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第5部 厳しさにこめられた優しい想い

5-9異世界で初めての年越しイベントは最高にハッピーだった

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 夕方、四時過ぎ。私は〈ホワイト・ウイング〉の事務所にいた。やるべき仕事は、全て終ったので、学習ファイルを開いて、勉強中だった。でも、先ほどからソワソワして、あまり集中できていない。

 なぜなら、今日はいよいよ『送迎祭』だからだ。要するに、大晦日みたいな感じなんだよね。それに、明日が仕事納めだけど、実際には、今日で仕事が終了だ。

 明日は、お客様の予約は入っていない。一応、出勤はしてくるけど、会社の大掃除や、メンテナンスをするのが目的だ。どこの会社も、最終日の三十日は、掃除や片付けなどがメインらしい。

 つまり、今日で今年の仕事は、実質的に終了。また、今夜は、盛大な年越しイベントがある。しかも、初参加なので、滅茶苦茶、楽しみだった。『ワクワクするな』と言うほうが、無理な話だ。私って、元々お祭り大好きだからね。

 私が、妙に浮かれながら、学習ファイルを見ていると、リリーシャさんに声を掛けられた。

「風歌ちゃん」
「はいっ、何かお仕事でしょうか?」

 私は、スッと立ち上がった。

「いいえ、仕事は全部、終わっているから。今日は、もう退勤でいいわよ」
「でも、五時まで、結構、時間ありますけど――」

 時間は、十六時十一分。まだ、定時まで、四十分以上ある。

「早く、お祭りに行く準備をしたいでしょ? さっきから、うずうずしているみたいだから」
「え……。やっぱり、分かっちゃいますか?」

「えぇ、今日の朝から、気付いていたわよ」
「んがっ――。駄々もれだったなんて……」

 リリーシャさんは、くすくすと笑う。

「でも、年越しは、誰だって楽しいものよ。まして、初めてなら、なおのことね」
「向こうの世界にいた時も、年越しは、滅茶苦茶、楽しみだったので――」

 十二月になると、冬休み・クリスマス・大晦日のトリプルイベントで、毎日、ワクワクしっぱなしだった。こればかりは、社会人になっても、全く変わらない。

「風歌ちゃん、こっちに来て、マギコンを出して」
「え、はい……」

 私は、リリーシャさんのそばに行くと、マギコンを差し出した。すると、リリーシャさんは、自分のマギコンを、ササッと操作する。次の瞬間、自分の前に、空中モニターが現れた。

 そこには、

『16:13 10,000ベルが入金されました。
 送金元「ホワイト・ウイング」リリーシャ・シーリング
 取引番号 F012-4900082』

 このように表示されていた。

「えっ?! これって?」
「少ないけど、ボーナスみたいなものね。イベントは、お金が掛かるでしょ?」
「それは、そうですけど――。でも、私ご迷惑を、掛けてばかりなのに」

 事故の時は、入院費、新しい機体の購入代金、壊したアパートの屋根の修理費など。とんでもない額の、損害を与えてしまった。いずれ、お金は返すつもりだけど。返し切れないぐらいの、迷惑もかけてしまった。

「見習いは、そういう細かいことは、気にしないでいいのよ。前にも言ったでしょ? 見習いの仕事は、楽しむことだって。だから、今夜は、思い切り楽しんできてね」

 リリーシャさんは、とても優しい笑顔を浮べた。その表情を見れば、心の底から、そう言っているのが分かる。

「はい。お言葉に甘えて、思いっきり楽しんできます!」
 私も笑顔を浮かべ、元気いっぱいに答えるのだった……。

 
 ****** 
 

 私は、ナギサちゃんとフィニーちゃんと合流すると〈南地区〉にやって来た。事前に話し合って、どこで年越しをするか、決めてあったからだ。

 ちなみに、どこで年を越すかは、意見が完全に割れた。私は〈東地区〉で、ナギサちゃんは〈南地区〉フィニーちゃんは〈西地区〉と、全員、自分の『ホームエリア』を推したからだ。

 年越しの日は、やっぱり、ホームで過ごしたいよね。同じ町の中とはいえ、この町の人たちは、自分の関わりのある地区に、物凄く思い入れがある。私は、まだ短いとはいえ〈東地区〉には、強い愛着があった。
 
 いつも、町内会のイベントに参加してるし、知り合いも多い。こっちに来たばかりのころから、色々お世話になっているし。もう、すっかり〈東地区〉の一員って、感じだもんね。

 でも、生まれた時から、ずっとこの町に住んでいる、ナギサちゃんやフィニーちゃんは、当然、私よりも思い入れが強い。何度も話し合った結果、最終的には〈南地区〉に決まった。

 ナギサちゃんは、単に〈南地区〉が好き、という理由だけではない。ちゃんとした、合理的な、意見があったのだ。『送迎祭』の日は、沢山の観光客が訪れるが、一番、人が来るのは〈南地区〉だった。

 来年のことを考えると、観光客が多い場所を見ておくのは、いい勉強になる。ナギサちゃんの場合、どんなイベントやお祭りも、先を見据えた、勉強なんだよね。

 あと『年越しに、ちょうどいいお店を知っているから』というのも、大きな決め手だった。開けた場所で、花火も見やすいらしい。

 ただ『送迎の儀式』で鐘が鳴るのは、二十三時三十分から。あと、花火が上がるのは二十四時からだ。予約してあるカフェは、あとで行けばいいので、まずは、町の中の見物からスタートする。

 最初は、夕飯だけど、せっかくなので、出店を食べ歩くことになった。今夜は、町中に大量の出店があるからだ。

 フィニーちゃんは、完全にこれが目当てだったらしく、超活き活きしていた。あっこっちの出店を回って、次々と買い込んでいく。いつの間にか、両手には袋を下げ、大量の食べ物を、満足げに抱えていた。
 
「相変わらず、フィニーちゃんは、食べる気満々だねぇ」 
「お祭りは、出店を食べ歩くためにある」
「そんな訳ないでしょ! 今日は、物凄く大事な儀式なのよ」

 このやり取りも、完全にいつも通りだ。

 それにしても、やっぱり〈南地区〉は、値段が高い。いわゆる『観光客価格』だ。人が多いから、これでも、売れてしまうのだろう。

「ねぇ、風歌。もし、お金がないなら、今日は私が出すわよ。〈南地区〉に誘ったのは、私なのだから」

 ナギサちゃんは、そっと小さな声で、話し掛けて来た。ナギサちゃんは、何だかんだで、細かいところまで、気を遣ってくれる。

「あー、平気平気。来る時に、リリーシャさんに、お金もらって来たから」
「そう……ならいいのだけど」

「いつも、気を遣ってくれて、ありがとね。ナギサちゃん」
「べ、別に、気なんか遣ってないわよ――」

 ナギサちゃんは、プイッと顔を背ける。滅茶苦茶、優しいのに、素直じゃないのは、相変わらずだった。

 しかし、いくらお金をもらったからとはいえ、値段を見ると、なかなか手を出し辛い。普段から、常に値段を気にして、節制しているからね。『これ一つ買ったら、パンがいくつ買えるだろうか?』と、つい考えてしまう。

 屋台を見て、買おうかどうか悩んでいると、
「これ、おいしい。風歌も、食べるといい」
 差し出されたのは、ホカホカの、中華まんみたいのだった。

「え、いいの?」
「まだ、一杯あるから、大丈夫」 

 フィニーちゃんは、手に持っている、大量の食べ物が入った袋を見せる。

「じゃ、お言葉に甘えて。いただきまーす」

 私は、ピンク色のふわふわな生地に、かぶり付いた。すると、中からたっぷりのチーズや肉、トマトが、ジュワーッとあふれ出してくる。

 おぉっ! これって、ピザまん? でも、向こうで食べたのと、全く違う。中は完全にピザの具になっていて、チーズも伸びるぐらい、たくさん入っている。てか、超おいしい!

「うわっ、コレ超美味しいね!」 
「これも、おいしい」

 フィニーちゃんは、次々と色んな食べ物を出して来る。

 うん、どれも美味しい。フィニーちゃんがオススメする食べ物は、全くハズレがない。流石に、普段から、色々食べているだけはある。

「ちょっと、ほどほどにしておきなさい。まだ、本番まで、何時間もあるのよ」 
「大丈夫。何時間もあれば、どうせお腹空く」

「いつも食べてるくせに、いったい、どれだけ食べれば気が済むのよ?」
「全ての屋台の料理を、食べきるまで」

 ナギサちゃんの突っ込みに、真顔で答えるフィニーちゃん。
 
 いつも通りの言い合いになるけど、これは平和な証拠だ。しかし、フィニーちゃんは、本気で全ての出店を、制覇するつもりのようだ。出店って、全部で百軒以上あるけど、フィニーちゃんなら、本当にやりかねない。

 結局〈南地区〉の出店を、片っ端から回っていく。その後も、フィニーちゃんは、爆買いしまくっていた。その都度、ナギサちゃんから突っ込みが入り、私が適当に話題を変える。

 出店以外にも、いろんなお店やデパートなど。普段、行ったことのない場所を、一杯回っていく。食べ歩きも含め、三時間以上〈南地区〉のあちこちを、ぶらついたのだった……。


 ******


 私たちは、街の中をブラブラしたあと、カフェ〈ローズマリー〉にやって来た。ここが、今日の年越しをする場所だった。あらかじめ、ナギサちゃんが、予約を入れくれていた。

 テラス席の前には、川が流れており、とても見晴らしがよかった。周囲にも、お洒落なお店が多い。メインストリートからは、少し離れているので、落ちついた雰囲気だった。流石は、ナギサちゃん。お店を選ぶセンスも、完璧だ。

 ただ、今日は『送迎祭』のイベントのため、テラス席は、全て埋まっている。もっとも、今日はどこの飲食店も、全て満員になっていた。事前に予約を入れておかないと、入れるお店は、ほとんどないぐらい混んでいる。

「ここなら、花火もキレイに見えそうだね」
「〈中央区〉にも近いから、よく見えるのよ」

 ちなみに、年越し後の、花火の打ち上げ場所は〈中央区〉の〈シルフィード広場〉だ。打ち上げる花火の数は、なんと三十万発。向こうの世界の、有名な花火大会でも、二万から三万発なので、とんでもないスケールの大きさだ。

 流石に、世界的に有名な観光都市だけあって、物凄く気合が入ってるよね。この世界でも、最大規模の花火なので、それを目当てに、やって来る観光客も多い。

 私たちは、テーブルに着いてお茶を飲みながら、世間話をしていた、フィニーちゃんは、大量に買って来た出店の料理を、まだ食べ続けている――。

「儀式が始まるのは、二十三時半からだよね? 今日は、何時ごろまでいるの?」
「年が明けて、ちょっと経ったら、私は帰るわよ」
「私は、朝まででもいい」

 もぐもぐ食べていたフィニーちゃんが、ボソッと答える。いつになく、目がキラキラしていて、とても元気そうだ。

「明日も、一応、会社はあるのだから。早く帰って寝ないと、仕事に響くでしょ」
「問題ない。明日は、午前中だけ。適当にやればいい」
「適当で、いい訳ないでしょ! 仕事納めなのよ」

 どんな時でも、ナギサちゃんは真面目である。そして、フィニーちゃんは、いつだって自由だ。そりゃ、意見がぶつかるわけだよね。

「やっぱり、二人のところも、大掃除とか?」
「まぁ、普通はそうね。反省会・掃除・片付けとかでしょ」

「じゃあ、実質、今日で終わりなんだね」
「それは違うわ。明日の仕事を、完璧にこなすまで、終わったとは言えないのよ。もちろん、今日の儀式も含めてね」
 
『家に帰るまでが遠足』みたいなノリかな? もうちょっと、気楽に楽しめばいいのに、なんて思うけど。これが、ナギサちゃんの性格だからね。

 しばらく、他愛のない話をしていると、急に照明が暗くなった。一応、上のほうに光の玉は浮いているけど、光が弱くなっている。ここだけではなく、町中の光が、急に弱くなった。同時に、周囲のざわめきが消え、静寂に包まれた。

「えっ、何事?!」 
「送迎の儀式が始まるから、準備しなさい」
 
 ナギサちゃんに言われ、私は慌てて、持って来たチョコの箱を手にする。

 それから、しばらくして、一回目の鐘が鳴り響いた。周囲の人たちは、持って来た『幸運の玉』を食べると、目をつぶって、感謝の祈りを始めた。私も、それにならい目を閉じ、一月のことを思い出す。まだ、向こうで、中学生をやってたころだ。

 続けて、二回目、三回目と、数分ごとに、鐘が鳴らされる。三回目で、私は少し重い気分になった。ちょうど、家出をした三月だったからだ。でも、すぐに、リリーシャさんと出会った時のことを、鮮明に思い出す。

 リリーシャさんとの出会いは、私にとって、人生で最高の幸運だった。だから、三月にも、大感謝だよね。

 それから、鐘が鳴るたびに、一ヵ月ずつ、記憶が進んで行く。それまでは、ずっと、必死に生きている記憶だったけど、八月から、状況が大きく変わり始めた。

 それ以降の、私の記憶の中のほとんどに、ナギサちゃんと、フィニーちゃんが出て来るからだ。
 
 そういえば、二人と出会ってからは、ずっと何をやるのも、一緒だったよね。中学時代でも、これほど親しかった子って、いなかったんじゃないかな――? 

 みんな仲は良かったけど、相談をしたり、助けて貰ったりとかまでは、なかったから。ただ、仲良く遊ぶだけの関係。もっとも、あのころは、悩みも困ったことも、何もなかったもんね。

 鐘が鳴るたびに、チョコレートの甘さと共に、次々と記憶がよみがえって来る。何か私、こっちの世界に来てから、いい思い出しか、ない気がする。みんな優しくて、とても素敵で。いつも、助けてもらったり、与えてもらってばかりだから。

 私は、鐘が鳴るたびに、その月に、この町に、みんなに、心から感謝する。やがて、十二回目の鐘が鳴り、十二月への感謝が終わったところで、ほんの少しだけ、灯りが強くなった。

 すると、従業員の人たちが、各テーブルに、飲み物の入ったグラスを、手際よく配って行く。私たちは全員、未成年なので、ノン・アルコールのシャンパンが渡された。

 いよいよ、あと数分で、二十四時の『年迎え』の時間だ。ドキドキしながら待っていると、急にドーンという音と共に、空に大きな花火が打ちあがった。

 次の瞬間、店と町中の灯りが、煌々と明るく灯った。と同時に、みんなグラスを持って立ち上がる。

 私もスッと立ち上がり、皆に合わせて、新年の祝いの言葉を、大きな声で唱えた。

「大地の恵みに感謝を! 海の恵みに感謝を!
 この町で過ごせたことの幸運に感謝を!
 世界中の人々に、愛と平和と祝福を!」

「乾杯!!」
 祝いの言葉が終わると、みんなでグラスをかかげ、その後一気に飲み干した。  

 乾杯が終わると、店内からは、大歓声が巻き起こった。町のあちこちからも、花火に負けないぐらいの、大きな歓声があがっていた。

 続いて、みんなで、ハグしあっていく。親しい人たちとは、ハグするのが、この町の新年のあいさつだ。私はすぐさま、ナギサちゃんに抱きついた。

「ちょっ……ちょっと、何やってるのよ風歌?!」
「だって、親しい人とは、こうやって挨拶するんでしょ? 親友なら当然だよ」

「だからって、何も公衆の面前で――」
「周りの人たちも、普通にやってるじゃん?」

 あちこちで、ハグ祭りになっていた。次に私は、フィニーちゃんを、ギュッと抱きしめる。

「なんか、寝そう……」
「こらこら、人の胸の中で、寝ないで―!」

 フィニーちゃんは、普段なら、とっくに寝ている時間のはずだ。寝るの早いって、言ってたもんね。

 私は、二人が終わると、他の人たちの所にも顔を出す。『ハグいいですか?』と訊ねると、みんな快くOKしてくれた。それどころか、みんな大喜びしている様子だ。

「こっちも、お願いします!」
「私も、してください!」

 次々と声を掛けられ、私は色んな人たちと、ハグをして行く。

「今年は、滅茶苦茶ツイてるねー」
「年越し早々、シルフィードとハグできるなんて、超ラッキー」
 
 うちと同じく、女性三人で来ていたグループの人たちは、超大喜びだった。

 店のあちこちで、ハグをすると、私は元のテーブルに戻って来る。

「いやー、楽しいね。ノリのいい人が多いし」
「手当たりしだい、知らない人なんかとハグして、どうするのよ?」

 ナギサちゃんは、怪訝な表情で突っ込んでくる。

「知らない人じゃないよ。みんな、この町の大切な人たち。見知らぬ世界から来た、異世界人の私を、温かく迎えてくれた人たちだから。私は、この町の人たち、全員、大好きだよ」

「でもね。そんな中でも、ナギサちゃんとフィニーちゃんは、特別なんだ。みんなの中でも、特別に超大好きだから。昨年は、私と仲良くしてくれて、本当ありがとう。今年も、できれば、これからも一生、仲良くしてね」

 私は、満面の笑みを浮かべながら、心の底から、二人に感謝の言葉を伝える。

 この町に来て、幸せな思い出しかないのは、この町の人たちが、とても優しいからだ。その中でも、ひときわ明るく輝く、素敵な記憶は、常にこの二人との思い出だった。

「べ――別に、私は何もしてないわよ。まぁ、乗り掛かった舟だから、これからも、面倒は見るけど……」

 ナギサちゃんは、視線をそらしながら答える。実に彼女らしいセリフだ。

「私も、風歌すき。今年も、いっぱい遊びに行く」

 フィニーちゃんは、何の臆面もなく、素直に答える。裏がない真っ直ぐな言葉だけに、そう言ってもらえると、滅茶苦茶、嬉しい。

「ナギサちゃんのことも?」
 私は、チラリとナギサちゃんを見ながら、そっと訊いてみる。

「う――ご飯は好き。あとは、苦手」 
「ちょっと、それどういう意味よ!」  

「そういうとこ、嫌い」 
「何ですって?」
「まぁまぁ。それって、要するに、好きってことじゃん?」 

 結局、儀式が終わったらすぐ帰る、と言っていたナギサちゃんも、延々と、他愛のない世間話に付き合ってくれた。その後、店を出たのは、深夜一時半すぎだった。

 アパートの自室に着いたのは、二時ちょっと過ぎ。でも、いまだに、花火は上がり続けていた。夜の間、ずっと花火が上がっているらしい。

 私は、屋根裏の小さな窓から、微笑みながら、ジッと花火を眺めていた。今夜は楽し過ぎて、眠れそうになかった。でも、いいかな。一晩ぐらい寝なくても、全然、平気だし。

 本当に、いい一年だったなぁ。生活は大変だったけど、それもまた、楽しさの一つだよね。美味しいパン屋を、一杯みつけたし。買い物も、上手になったし。

 あと、いい人と一杯、出会うことができた。みんな優しいし、とても勉強になるし。今年もまた、いい人と、たくさん出会えるといいなぁー。

 そして、いよいよ、私も一人前になる。そう考えると、楽しい未来しかないよね。今年は、もっともっと、幸せな年になりそうな気がする。
 
 私は花火を見ながら、明るい未来の期待を、どんどん膨らませるのだった……。


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次回――
『一年の最後に突然の宣告って私どうすればいいの……?』

 私の人生はいつだってジェットコースターみたいだ・・・
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