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1話 アルル・ジョーカー

水の街 アクアマリン

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 人生、いろいろあるものです。

 口減らしに家を追い出される者。
 元から身寄りのない孤児。
 職を失い社会からつまはじきにされた浮浪者。

 俗世を生きる中で、いろいろあった人たちが最終的に寄る辺とする職業は決まって冒険者でした。

 神代の時代から繰り返される魔神や怪物との戦い。
 それらの討伐を目的とした無法者の力自慢たちが、酒場に集ったところが始まりと言われています。

 今となっては、都の街における無頼漢たち集まりでしかなく。
 ギルドと呼ばれる公的機関がお仕事斡旋所として彼らを迎え入れてくれます。

 名も知れない小さな街から王都のような大きな都市に至るまで、どこにでも必ず一か所くらいはあるもの。
 人が多く集まるところにはどうしても必要な職業システムでした。

 都へ出稼ぎにきた田舎者には大変ありがたい話です。

 大きな街で定職に就くためにはまず市民権を得なければならず、市民権を得ることは大変な困難を伴うものですからねえ。
 同様の理由で、私にとってもこれ以上ないくらいもってこいの話でした。

 そんなこんなあり、辺境から出稼ぎにきた村娘を装って、さっそく冒険者ギルドを訪れます。





「おお、これは活気に溢れている」


 街門を入ってすぐ、ギルド支部の大きな建物を見つけて、ロビーに入り、目を丸くしました。
 朝早くだというのに大勢の冒険者で賑わっています。

 ただの人間ばかりではありません。

 三十を超えるテーブル席に座り談笑を楽しむのは、種族、年齢、性別、千差万別の冒険者たち。
 誰も彼もが各々の人生を謳歌しています。

 私もきっと……。

 そんな風に意気込んでいる間に、多すぎる人の群れと漂う酒気に充てられて、少々気分が悪くなりました。

 さっさと酒場を抜けて、奥にあるカウンターの方へ向かい、続く長蛇の列の最後尾に立ちます。

 冒険者として依頼を受け、報告し、報酬をもらう。
 この一連のプロセスはすべて受付を通さなければなりません。
 ギルドというのはさながら、役所に酒場をはめ込んだような施設でした。

 短くない時間を経て列がはけ、私の番が回ってきます。


「あら? えっと、初めての方ですね。ようこそ、水の街アクアマリンへ」


 歓迎の挨拶とともに応対してくれたのは、柔和な瞳が魅力的な受付嬢さんでした。


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