~ 神話 ~ 皇帝陛下は白銀髪にキスをする

ERICA

文字の大きさ
10 / 11
一章

08, 派手な登場

しおりを挟む

馬匠に紅雪を預けた紫攸は、傘をさして一人で寡雲が待つ大船に戻る。


「準備は出来てるか?」
「出来てるよ。紅雪様の方は大丈夫だった?」
「万事解決した」


甲板で待っていた寡雲に声を掛けながら船内の自分の私室に向かう。
寡雲が心配そうな表情を向けたのを視界の端に捉えた紫攸は、簡潔に言葉にして私室に入ると準備された衣服に着替え始めた。


「なら、もう……大丈夫かな…」
「狙われないって意味なら無理じゃねえ?今はまだ闇雲に捜してっから良いけど。紅雪は目立つ髪色してるんだ、気付かれても可笑しくない。ただ…皇宮の連れて行く予定が狂っちまったのがどうにか出来ねえかな…」


皇帝なら衣服も女官にやらせるものなのだが、今私室にいるのは紫攸と寡雲のみ。
紅雪付きの女官以外は連れて来ていなかった。
元々、そのつもりだった紫攸は着替えるのに然程苦労せずに、着替えながら溜息をつく。


「紅雪様が動けない分、紫攸が動くしかないだろうけど……まさか、離れたくないって言うつもり?」
「~~~~ッ。仕方ねえだろ…もう、あんな危ない目には遭わせたくねえんだよ…。つか、あんな可愛い生きモノを野放しに出来ねえ…」


本音が駄々漏れである。それも、相手が寡雲だからこそ本音を出せるのかもしれない。
ハア、と溜息を付きながら着替え終わった紫攸は、蒼鳴国の皇帝陛下になっていた。
いつの間にか紫攸が乗っている大船も、市場で賑わう船着場に移動している。
梯子を下ろして、荷台を荷卸ししている団員たちを囲うようにして武官たちが警護にあたっていた。


「……確かに派手だな…」


甲板に戻った紫攸が、大船から眺めながら呟いた。
市場にいた町人たちが興味深そうに見物し始めて、船着場がごった返し始める。
紫攸が出るには危険な人数になった時、船着場目指して紫峰国の役人たちが走り寄って来た。


「時間通りだな…。寡雲、行くぞ!」
「蒼鳴国皇帝、趙紫攸閣下が馳参じた。皆の者、頭が高いぞっ!!!」


刑部の武人たちが、蒼鳴国の大船を守るように船着場から市民たちを遠ざける様子を甲板から眺める。
蒼鳴国を出発する二日前に、紫峰国の皇帝に向けて一通の書簡を送っていた紫攸が満足そうに呟いた。
市民たちも、遠巻きで誰が現れるのか興味深げに見つめている所で、5本の爪を持つ龍やコウモリなどの吉祥文様が刺繍された礼服に身を包んだ紫攸が、寡雲の号令に合わせて大船から降りて行く。
皇帝陛下と聞いた、平民は地面に膝を付いて頭を下げ、武人は立ったまま頭を下げていた。
紫攸の後ろから寡雲が文官の礼服に身を包んだ姿でついて行く。


「作戦は成功と言えますね…」
「これで、少しは紅雪から意識が移ると良いんだけどな…」

もともと、派手な登場を予定していなかった。
だが、紅雪が狙われた事を知った紫攸が、紫峰国の視線を彼女から外したい一心で計画したこと。
一応成功と言える反応で、寡雲はホッと胸を撫で下ろした。
用意された馬に乗る手綱を掴みながら紫攸が苦笑を浮かべて答えると、ひょいっと軽々と馬に乗る。
先を警護する紫峰国の刑部の武人に導かれながら、紫攸たち一向は紫峰国の皇宮に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...