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第5部 厳しさにこめられた優しい想い
3-1おニューの機体で飛ぶ空はキラキラと輝いて見えた
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私は、せっせと事務所内の掃除をしていた。床掃除のあとは、机の雑巾がけ。それが終わると、窓を磨いていく。ピカピカになるまで、一心不乱に体を動かし、全力で掃除に打ち込んだ。
前にもまして、気合が入っている。というのも、仕事ができるのが、物凄く嬉しいからだ。本当に、二週間の営業停止期間は、何もやることがなくて、半端なく辛かった。つくづく、仕事があることの、有難みを感じている。
「床よし、机よし、ゴミ箱よし、窓よし!」
私は指をさしながら、1つずつチェックしていく。
「お茶の準備もしてあるし、完璧だね」
私は、お客様の予約状況を、念のため、もう一度チェックする。リリーシャさんの空き時間を、確認するためだ。
次の予約の時間が、空いているところを見計らって、ティータイムにする。なので、リリーシャさんのスケジュールに合わせて、練習飛行から、戻って来るようにしていた。
チェックが終わると、練習用の地図を片手に、少し早足で、ガレージに向かって行った。嬉しくて、思わず鼻歌が出てしまう。
ガレージの中に入ると、目的の機体に向かう。もちろん、私のおニューの機体だ。何度みても、新品の機体は気分がいい。
「お待たせ―! 今日も一日、よろしくね」
私は声を掛けると、機体をそっと撫でた。
別に、機械好きとか、エア・ドルフィンのマニアじゃないんだけど。自分専用の新機なので、つい愛着がわいてしまった。
私は、マギコンを取り出すと『マナチェッカー』を起動した。『安全飛行講習』に行って以来、エア・ドルフィンに乗らなくても、毎日チェックするようにしている。
指をタッチすると、空中モニターが表示され、魔力ゲージが上がって行った。ゲージが一杯になると、細かい計測結果が表示される。
「どの数値も、特に問題なし。MC値も正常。よし、行こっか!」
私は、シートに座ると、そっとハンドルに手を置いた。意識を集中し、魔力を流し込んで行く。機体のマナゲージが、スーッと上がって行き、グリーンゾーンを超える。ゲージが一杯なったところで、一呼吸おいて、スターター・ボタンを押した。
直後、エンジンが掛かり、フワッと浮き上がった。数センチ浮き上がった状態で、ゆっくりと路面飛行しながら、ガレージを出る。いったん、庭の中央に着地すると、周囲と上空を確かめた。
以前なら、そのまま、一気に上昇してたけど、今は物凄く慎重に、周囲確認をしている。やっぱり、安全飛行講習は、凄く勉強になった。どんな時も、安全第一は大事だよね。
私は、高度計を見ながら、ゆっくり浮上して行く。高度計が、10を指したところで、アクセルを開いて、少しずつ加速した。スピードメーターが、20になったところで、速度を固定して、ゆっくり目に飛行していく。
リリーシャさんから、飛行練習の許可はもらったけど、条件付きだった。当面は、あまり遠出をしないこと。飛行量の多い場所は、避けること。あと、高度は『10』速度は『20』まで。
以前は、その倍ぐらいのスピードを出して飛んでいたので、かなりゆっくりだ。でも、空を飛べるだけで、物凄く嬉しかった。だから、全然、気にならない。
それに、どのみち、地上をチェックするには、ゆっくり飛ぶ必要があるから、特に不便はないんだよね。のんびり飛ぶのも、気持ちいいし。歩くのに比べれば、はるかに速いので。
エア・ドルフィンに乗れない期間は、どこに行くのも、徒歩だったもんね。それに比べると、空を飛べることが、どんなにありがたいことか……。そのせいか、見るもの全てが、キラキラ輝いて見えた。
ちなみに、新しい機体は、計器類も最新型だ。風速計がついており、風速と風向きも、常に表示されていた。あと、天気も、リアルタイム表示されており、雨が降りそうになると、事前に知らせてくれる。
さらに、ナビ機能も、標準搭載されていた。なので、マギコンを使わなくても、マップを見ることができる。まぁ、私の場合は、相変わらず紙の地図を使ってるけど、一般の人には、とても便利な機能だと思う。
やっぱり、最新モデルって、凄いよねぇー。見た目だけじゃなくて、機能も洗練されてるもん。
「さて、どこに向かおうかな? 久々だし、あそこに行ってみようかな――」
どこへ向かおうか、色々考えてみたけど、真っ先に思い浮かんだのが〈西地区〉だった。〈西地区〉は、風が物凄く気持ちいい。しばらく、空を飛べなかったので、風を存分に満喫するなら、あそこが一番だ。
私は〈西地区〉に向けて、ゆっくりと進んで行く。飛行量の少ない場所を選んで飛ぶため、中心部には向かわず、少しそれた、住宅街の上を飛んで行った。
上空から、眼下を眺めながら飛ぶのは、やっぱり凄く楽しい。地上からは見えないものが、たくさん見えるからだ。人々の営みを見ているだけで、元気になって来る。
しばらく、住宅街の上をのんびり飛んでいると、やがて風の質が変わって来た。〈西地区〉に入ったからだ。やっぱり、この地区の風は、特別に気持ちがいい。
普段なら、中心部にある〈ウインド・ストリート〉に向かうが、私は逆方面の、北西に向かって行った。そちらのほうは、割と空き地が多い。あと、観光名所の一つの〈風車丘陵〉がある。
〈風車丘陵〉は、遠くからはよく見るけど、直接、行くことは、あまりない。でも、今日は、一つ確かめてみたいことが有った。
入院中、屋上から見えた、とても不思議な光景。あの時は、町の中に、マナラインが流れているのが、確かに見えたのだ。でも、あのあと気を失って以降、全く見えなくなってしまった。
ただの、夢かとも思ったけど、すぐ隣で、フィニーちゃんも一緒に見ていたし。間違いなく、見えていたはずだ。何か、見える条件があったのだろうか? それに、一度、見えたなら、また見ることが出来るんじゃないだろうか?
一応、今回の事故の件は、無事に解決したけど。あの時の光景が、どうしても忘れられなかった。それに、どことなく、今回の事故に、関係しているような気もする。
以前〈風車丘陵〉に来た時『複数のマナラインが通っている』と、フィニーちゃんに教えてもらった場所があった。あそこなら、もしかしたら、見えるかもしれない。
私は、沢山の風車が回っている〈風車丘陵〉に近付くと、空き地に着陸する。ここら辺は、かなり風が強いので、歩いて丘の上に行くことにした。
混んでいる時は、物凄い数の人がいるんだけど、平日のせいか、来ている観光客の数は少ない。中心部から少し離れてるし、見るだけなら、遠く離れたところからでも見れる。それに、ここって、風車しかないからね。
「やっぱ、ここは風が強いなぁー。マナラインの影響なのかな?」
私は、全身に風を浴びながら、丘を登っていく。たくさんの風車が回っている姿は、いつ見ても、とても壮観だ。初めて見た時は、超感動したもんね。
上のほうまで登っていくと、以前、行った場所に移動する。確か、この辺だと思ったけど……。
一歩踏み込んだ瞬間、風の向きが変わった。次々と、風の方向が切り替わり、まるで体の周りを、風がグルグル回っているような感覚になる。
間違いない、この場所だ。でも、この感覚って、どこか別の場所でも、体験したような気が――。
私は、しばらく風に身をまかせ、全身で舞い踊る風を受け続けた。目の前には〈西地区〉の街並みが一望できる。とても綺麗な景色だが、特に変わったものは見えない。〈風車丘陵〉にも、これといって、マナラインらしきものは、見えなかった。
「やっぱり、病院の時は、偶然だったのかなぁ?」
それとも、打ちどころが悪くて、一時的に見えてたとか? でも、調べて貰ったら、どこも打ってなかったんだよね。うーむ、やっぱり謎だ。
私は目を閉じ、しばし、風を堪能することにした。こないだの出来事は、よく分からないけど、ここの風が、最高に気持ちいいのは、変わらない。もうしばらく、風を楽しんでから移動しよう。
目を閉じてから、どれぐらいの時間が、経過しただろうか? あまりの心地よさに、時を忘れそうになる。だが、背中に何かを感じた。私は目を開くと、そっと振り返る。すると、そこには、見慣れた人物が立っていた。
「あれっ……フィニーちゃん、何でここに?」
「空飛んでたら、風歌みえた」
「もしかして、練習飛行中だった?」
「うん」
ここら辺は、あまり練習飛行をする場所じゃない。となると、かなり離れた場所から、私を見つけたのだと思う。フィニーちゃんも、中々いい目をしてるよね。
「ところで、今マナラインって、見えてる?」
「うん、見えてる。ここ、いっぱいある」
「そっかー。やっぱ見えてるんだ――」
おそらく、この風の正体は、マララインの影響だと思う。でも、私はいくら目を凝らしても、何も見えなかった。
「フィニーちゃんって、いつから、マナラインが見えるようになったの?」
「子供のころ。何歳だったかは、覚えてない」
「やっぱ、見える人って、子供のころから見えるんだね……」
となると、やっぱりあれは、偶然、見えたのだろうか?
「こないだ、病院の屋上では見えたのに。あれ以来、さっぱり、見えなくなっちゃったんだよね。何が原因なんだろ? フィニーちゃん、分かる?」
「わかんない。でも、おばあちゃんなら、知ってるかも」
フィニーちゃんは、眠そうな表情で答える。
「へぇー。イルマさんって、そういうの詳しいんだ?」
「魔法関係のこと詳しい。今から行って、きけばいい」
「いやいや、いきなりは、マズイでしょ? それに、勤務中だし」
「大丈夫。今日は家にいるはず。それに、聴いてスッキリしたほうがいい」
フィニーちゃんは、じっと私の顔を見つめてきた。
「そんなに、モヤモヤしてるように、見えた――?」
「うん。風歌、わかりやすい」
「んがっ……」
ボーッとしているようで、しっかりと見抜かれていた。いや、単に私が、顔に出やすいだけかも?
そういや、学生時代、私ってトランプで、いっつも負けてたんだよね。友達にも『風歌は分かりやすい』って、よく言われてたっけ――。
「まぁ、ずっと気には、なってたんだけどね」
「じゃあ、行こう」
そういうと、フィニーちゃんは、少し先に停めてあった、エア・ドルフィンに向かう。珍しく、今日は行動が早い。
「あ、ちょっと待ってー! 私、下のほうに、エア・ドルフィン停めてあるからー」
私は、フィニーちゃんに追いつくため、急いで丘を駆け下りるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『私に宿っている不思議な力の正体とは・・・』
世の中 不思議なことがあったほうが いいですね!
前にもまして、気合が入っている。というのも、仕事ができるのが、物凄く嬉しいからだ。本当に、二週間の営業停止期間は、何もやることがなくて、半端なく辛かった。つくづく、仕事があることの、有難みを感じている。
「床よし、机よし、ゴミ箱よし、窓よし!」
私は指をさしながら、1つずつチェックしていく。
「お茶の準備もしてあるし、完璧だね」
私は、お客様の予約状況を、念のため、もう一度チェックする。リリーシャさんの空き時間を、確認するためだ。
次の予約の時間が、空いているところを見計らって、ティータイムにする。なので、リリーシャさんのスケジュールに合わせて、練習飛行から、戻って来るようにしていた。
チェックが終わると、練習用の地図を片手に、少し早足で、ガレージに向かって行った。嬉しくて、思わず鼻歌が出てしまう。
ガレージの中に入ると、目的の機体に向かう。もちろん、私のおニューの機体だ。何度みても、新品の機体は気分がいい。
「お待たせ―! 今日も一日、よろしくね」
私は声を掛けると、機体をそっと撫でた。
別に、機械好きとか、エア・ドルフィンのマニアじゃないんだけど。自分専用の新機なので、つい愛着がわいてしまった。
私は、マギコンを取り出すと『マナチェッカー』を起動した。『安全飛行講習』に行って以来、エア・ドルフィンに乗らなくても、毎日チェックするようにしている。
指をタッチすると、空中モニターが表示され、魔力ゲージが上がって行った。ゲージが一杯になると、細かい計測結果が表示される。
「どの数値も、特に問題なし。MC値も正常。よし、行こっか!」
私は、シートに座ると、そっとハンドルに手を置いた。意識を集中し、魔力を流し込んで行く。機体のマナゲージが、スーッと上がって行き、グリーンゾーンを超える。ゲージが一杯なったところで、一呼吸おいて、スターター・ボタンを押した。
直後、エンジンが掛かり、フワッと浮き上がった。数センチ浮き上がった状態で、ゆっくりと路面飛行しながら、ガレージを出る。いったん、庭の中央に着地すると、周囲と上空を確かめた。
以前なら、そのまま、一気に上昇してたけど、今は物凄く慎重に、周囲確認をしている。やっぱり、安全飛行講習は、凄く勉強になった。どんな時も、安全第一は大事だよね。
私は、高度計を見ながら、ゆっくり浮上して行く。高度計が、10を指したところで、アクセルを開いて、少しずつ加速した。スピードメーターが、20になったところで、速度を固定して、ゆっくり目に飛行していく。
リリーシャさんから、飛行練習の許可はもらったけど、条件付きだった。当面は、あまり遠出をしないこと。飛行量の多い場所は、避けること。あと、高度は『10』速度は『20』まで。
以前は、その倍ぐらいのスピードを出して飛んでいたので、かなりゆっくりだ。でも、空を飛べるだけで、物凄く嬉しかった。だから、全然、気にならない。
それに、どのみち、地上をチェックするには、ゆっくり飛ぶ必要があるから、特に不便はないんだよね。のんびり飛ぶのも、気持ちいいし。歩くのに比べれば、はるかに速いので。
エア・ドルフィンに乗れない期間は、どこに行くのも、徒歩だったもんね。それに比べると、空を飛べることが、どんなにありがたいことか……。そのせいか、見るもの全てが、キラキラ輝いて見えた。
ちなみに、新しい機体は、計器類も最新型だ。風速計がついており、風速と風向きも、常に表示されていた。あと、天気も、リアルタイム表示されており、雨が降りそうになると、事前に知らせてくれる。
さらに、ナビ機能も、標準搭載されていた。なので、マギコンを使わなくても、マップを見ることができる。まぁ、私の場合は、相変わらず紙の地図を使ってるけど、一般の人には、とても便利な機能だと思う。
やっぱり、最新モデルって、凄いよねぇー。見た目だけじゃなくて、機能も洗練されてるもん。
「さて、どこに向かおうかな? 久々だし、あそこに行ってみようかな――」
どこへ向かおうか、色々考えてみたけど、真っ先に思い浮かんだのが〈西地区〉だった。〈西地区〉は、風が物凄く気持ちいい。しばらく、空を飛べなかったので、風を存分に満喫するなら、あそこが一番だ。
私は〈西地区〉に向けて、ゆっくりと進んで行く。飛行量の少ない場所を選んで飛ぶため、中心部には向かわず、少しそれた、住宅街の上を飛んで行った。
上空から、眼下を眺めながら飛ぶのは、やっぱり凄く楽しい。地上からは見えないものが、たくさん見えるからだ。人々の営みを見ているだけで、元気になって来る。
しばらく、住宅街の上をのんびり飛んでいると、やがて風の質が変わって来た。〈西地区〉に入ったからだ。やっぱり、この地区の風は、特別に気持ちがいい。
普段なら、中心部にある〈ウインド・ストリート〉に向かうが、私は逆方面の、北西に向かって行った。そちらのほうは、割と空き地が多い。あと、観光名所の一つの〈風車丘陵〉がある。
〈風車丘陵〉は、遠くからはよく見るけど、直接、行くことは、あまりない。でも、今日は、一つ確かめてみたいことが有った。
入院中、屋上から見えた、とても不思議な光景。あの時は、町の中に、マナラインが流れているのが、確かに見えたのだ。でも、あのあと気を失って以降、全く見えなくなってしまった。
ただの、夢かとも思ったけど、すぐ隣で、フィニーちゃんも一緒に見ていたし。間違いなく、見えていたはずだ。何か、見える条件があったのだろうか? それに、一度、見えたなら、また見ることが出来るんじゃないだろうか?
一応、今回の事故の件は、無事に解決したけど。あの時の光景が、どうしても忘れられなかった。それに、どことなく、今回の事故に、関係しているような気もする。
以前〈風車丘陵〉に来た時『複数のマナラインが通っている』と、フィニーちゃんに教えてもらった場所があった。あそこなら、もしかしたら、見えるかもしれない。
私は、沢山の風車が回っている〈風車丘陵〉に近付くと、空き地に着陸する。ここら辺は、かなり風が強いので、歩いて丘の上に行くことにした。
混んでいる時は、物凄い数の人がいるんだけど、平日のせいか、来ている観光客の数は少ない。中心部から少し離れてるし、見るだけなら、遠く離れたところからでも見れる。それに、ここって、風車しかないからね。
「やっぱ、ここは風が強いなぁー。マナラインの影響なのかな?」
私は、全身に風を浴びながら、丘を登っていく。たくさんの風車が回っている姿は、いつ見ても、とても壮観だ。初めて見た時は、超感動したもんね。
上のほうまで登っていくと、以前、行った場所に移動する。確か、この辺だと思ったけど……。
一歩踏み込んだ瞬間、風の向きが変わった。次々と、風の方向が切り替わり、まるで体の周りを、風がグルグル回っているような感覚になる。
間違いない、この場所だ。でも、この感覚って、どこか別の場所でも、体験したような気が――。
私は、しばらく風に身をまかせ、全身で舞い踊る風を受け続けた。目の前には〈西地区〉の街並みが一望できる。とても綺麗な景色だが、特に変わったものは見えない。〈風車丘陵〉にも、これといって、マナラインらしきものは、見えなかった。
「やっぱり、病院の時は、偶然だったのかなぁ?」
それとも、打ちどころが悪くて、一時的に見えてたとか? でも、調べて貰ったら、どこも打ってなかったんだよね。うーむ、やっぱり謎だ。
私は目を閉じ、しばし、風を堪能することにした。こないだの出来事は、よく分からないけど、ここの風が、最高に気持ちいいのは、変わらない。もうしばらく、風を楽しんでから移動しよう。
目を閉じてから、どれぐらいの時間が、経過しただろうか? あまりの心地よさに、時を忘れそうになる。だが、背中に何かを感じた。私は目を開くと、そっと振り返る。すると、そこには、見慣れた人物が立っていた。
「あれっ……フィニーちゃん、何でここに?」
「空飛んでたら、風歌みえた」
「もしかして、練習飛行中だった?」
「うん」
ここら辺は、あまり練習飛行をする場所じゃない。となると、かなり離れた場所から、私を見つけたのだと思う。フィニーちゃんも、中々いい目をしてるよね。
「ところで、今マナラインって、見えてる?」
「うん、見えてる。ここ、いっぱいある」
「そっかー。やっぱ見えてるんだ――」
おそらく、この風の正体は、マララインの影響だと思う。でも、私はいくら目を凝らしても、何も見えなかった。
「フィニーちゃんって、いつから、マナラインが見えるようになったの?」
「子供のころ。何歳だったかは、覚えてない」
「やっぱ、見える人って、子供のころから見えるんだね……」
となると、やっぱりあれは、偶然、見えたのだろうか?
「こないだ、病院の屋上では見えたのに。あれ以来、さっぱり、見えなくなっちゃったんだよね。何が原因なんだろ? フィニーちゃん、分かる?」
「わかんない。でも、おばあちゃんなら、知ってるかも」
フィニーちゃんは、眠そうな表情で答える。
「へぇー。イルマさんって、そういうの詳しいんだ?」
「魔法関係のこと詳しい。今から行って、きけばいい」
「いやいや、いきなりは、マズイでしょ? それに、勤務中だし」
「大丈夫。今日は家にいるはず。それに、聴いてスッキリしたほうがいい」
フィニーちゃんは、じっと私の顔を見つめてきた。
「そんなに、モヤモヤしてるように、見えた――?」
「うん。風歌、わかりやすい」
「んがっ……」
ボーッとしているようで、しっかりと見抜かれていた。いや、単に私が、顔に出やすいだけかも?
そういや、学生時代、私ってトランプで、いっつも負けてたんだよね。友達にも『風歌は分かりやすい』って、よく言われてたっけ――。
「まぁ、ずっと気には、なってたんだけどね」
「じゃあ、行こう」
そういうと、フィニーちゃんは、少し先に停めてあった、エア・ドルフィンに向かう。珍しく、今日は行動が早い。
「あ、ちょっと待ってー! 私、下のほうに、エア・ドルフィン停めてあるからー」
私は、フィニーちゃんに追いつくため、急いで丘を駆け下りるのだった……。
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