時に座った席だ。予約する時に、このテーブルを、お願いしといたんだよね。
今でも、多少の意見の対立はあるけど。この一年、とても楽しくやって来たし。私たちが親しくなる、きっかけになった、大事な場所なので。
ただ、十二月なので、外はかなり寒い。でも、相変わらず、テラス席は満席だった。会議も祝い事も、外でやるのが、この町の伝統だからだ。
でも、テラス席には『ACS』が付いているので、そんなに寒くはなかった。これは『エア・コントロール・システム』のことで、周囲に『マナ・フィールド』を展開して、温風を発生させるものだ。もちろん、夏なら、冷風を流すこともできる。
区切られたフィールドなので、外でも思ったより温まるだよね。あと、透過型フィールドなので、普通に通り抜けられるし、風もある程度は入って来る。なので、外にいる感覚も、普通に味わうことができた。
ま、寒いのは変わらないけど、我慢できる程度にはなる。向こうの世界にはない、とても便利な装置だ。やっぱり、魔法って便利だよねぇ。
食事が一段落して、デザートが来たところで、私は会話を始める。もっとも、フィニーちゃんは、コース以外で注文した、大盛りデザートを食べるのに、夢中になっていた。
この寒いのに、なぜか、特大の『デラックス・パフェ』を食べている。見てるだけで、体が冷えて来そうだ……。
「それにしても、一年って、あっという間だよねぇ。私がこっちに来てから、もう九ヶ月になるんだもんね」
「一年なんて、そんなものよ。だからこそ、計画が大事なのよ」
いかにも、ナギサちゃんらしい、真面目な答えだった。
「まぁ、そうなんだけど。私の場合は、知らないことだらけで、計画どころじゃなかったよ。毎日が新しい経験の連続で、まるで、冒険してるみたいな感じだったもん」
二つの世界は、とても似ている部分が多い。異世界と言っても、同じ地球が、別の方向に発展した『並行世界』だからだ。でも、文化や習慣、特に魔法に関する知識などは、全く違うものだった。
最初は、魔法機械を使うたびに、滅茶苦茶、驚いてた。でも、今じゃ、ごく当たり前になっている。空を飛ぶのも、光が宙に浮いてるのも、まるで、生まれた時からの、常識のように感じている。どんなことでも、慣れるもんだよね。
「確かに、知らない世界に来たのだから、しょうがない部分もあるけど。風歌は、根本的に、勉強不足なのよ」
「んがっ……。私も、かなり勉強してるもん。覚えることが、多すぎるだけで」
実際、こっちに来てから、すっごく勉強したよね。この九ヵ月で、小中学校の時の数倍、勉強に時間を費やしてきた。
「やってれば、そのうち覚える。勉強はいらない」
特大パフェを食べていた、フィニーちゃんが、ボソッと呟く。
「そんな訳ないでしょ! 勉強しなければ、大事なことは、何も覚えられないわよ」
「そんなことない。勉強はおまけ」
まぁ、勉強が大事なのも、経験が大事なのも、どちらも一理ある。私は、ずっと経験だけで生きて来たから、フィニーちゃん派だ。でも、今では、勉強の大切さを痛感している。一流のシルフィードたちは、みんな、物凄く勉強しているからだ。
リリーシャさんの持つ、豊富な知識や礼儀作法なども、間違いなく、勉強で得た知識だと思う。そもそも、シルフィード学校時代は、首席だったみたいだし。
「フィニーツァは、勉強も仕事も、もう少し、真剣に取り組みなさいよ」
「ほどほどに、やってる。楽しくやるほうが、大事」
いつものことだけど、二人の意見は、見事にすれ違い続ける。価値観が、極端に違うから、一生、意見は合わないと思う。でも、何だかんだで、仲はいいんだよねぇ。もし、本当に嫌いなら、毎度、一緒にいるわけないし。
そもそも、ナギサちゃんもフィニーちゃんも、好き嫌いが、物凄くハッキリしている。それに、自分の主張は、絶対に曲げない性格だ。だから、衝突は避けられない。
「まぁまぁ、前夜祭なんだから、楽しくやろうよ。明日はもう、年越しなんだから」
取りあえず、いつも通り、止めに入る。
「でも、明日の『送迎祭』で、大騒ぎするのに。今日も、凄い大盛況だよね。やっぱり、翌朝まで、ワイワイやってるのかな?」
「ほとんどの人は、そうでしょうね。むしろ、前夜祭のほうが、好きな人もいるぐらいだから」
「この町の人たちは、本当にタフだよねぇ。お祭りのたびに、何日も宴会をやったり、徹夜したりとか。それでいて、しっかり仕事もしてるんだから」
この町は、ただでさえイベントが多いのに、前夜祭も、しっかりやっている。後夜祭は任意だけど、やっぱり、やる人が多いみたいだ。結局『前夜祭』『本番』『後夜祭』の三つを、一つのイベントでやるんだよね。
「非効率的だとは思うけど。この町の伝統なのだから、しょうがないわ。伝統とは、ちゃんとした、歴史的な理由があり、受け継いでいくものなのよ」
真面目なナギサちゃんでも、イベントやお祭りごとには、必ず参加している。それは、伝統を大事にしているからなんだね。
「それって、仕事が終わったあと、毎晩みんなで、宴会をやってたって話?」
「おぉっ、毎晩、おまつり! 食べ放題!」
フィニーちゃんが、激しく反応した。相変わらず、食べ物の部分にだけは、食い付いてくる。でも、毎晩、宴会なんて、凄く楽しそうだよね。
「宴会というほど、立派なものではないわ。昔は何もなかったし。ただ、あり合わせのものを持ち寄って、皆で食事をしていただけよ。会議なども、含めてね」
「昔は、本当に、貧しい町だったのよ。それでも、色々と工夫をして、力を合わせながら、お祭りなども開くようになった。どれも、今に比べれば、とても地味なものだったけどね」
ナギサちゃんは、お茶を飲みながら、淡々と説明する。
「でも、凄いよね。ただの無人島が、ここまで大都会になるなんて。それに、毎月、お祭りをやってる町なんて、ここぐらいだもんねぇ」
「全ては、先人たちのお蔭。だから、全てのお祭りやイベントも。こういった、前夜祭などの習慣も、馬鹿にはできないのよ」
そう言われてみると、ちょっと厳粛な気持ちになる。
「昔の人、単にたのしいから、お祭りやってただけ」
「そんな訳ないでしょ! 色んな想いや願いがあったのよ」
「お祭りは、たのしければいい」
「違うわよ。神聖な儀式から始まったものも、多いのだから」
またしても、二人がぶつかり合う。どちらも、正論だと思うんだけどね。
「どっちも、同じぐらい大事だよ。私のいた向こうの世界だって、元は神事だったのが、楽しいお祭りに、変わったものもあるし。時代によって、変わっていくのは、しょうがないんじゃないかな?」
「みんなが、楽しいからやってるのは、今も昔も同じだと思う。でも、今の人だって、神聖な気持ちや、感謝の気持なんかは、ちゃんと持ってるよ」
向こうの世界も、年末年始のイベントは、みんな楽しくてやってたもんね。でも、お参りに行く時だけは、妙に信心深い気持ちなったりとか。まぁ、今の人は、大体そんな感じだよね。
「それにしても、変わらないよねぇ、二人とも」
「何がよ?」
「ん?」
二人とも、不思議そうな表情で、私に視線を向けて来る。
「覚えてる? 私たち三人が、初めて顔合わせした日のこと? その日も、ここと同じテーブルだったんだよ」
私は、今でもあの日の出来事は、鮮明に覚えている。二人とも、物凄くぎくしゃくしてて、途中、かなり気まずくなった記憶がある――。
「……そういえば、そんなことも、有ったわね」
「言われてみれば、ここだったかも」
二人とも、周囲を確認したあと、静かに答える。
「あの時は、大変だったよ。二人とも、完全に意見が対立してて。でも、何だかんだで、今はとっても仲良しだもんね」
私は、二人とも大好きだから、二人が仲良くしてくれるのは、凄く嬉しい。
「はっ?! ただの腐れ縁よ」
「仲良くない――ふつう」
そして、この反応である。いやいや、どう考えたって、仲いいでしょ? 仲がいいから、遠慮なく、言いたいことが言えるんじゃん? まぁ、ナギサちゃんは、素直じゃないから、認めないだろうし。フィニーちゃんは、気付いてないだけかも。
「私たち、今年一年の間に、何回、一緒に行動したか覚えてる? お茶に行ったり、イベントに行ったり、一緒に色々準備したり」
二人とも黙り込む。
「向こうの世界でも、そうだったけど。本当に、仲のいい友達って、腐れ縁なんだと思う。あと、本当に身近で大事な人ほど、普通に思えるんじゃないかな? 一緒にいるのが当り前な、まるで、家族みたいな感じで」
私にとって、二人は、大事な親友であると共に、家族のような存在でもあった。いて欲しい時に、いつもいてくれる。そんな、当たり前な存在になっていた。
考えてみたら、学生時代に仲のよかった子たちも、そんな感じだったかな。特別『仲がいい』って、意識してたわけじゃなくて。気付いたら、いつも一緒にいるのが、当り前で。
「来年も、また、その次の年も。私たち、ずっと、一緒にいられるといいね」
私は、笑顔で二人に声を掛ける。
だが、ナギサちゃんは、顔を横に向け、フィニーちゃんは、黙々とパフェを食べ続ける。
って、ここ、超重要なところなのに! ちょっと、その反応は何? まぁ、いつもの二人らしいと言えば、らしいけど……。なかなか、こういう踏み込んだ話題には、乗ってくれない。
「そもそも、来年からは、私たち一人前なのよ。一人前になったら、毎日、お客様の対応をして。もう、練習なんか、している暇ないのだから。分かってるの?」
ナギサちゃんは、咳払いのあと、厳しい表情で話した。
「それは、分かってるけど。一緒にお茶したり、ご飯食べたり、できるじゃない?」
「ご飯! ご飯は、いつでも食べにいく」
こう言うところだけ、しっかり、フィニーちゃんが反応する。
「まぁ、何にしても、私たちが自由にできる、最後のイベントなのよ、今日は。それを、よく覚えておきなさいよ」
ナギサちゃんは、サラッと言い放つ。
確かに、ナギサちゃんの、言う通りなのかもしれない。もう、来年からは、私も一人前になるんだ。自由に練習したり、自由に友達に会ったりも、できなくなっちゃうんだよね。別の会社なら、なおのこと、会う機会が減ってしまう。
ずっと、一人前になることを、望んでいたはずなのに。何だか、ちょっぴり寂しい気がして。もうしばらく、このままでもいいかな、何て思ってしまう――。
「そんなの、関係ない。私は、来年も自由にやる」
「何言ってるの? そんなの、出来るわけないでしょ!」
「シルフィードは、風のように、自由な仕事。だから選んだ」
「逆でしょ。シルフィードは規律正しい、誰もが尊敬する存在なのよ」
やっぱり、二人の価値観は、正反対だ。でも、どっちも、一理あると思う。というか、シルフィードが、どうこうというより、二人の考え方の違いだよね。実際、色んなシルフィードがいるわけだし。
「あははっ、やっぱ変わらなよね。きっと、二人は永遠に変わらない気がする」
「どういう意味よ?」
ナギサちゃんは、複雑な表情を浮かべる。
「来年も、再来年も、十年後も。二人とも『今と同じ感じかなのかなぁー』って思って。もちろん、いい意味でね」
二人が、今と違う性格になっているイメージが、全くわいてこない。
「風歌に言われると、何か、イラッとするわね……」
「んがっ――。何でー?」
徹底して、規律を守るナギサちゃん。全てにおいて、自由なフィニーちゃん。この二人は、今後も変わらないだろう。まぁ、そのほうが、らしくていいけどね。
でも、私は、どうなんだろう? 生活環境が変わって、色々成長したかと思ったけど。性格とか価値観は、ほぼ昔のままだ。相変わらず、勢い重視だし、深いことは考えないし。人って、そう簡単には、変わらないもんだよね。
一人前になれば、少しは大人になるのかな? それとも、一生、この性格のままだったり?
先のことは、まだ、よく分からない。ただ、色んなものが、時と共に、少しずつ変わっていくはずだ。
でも、この三人の関係だけは、永遠に変わらないでいて欲しいなぁ……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『異世界で初めての年越しイベントは最高にハッピーだった』
みんな一緒の未来が、きっと私の…ウルトラハッピーなんだって
明日の『送迎祭』は、朝からずっと、お祭り騒ぎになる。なのに、しっかり『前夜祭』でも、本番さながらに、盛り上がっていた。これは、この町の、古くからの伝統だ。お祭り好きの私にとっては、凄く素敵な習慣だと思う。
町中のレストランや飲食店は、どこも『前夜祭』のお客さんで、満席だった。最近は、地元の人だけではなく、大陸や向こうの世界から来た人たちも、この前夜祭に参加しているらしい。
あと〈グリュンノア〉の年越し行事は、世界的にも有名だ。わざわざ、年越しのために、この町に来る観光客も、非常に多かった。そのため、人の数が一気に増え、町中がお祭りムード一色に染まり、大変な活気に包まれていた。
普段でも、観光客の人たちで、盛り上がっているけど。今日は、どこもかしこも人だらけ。尋常じゃない数の人たちが、町中にひしめいていた。『魔法祭』の時と同じか、場合によっては、それ以上の、観光客の人たちが訪れるらしい。
年間を通しても、最大級のイベントだ。でも、明日の『送迎祭』が終われば、しばらくは、のんびりなんだよね。というのも、三十日が『仕事納め』だからだ。
シルフィード業界は『三十一日』から翌年の『六日』までは、協会のルールで、丸々一週間、お休みになっている。私たち見習いには、あまり関係ないけど。人気シルフィードたちは、年に一度ゆっくり休める、非常に貴重な期間だ。
私は、家にいても、何もやることないし。できれば、仕事をしてたいんだけどね。でも〈ホワイト・ウイング〉も、一週間、完全に閉めちゃうんだって。
まぁ、街をウロウロするのもいいけど。外は凄く寒いし。屋根裏で、ゴロゴロしているのも、暇なんで。年末年始、どう過ごすかは、まだ決めていなかった。あとで、ユメちゃんにでも、相談してみようかな……。
ちなみに、今座っているテラス席は、私たち三人が、初めて『女子会』をやった時に座った席だ。予約する時に、このテーブルを、お願いしといたんだよね。
今でも、多少の意見の対立はあるけど。この一年、とても楽しくやって来たし。私たちが親しくなる、きっかけになった、大事な場所なので。
ただ、十二月なので、外はかなり寒い。でも、相変わらず、テラス席は満席だった。会議も祝い事も、外でやるのが、この町の伝統だからだ。
でも、テラス席には『ACS』が付いているので、そんなに寒くはなかった。これは『エア・コントロール・システム』のことで、周囲に『マナ・フィールド』を展開して、温風を発生させるものだ。もちろん、夏なら、冷風を流すこともできる。
区切られたフィールドなので、外でも思ったより温まるだよね。あと、透過型フィールドなので、普通に通り抜けられるし、風もある程度は入って来る。なので、外にいる感覚も、普通に味わうことができた。
ま、寒いのは変わらないけど、我慢できる程度にはなる。向こうの世界にはない、とても便利な装置だ。やっぱり、魔法って便利だよねぇ。
食事が一段落して、デザートが来たところで、私は会話を始める。もっとも、フィニーちゃんは、コース以外で注文した、大盛りデザートを食べるのに、夢中になっていた。
この寒いのに、なぜか、特大の『デラックス・パフェ』を食べている。見てるだけで、体が冷えて来そうだ……。
「それにしても、一年って、あっという間だよねぇ。私がこっちに来てから、もう九ヶ月になるんだもんね」
「一年なんて、そんなものよ。だからこそ、計画が大事なのよ」
いかにも、ナギサちゃんらしい、真面目な答えだった。
「まぁ、そうなんだけど。私の場合は、知らないことだらけで、計画どころじゃなかったよ。毎日が新しい経験の連続で、まるで、冒険してるみたいな感じだったもん」
二つの世界は、とても似ている部分が多い。異世界と言っても、同じ地球が、別の方向に発展した『並行世界』だからだ。でも、文化や習慣、特に魔法に関する知識などは、全く違うものだった。
最初は、魔法機械を使うたびに、滅茶苦茶、驚いてた。でも、今じゃ、ごく当たり前になっている。空を飛ぶのも、光が宙に浮いてるのも、まるで、生まれた時からの、常識のように感じている。どんなことでも、慣れるもんだよね。
「確かに、知らない世界に来たのだから、しょうがない部分もあるけど。風歌は、根本的に、勉強不足なのよ」
「んがっ……。私も、かなり勉強してるもん。覚えることが、多すぎるだけで」
実際、こっちに来てから、すっごく勉強したよね。この九ヵ月で、小中学校の時の数倍、勉強に時間を費やしてきた。
「やってれば、そのうち覚える。勉強はいらない」
特大パフェを食べていた、フィニーちゃんが、ボソッと呟く。
「そんな訳ないでしょ! 勉強しなければ、大事なことは、何も覚えられないわよ」
「そんなことない。勉強はおまけ」
まぁ、勉強が大事なのも、経験が大事なのも、どちらも一理ある。私は、ずっと経験だけで生きて来たから、フィニーちゃん派だ。でも、今では、勉強の大切さを痛感している。一流のシルフィードたちは、みんな、物凄く勉強しているからだ。
リリーシャさんの持つ、豊富な知識や礼儀作法なども、間違いなく、勉強で得た知識だと思う。そもそも、シルフィード学校時代は、首席だったみたいだし。
「フィニーツァは、勉強も仕事も、もう少し、真剣に取り組みなさいよ」
「ほどほどに、やってる。楽しくやるほうが、大事」
いつものことだけど、二人の意見は、見事にすれ違い続ける。価値観が、極端に違うから、一生、意見は合わないと思う。でも、何だかんだで、仲はいいんだよねぇ。もし、本当に嫌いなら、毎度、一緒にいるわけないし。
そもそも、ナギサちゃんもフィニーちゃんも、好き嫌いが、物凄くハッキリしている。それに、自分の主張は、絶対に曲げない性格だ。だから、衝突は避けられない。
「まぁまぁ、前夜祭なんだから、楽しくやろうよ。明日はもう、年越しなんだから」
取りあえず、いつも通り、止めに入る。
「でも、明日の『送迎祭』で、大騒ぎするのに。今日も、凄い大盛況だよね。やっぱり、翌朝まで、ワイワイやってるのかな?」
「ほとんどの人は、そうでしょうね。むしろ、前夜祭のほうが、好きな人もいるぐらいだから」
「この町の人たちは、本当にタフだよねぇ。お祭りのたびに、何日も宴会をやったり、徹夜したりとか。それでいて、しっかり仕事もしてるんだから」
この町は、ただでさえイベントが多いのに、前夜祭も、しっかりやっている。後夜祭は任意だけど、やっぱり、やる人が多いみたいだ。結局『前夜祭』『本番』『後夜祭』の三つを、一つのイベントでやるんだよね。
「非効率的だとは思うけど。この町の伝統なのだから、しょうがないわ。伝統とは、ちゃんとした、歴史的な理由があり、受け継いでいくものなのよ」
真面目なナギサちゃんでも、イベントやお祭りごとには、必ず参加している。それは、伝統を大事にしているからなんだね。
「それって、仕事が終わったあと、毎晩みんなで、宴会をやってたって話?」
「おぉっ、毎晩、おまつり! 食べ放題!」
フィニーちゃんが、激しく反応した。相変わらず、食べ物の部分にだけは、食い付いてくる。でも、毎晩、宴会なんて、凄く楽しそうだよね。
「宴会というほど、立派なものではないわ。昔は何もなかったし。ただ、あり合わせのものを持ち寄って、皆で食事をしていただけよ。会議なども、含めてね」
「昔は、本当に、貧しい町だったのよ。それでも、色々と工夫をして、力を合わせながら、お祭りなども開くようになった。どれも、今に比べれば、とても地味なものだったけどね」
ナギサちゃんは、お茶を飲みながら、淡々と説明する。
「でも、凄いよね。ただの無人島が、ここまで大都会になるなんて。それに、毎月、お祭りをやってる町なんて、ここぐらいだもんねぇ」
「全ては、先人たちのお蔭。だから、全てのお祭りやイベントも。こういった、前夜祭などの習慣も、馬鹿にはできないのよ」
そう言われてみると、ちょっと厳粛な気持ちになる。
「昔の人、単にたのしいから、お祭りやってただけ」
「そんな訳ないでしょ! 色んな想いや願いがあったのよ」
「お祭りは、たのしければいい」
「違うわよ。神聖な儀式から始まったものも、多いのだから」
またしても、二人がぶつかり合う。どちらも、正論だと思うんだけどね。
「どっちも、同じぐらい大事だよ。私のいた向こうの世界だって、元は神事だったのが、楽しいお祭りに、変わったものもあるし。時代によって、変わっていくのは、しょうがないんじゃないかな?」
「みんなが、楽しいからやってるのは、今も昔も同じだと思う。でも、今の人だって、神聖な気持ちや、感謝の気持なんかは、ちゃんと持ってるよ」
向こうの世界も、年末年始のイベントは、みんな楽しくてやってたもんね。でも、お参りに行く時だけは、妙に信心深い気持ちなったりとか。まぁ、今の人は、大体そんな感じだよね。
「それにしても、変わらないよねぇ、二人とも」
「何がよ?」
「ん?」
二人とも、不思議そうな表情で、私に視線を向けて来る。
「覚えてる? 私たち三人が、初めて顔合わせした日のこと? その日も、ここと同じテーブルだったんだよ」
私は、今でもあの日の出来事は、鮮明に覚えている。二人とも、物凄くぎくしゃくしてて、途中、かなり気まずくなった記憶がある――。
「……そういえば、そんなことも、有ったわね」
「言われてみれば、ここだったかも」
二人とも、周囲を確認したあと、静かに答える。
「あの時は、大変だったよ。二人とも、完全に意見が対立してて。でも、何だかんだで、今はとっても仲良しだもんね」
私は、二人とも大好きだから、二人が仲良くしてくれるのは、凄く嬉しい。
「はっ?! ただの腐れ縁よ」
「仲良くない――ふつう」
そして、この反応である。いやいや、どう考えたって、仲いいでしょ? 仲がいいから、遠慮なく、言いたいことが言えるんじゃん? まぁ、ナギサちゃんは、素直じゃないから、認めないだろうし。フィニーちゃんは、気付いてないだけかも。
「私たち、今年一年の間に、何回、一緒に行動したか覚えてる? お茶に行ったり、イベントに行ったり、一緒に色々準備したり」
二人とも黙り込む。
「向こうの世界でも、そうだったけど。本当に、仲のいい友達って、腐れ縁なんだと思う。あと、本当に身近で大事な人ほど、普通に思えるんじゃないかな? 一緒にいるのが当り前な、まるで、家族みたいな感じで」
私にとって、二人は、大事な親友であると共に、家族のような存在でもあった。いて欲しい時に、いつもいてくれる。そんな、当たり前な存在になっていた。
考えてみたら、学生時代に仲のよかった子たちも、そんな感じだったかな。特別『仲がいい』って、意識してたわけじゃなくて。気付いたら、いつも一緒にいるのが、当り前で。
「来年も、また、その次の年も。私たち、ずっと、一緒にいられるといいね」
私は、笑顔で二人に声を掛ける。
だが、ナギサちゃんは、顔を横に向け、フィニーちゃんは、黙々とパフェを食べ続ける。
って、ここ、超重要なところなのに! ちょっと、その反応は何? まぁ、いつもの二人らしいと言えば、らしいけど……。なかなか、こういう踏み込んだ話題には、乗ってくれない。
「そもそも、来年からは、私たち一人前なのよ。一人前になったら、毎日、お客様の対応をして。もう、練習なんか、している暇ないのだから。分かってるの?」
ナギサちゃんは、咳払いのあと、厳しい表情で話した。
「それは、分かってるけど。一緒にお茶したり、ご飯食べたり、できるじゃない?」
「ご飯! ご飯は、いつでも食べにいく」
こう言うところだけ、しっかり、フィニーちゃんが反応する。
「まぁ、何にしても、私たちが自由にできる、最後のイベントなのよ、今日は。それを、よく覚えておきなさいよ」
ナギサちゃんは、サラッと言い放つ。
確かに、ナギサちゃんの、言う通りなのかもしれない。もう、来年からは、私も一人前になるんだ。自由に練習したり、自由に友達に会ったりも、できなくなっちゃうんだよね。別の会社なら、なおのこと、会う機会が減ってしまう。
ずっと、一人前になることを、望んでいたはずなのに。何だか、ちょっぴり寂しい気がして。もうしばらく、このままでもいいかな、何て思ってしまう――。
「そんなの、関係ない。私は、来年も自由にやる」
「何言ってるの? そんなの、出来るわけないでしょ!」
「シルフィードは、風のように、自由な仕事。だから選んだ」
「逆でしょ。シルフィードは規律正しい、誰もが尊敬する存在なのよ」
やっぱり、二人の価値観は、正反対だ。でも、どっちも、一理あると思う。というか、シルフィードが、どうこうというより、二人の考え方の違いだよね。実際、色んなシルフィードがいるわけだし。
「あははっ、やっぱ変わらなよね。きっと、二人は永遠に変わらない気がする」
「どういう意味よ?」
ナギサちゃんは、複雑な表情を浮かべる。
「来年も、再来年も、十年後も。二人とも『今と同じ感じかなのかなぁー』って思って。もちろん、いい意味でね」
二人が、今と違う性格になっているイメージが、全くわいてこない。
「風歌に言われると、何か、イラッとするわね……」
「んがっ――。何でー?」
徹底して、規律を守るナギサちゃん。全てにおいて、自由なフィニーちゃん。この二人は、今後も変わらないだろう。まぁ、そのほうが、らしくていいけどね。
でも、私は、どうなんだろう? 生活環境が変わって、色々成長したかと思ったけど。性格とか価値観は、ほぼ昔のままだ。相変わらず、勢い重視だし、深いことは考えないし。人って、そう簡単には、変わらないもんだよね。
一人前になれば、少しは大人になるのかな? それとも、一生、この性格のままだったり?
先のことは、まだ、よく分からない。ただ、色んなものが、時と共に、少しずつ変わっていくはずだ。
でも、この三人の関係だけは、永遠に変わらないでいて欲しいなぁ……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『異世界で初めての年越しイベントは最高にハッピーだった』
みんな一緒の未来が、きっと私の…ウルトラハッピーなんだって
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
辺境の農村から始まる俺流魔工革命~錬金チートで荒れ地を理想郷に変えてみた~
昼から山猫
ファンタジー
ブラック企業に勤め過労死した俺、篠原タクミは異世界で農夫の息子として転生していた。そこは魔力至上主義の帝国。魔力が弱い者は下層民扱いされ、俺の暮らす辺境の農村は痩せた土地で飢えに苦しむ日々。
だがある日、前世の化学知識と異世界の錬金術を組み合わせたら、ありふれた鉱石から土壌改良剤を作れることに気づく。さらに試行錯誤で魔力ゼロでも動く「魔工器具」を独自開発。荒地は次第に緑豊かな農地へ姿を変え、俺の評判は少しずつ村中に広まっていく。
そんな折、国境付近で魔物の群れが出現し、貴族達が非情な命令を下す。弱者を切り捨てる帝国のやり方に疑問を抱いた俺は、村人達と共に、錬金術で生み出した魔工兵器を手に立ち上がることを決意する。
これは、弱き者が新たな価値を創り出し、世界に挑む物語。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
最悪から始まった新たな生活。運命は時に悪戯をするようだ。
久遠 れんり
ファンタジー
男主人公。
勤務中体調が悪くなり、家へと帰る。
すると同棲相手の彼女は、知らない男達と。
全員追い出した後、頭痛はひどくなり意識を失うように眠りに落ちる。
目を覚ますとそこは、異世界のような現実が始まっていた。
そこから始まる出会いと、変わっていく人々の生活。
そんな、よくある話。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる